黒柴的パンセ #20

黒柴が経験した中小ソフトハウスでの出来事 #10

ここでは、中小ソフトハウスで勤務していく中で、起こったこと、その時何を考え、また今は何を考えているかを述べていく

「技術か、業務かで判断すれば、技術を主業務とした会社が目標である」
これは、自社の経営層と話した際に出た言葉である
経営層の特定の個人ではなく、経営層は押し並べてこんなことを言っていた

これは、自社のビジネスをどのように考えていくか、という会話を行う中で出てきた言葉である
技術」というのは、ビジネスの根幹として技術力をメインとしていくということである
具体的には、特定のプログラミング言語におけるプログラミング能力であったり、特定のパッケージに対するカスタマイズ能力であったりする
業務」というのは、ビジネスの根幹となる業務知識を生かして、システム導入に関する提案をメインとしていくことである
具体的には、システムを導入することでユーザの業務をどのように変えていくか、また導入したパッケージの運用方法についてユーザの業務を元に提案していくことなどである

黒柴は、中小ソフトハウスが生き残って、かつ「成長していく」ためには、「業務」をビジネスの根幹に据えるべきだと思っている
それは「業務」を会社のナレッジとして整理しておけば、ビジネスのネタとして有効に活用できると考えているからだ
この考えに至った経緯は、過去の体験からだった

それは、1990年代の終わりごろだった
当時勤めていたソフトハウスに、鉄道会社からアプリ開発の打診があった
開発するアプリの仕様を確認するために、黒柴もその鉄道会社との打ち合わせに参加したが、状況は以下の通りだった

  • 鉄道会社は、所有する設備(主に電気機器)について、点検管理を含む設備管理アプリを使用している

  • そのアプリは、電気保安協会に勤めていた方が起業したソフトハウスが開発したもので、そのソフトハウスは西日本にある

  • 電気保安業務の法令改正による点検内容の更新や、UIのカスタマイズを依頼したいが、そのソフトハウスで電気保安業務の知見があるのは起業した方だけで、遠方のため打ち合わせも都度出張となり(当時は電子メールも一般的ではなかった)思うように進まない(業務仕様を理解している起業した方を捉まえるのが大変だということ)

  • そこで、現行と同等仕様のアプリを開発し、保守・カスタマイズについても請け負って欲しい

アプリ自体は、Microsoft Accessをベースに作成したもので、設備管理のデータベース定義に、簡単なUIを追加したものだった
これを別のアプリで代替することは可能と判断できたが、問題なのは業務知識である
当時在籍していたソフトハウスは、大規模だったが人材派遣をメインとしている会社なので、アプリの設計やプログラミングは可能だった
しかし、電気保安業務に関して業務知識を持っている者はいなかった
そのため、代替アプリを作成すること自体は可能だが、保守を含めて運用に関する提案は出来ない、と結局のところ断ることになった

この経緯もあって、黒柴は「業務知識を持っているソフトハウスって強い」と考えている
このとき、業務知識はどのような分野でも構わない
上記のような電気保安業務や、税務、健康保険請求など、法令で定められた業務は、その改正があることから、業務に精通していることは大きな武器になる
法令に関連しなくても、ECサイトや、コールセンターの運営に対するノウハウ、マーケティング一般に関する定石、業務改善を整理して、エンドユーザに提案できるだけでも、立派な業務知識だと考える

自社の経営層が「業務ではなく技術をもつ会社を目指す」と言ってしまう背景には、「自分たち程度のソフトハウスが把握している業務知識は、一般的な基礎知識であり、他人から見れば価値がない」と、勝手に思い込んでいるようだ
しかし、それは「対象の業務を実践している企業」とソフトウェアの開発を行っているからそう感じるだけで、新規にその分野を取り入れていこうと考えている企業からすれば、価値がある情報なのだ

諸兄らのソフトハウスでは、携わった業務のノウハウを会社のナレッジとしてきちんと整理し、再利用できているだろうか?





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