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放課後ランプ ②

 初めて会った日彼は『放課後ランプ』と書かれたゼッケンをつけていた。走りはじめて数分後に脚が攣ってしまい救護班のテントに運ばれてきた。そこでケガ人の手当てをしていたのが私だ。社内の部署対抗マラソン大会は毎年ゴールデンウィークに開催され社員の評判はすこぶる悪かった。
「君はうちの会社の医務室に勤務しているの?」
「いいえ、近所の看護学校の放課後アルバイトよ」
「もしも仕事が忙し過ぎるようだったら、病院じゃなくてサラリーマンの奥さんになるという選択肢もあるよ」
その言葉は確かに私の心のランプに火を灯したといっていい。わりと有名なメーカーだったし、今にして思えば私は純粋で無知だった。私たちは数ヶ月の交際を経てめでたくゴールインした。後でわかったのは夫が配属されていたのは後ランプの製造部署で、放漫社長の放課(ファンク)氏から後を継いで以来ランプの色同様収支も赤色を放っていたのだ。私は今夜も万華鏡ホスピタルでの夜勤だ。

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たらはかに様のお題に参加しています。

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