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八人目の敵 ⑪

「なに、鬱ですって」
話を聞き終わって口の悪い従姉妹は言葉を切る。
「或るうつの方?」
いくら互いに遠慮会釈のない仲だといえちょっとひどい。確かに鬱とかASDとかアルツハイマーとか双極性障害とか統合失調症とか繊細さん(いやこれはない)など気になるメンタルヘルスワードを眼にするたびに気まぐれにチェックリストに印をつけ「あるある、ん?多分これはあると答えない方がいい質問だね」と気づき途中でやめてしまうのが常だったけど。
「要するに今年になって何回モノをなくしたの?」
そんなこと覚えてられるくらいなら苦労はない。要はこの人と話しているとおかしいことは外側にあるのではなく私自身の側なのだと気づかされ、いや思わせられるのだった。確かに亡くしたのはカードだけではなかった。見つかったものもあり見つからなかった、これから見つけるものもある、忘れてさえいなければ。
「でもさ、あんたのそのニセカードは今どこにあるのかな」

400文字

#小説

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