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四月といえば噓、櫻井脚本『劇場版 名探偵コナン』をまとめてみたり「シメキリ」の表記に迷ってみたり(日記 4月1‐4日)

二〇二〇年 四月一日(水)

 四月である。四月馬鹿である。
 エイプリルフールで思い出したが、この日記でもたまに嘘をついているのだ。あんまり開けっぴろげに書くとどこかで不都合が起こるかもしれないからね、なるべく個人情報を洩らさぬよう心掛けております。といっても別にありもしない話を捏造しているとかそういうのではなく、一部を意図的に伏せたりいわゆる「ごはん論法」を使ってみたりする程度なのでご安心ください(——というこの記述が嘘かもしれないのである)。
 明日までにやらねばならない作業があるのだが、まあ明日やればきっと間に合うだろうと高を括って放置。

四月二日(木)

 というわけで本日締切りのものに取りかかるが、結局一日がかりになってしまう。早めに片づければいいのにと自分でも思う。でもやりたくないことはやりたくないのだ。むむむむむ。
 ところでこの「締切り」などの複合語ってどこまで仮名を送ればいいのか迷いますね。「締め切り」「締切り」「締切」と三種類の書き方ができるがそのうちどれを選択するべきか。どこかで聞いたか読んだかした憶えがあるのだが——しかし記憶はさだかではない。もしかしたら間違っているかもしれないがまあ大目に見てください——役所などのオフィシャルな文書には表記のルールがあるらしく、それによると動詞として使う場合は両方とも送り仮名をして(たとえば「16時まで受け付けております」といったような)、名詞の場合は後ろだけ送る(「受付けは16時まで」)、そして「受付係」や「受付窓口」の如く名詞がそのあとに続いてひとつのまとまりを作るときには仮名を付さないことになっているらしい。この基準が文法的に理にかなっているかはひとまず措くとしても、いちいち迷わなくて済むぶん便利であることは確かだろう。なので今回は「締切り」でゆく。
 で、一日かけて無事締切りには間に合った。ついでに明日正午締切りの案件も八割がた終える。我ながらよく頑張った。
 ——しかしながら早めにやっつけておくに越したことはないのだ。反省。

四月三日(金)

 正午締切りのものも無事仕上げる。よかった。
 勢いづいてきたので、来週月曜締切りの案件も処理。調子が出てくるとサクサク進むのだが、その状態になるまでがいつも長い。がんばれ、私。
 来週の「金曜ロードショー」で『名探偵コナン 純黒の悪夢』がやるらしい。劇場で一度観たきりで細かい箇所はすっかり忘れている……と書いてハッとしたのだがメインの事件筋すら憶えていないではないか。記憶にあるのは松田くんのくだり(「思わぬところで再登場! そんなところにそんな繋がりがあったのねえ」)と、観覧車のくだりのみである。〔ここで註みたいにして付け加えると、この観覧車シーンは青山剛昌のリクエストだったらしい。脚本の櫻井武晴は「今はそんなことしてる場合じゃないと思うんだけどなあ」と思いながらそれでもリクエスト通りに書いたとのこと(『アニメージュ』2020年5月号、櫻井武晴インタビューより)。たしかに〈そんなことしてる場合じゃない〉シーンなのだが、印象には残るのだよなあ。事実、ほかの箇所を忘れてもここだけはよく記憶していたのだからね。〕
 ここで櫻井武晴脚本の劇場版コナンをざっくり振り返ってみよう。

櫻井武晴脚本『劇場版 名探偵コナン』シリーズを振り返ってみようのコーナー

〇第17作(2013年)絶海の探偵〔プライベート・アイ〕
 櫻井脚本第1作。これはほとんど『相棒』です。実写じゃ難しいネタをアニメで実現した、といった感じ。櫻井武晴を求めて『劇場版名探偵コナン』を観るのならばこれ一択である。

〇第19作(2015年)業火の向日葵
 演出との意思疎通がうまくゆかなかった。シナリオでやりたかったことと映像で見せたかったものが互いに反目しているせいでめちゃくちゃである。ミステリー部分をまったく度外視して、ただアクションシーンだけを楽しむといいかもしれない。しかしそこに櫻井武晴の良さはない。

〇第20作(2016年)純黒の悪夢〔ナイトメア〕
 前作の反省を生かし、事件筋をスリラーに寄せてしまった。それゆえ演出との相性はいいのだが、でもやっぱり櫻井さんを起用する意味が薄れてはいる。ここにいるのは『名探偵コナン』のコツを摑んできた櫻井武晴であって、『相棒』の櫻井ではもはやない。

〇第22作(2018年)ゼロの執行人
 前の3作とは監督が変わったためか、アクションに傾きすぎることなくミステリーをしてくれている。櫻井さんらしい小ネタ、トリック、事件が見られるので、『絶海の探偵』の次くらいに〔『相棒』ファンに向けて〕おすすめできます。ただし、ある瞬間をもって突如ミステリーパートは終わるので注意されたい。それ以後に繰り広げられるのは——『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』的な何かである〔らしい。ガンダムに不案内な私は、つい最近(2020年の5月)人に教えられてはじめて知ったのだけれど〕。これは完全に青山剛昌の趣味であって、だから櫻井武晴の入り込む余地はない。櫻井風味を味わうつもりで観ている方は唖然とすること必至である。私は呆然としてただスクリーンを眺めるだけだった。

〇第24作(2020年)緋色の弾丸
 また新しい監督に変わった。この人は第23作で初監督を務めた永岡智佳という人で、この『紺青の拳』はなかなかよい出来だった。ミステリーとアクションとラブコメとのバランスが比較的ちゃんとしていて、万人が均等に平均的な満足を得られる映画だと思う(これでも褒めているつもり)。この監督なら『業火——』の失敗〔演出チームとの齟齬〕や『ゼロ——』の衝撃〔途中から櫻井さん関係なくなっちゃった!〕を乗り越えて、うまいことやってくれるのではないかと期待している。櫻井さん(推理担当)、作画・演出チーム(爆発・アクション担当)、青山先生(恋愛&原作本筋がらみ担当)の意思疎通を図るんだから大変だとは思うけれど頑張ってほしい。楽しみである。

 ——などと考えていたのだが、ここで『緋色の弾丸』の公開延期が決定したというお知らせが届いた。こんな状況だから仕方があるまい。

四月四日(土)

 今週はなんだかいろいろ大変だった。
 まず志村けんが死んだことにショックを受け(というのは実はあまり正確ではない。いまだ死んだという実感がないからだ)、次に提出物をなんとかやっつけて(何度も言うがこれは締切りギリギリまで抛っておいた私が悪い)、『名探偵コナン』と櫻井武晴についてあれこれ考えていると(半分は愚痴である)、劇場版の公開延期を知る、といった流れである。精神的な疲労が大きかった。
 というわけで、ほとんど腑抜けの状態で一日過ごす。
 先日放送された、志村けん追悼生特番を録画で観る。くだらなくておもしろい。

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