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雪解けアルペジオ 春秋のさだめ編

 名だたる学者を輩出したわが一族の末裔としてお勤めに出ることになりました。あまり気が進まなかったのですけど。旅日記をアップしたり夢物語をしたため発表したりと創作活動は続けておりました。すると早速小雨の夜に一人の公達が私たち女子に話しかけてくるではありませんか。昔春という季節がありました。秋とかいうものも。どちらが好ましいと思いますか。難問でした。春日はカスですね秋日和にはアキアキです。同僚に先を越されたので仕方なくギターを取り出して春がギターと歌いました。すると殿方も負けじと「冬が一番」と弓矢を取り出します。最初の矢が放たれますと弓弦がびゅんと鳴りましてその振動の消えないうちに第二の矢が飛びあたりの共振を誘い次から次へと振るわせてやがてはその地を取り巻く山々の雪に届きます。地響きとともに雪は解けて崩れて流れます。ここは姨捨山と呼ばれました。もはや春も秋も勿論冬もなく、おバス停にのみその名をとどめているのです。

410文字

恥更級日記より

たらはかに様の裏お題に参加しています。

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