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Us The Duo「Shake It Off」/この歌はこう歌われるべきだったのかも

Vineを通じて評判を呼んでメジャーデビューにこぎつけたという夫婦デュオが、ニューアルバム『1989』をリリースしたばかりのテイラー・スウィフトの新曲「Shake It Off」をカバーした動画。これ、なんだかすごく好きなんです。

アコースティック・ギターを爪弾いた優しいサウンドと、やわらかな男女ハーモニーからなる動画。これ、原曲がなかったら「いい歌だね〜」なんて片付けられそうなんだけど、テイラー・スウィフトのカバーということで、いろんな意味が批評的に加わってる。いろいろと深読みさせる要素がある。

原曲はこれ。

テイラー・スウィフト自体も、わりと好きなんですよ。こういう、アメリカの土臭さに根付いてて、でも真っ当にポップな、シンガーソングライター。ちゃんと売れてるし、メロディにはメインストリームを引き受ける感じも持ってる。ジョーン・オズボーンとかシェリル・クロウとかの系譜に属する感じを勝手に感じていたというか。

でも、新曲は一気に方向性を変えてきた。ギラギラな80sポップに寄せてきた。在りし日のマドンナみたいなイメージ。ビデオはバレリーナとかチアリーダーに挑戦していて、清純さをかなぐり捨てる感じ。

で、このビデオの2分40秒くらいの展開がすごくて。

ガタイのいいフットボール選手風の若い男の子たちに持ち上げられるチアリーダーたち。これって何かって言うと、アメリカのティーンエイジャーたちの社会における、一番わかりやすい「リア充」の象徴なんだよね。

こういうスクールカーストを表現する言葉は、英語にもちゃんと言葉があって。wikipedeiaにも記述がある。(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%83%E3%82%AF)

Jock(ジョック)が、こういうアメフト選手みたいな、長身で、筋肉質で、容姿端麗で、スポーツ万能で、傲岸不遜で、とにかく女子にモテる男子たち。

そして、Queenbee(クイーンビー)が、こういうチアリーダーみたいな、学園の女王。多くはジョックの恋人。

その下に、Sidekicks(サイドキックス)=女子の二番手や、Wannabe(ワナビー)=取り巻きや、Pleaser(プリーザー)=子分や、Messenger(メッセンジャー)=パシリが、クラスの階層構造としてある。Nerd(ナード)=オタクは階層の下部に位置付けられ、最下層にはTarget(ターゲット)=いじめられっ子が属する。


で、話はUS THE DUOの「Shake it off」に戻るわけですよ。このMVに登場するのは、まさにこの最下層、いじめられっ子の人たち。

ビデオは「アメリカのティーンの95%がソーシャルメディアを通じてコミュニケーションしていて、43%がオンラインでいじめられた経験がある」というメッセージから始まる。Vineのカメラを通して、自分が言われたヒドい言葉を紙に掲げて示す。「太ってる」とか「ブサイク」とか、そういう様々な中傷の言葉を跳ね返し、最後に「シェイク・イット・オフ」=「気にしない」と笑顔を見せる筋書きになっている。

で、そのことを踏まえると、この歌詞の内容が実に深い意味を持って響く。

Cause the players gonna play, play, play, play, play
And the haters gonna hate, hate, hate, hate, hate
Baby, I’m just gonna shake, shake, shake, shake, shake
I shake it off, Ishake it off

だって浮気な人は、ひたすら遊び続けるだろうし
敵意に燃えてる人は、悪口を言い続けるだろうし
ベイビー、私はとにかく踊って、踊って、踊りまくって
気にしない

これ、もともとは「恋多き女」としてメディアにあれやこれや言われまくってるテイラー・スウィフト自身のことを歌った歌詞だと思うんです。

だけど、よくよく考えたら、「悪口を言われても気にしない」というメッセージが響くのは、クイーンビーたるテイラーよりも、いじめられっ子なんじゃないの?っていう。

そういう、パッと聴いた「いい歌」の裏側にとっても批評的な意味合いを込めたカバー。YouTubeにカバー動画を投稿して注目を浴びるっていうストーリーは沢山見るけど、こういう風に読み解けるのは、すごく面白い。

US THE DUOの「No Matter Where You Are」も、カントリーポップを現代風にしたなかなかいい曲で、わりと好きです。







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