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八人目の敵 ④

 翌日二通の封書が届いた。一通には新しいカードが入っていた。そしてもう一通は某県の警察に私のカードが遺失物として届けられているという通知だった。某県というのは身に覚えがあった。そこに母の実家があった。母はすでに他界しているがある意味観光名所で近ごろの旅行支援に便乗して訪ねたのだった。遠路を何度も行くのは無理だが。すぐに連絡してもう不要である旨を伝えたがその際にどこで発見されたのかが発覚した。街の土産物屋のレストランだった。実をいうとその郷土料理は私にとって懐かしい味であった。その店の住所を調べて無署名で礼状を送った。
 数日後。
「篠沢ヨシエさんですね」
と声をかけてくる者があった。
「お葉書受取りましたよ、わざわざご丁寧に」そうだ相手は私の名前と顔を知っているのだ。なぜここに。あ、住所か。
「お礼なんかよろしいのに」
その声音は逆に葉書一通で済ませる気?という風にも受けとれた。
「お茶でもいかが。少しお話ししましょうよ」

410文字

ツヅク

#小説

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