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「八人目の敵」②

 予期していたことだがカードは玄関にもなかった。ウロウロとそんなところにあるはずないだろう箇所を百往復した。家のキーをカードにしなくて良かったよなどと一人ごちながら。ポケットの平べったく冷たい塊(それはまだあった)に「カード 紛失」と入力して現れた数字に発信する。
『こちら…センターです。ただいま回線が大変混み合っております…おかけ直しください』
誰もいない事務室に昼休憩で席を外していますの札が掛かっている様子が目に浮かんだ。だが世間の休憩時間がすぎても応答には全く変化がなかった。もしやプラチナチケット販売窓口にでも繋がっているのだろか。我々はなぜこんな欺瞞を許しているのか? 5分おきに発信を繰り返しては憤った。やがて往来を丑の刻参りの人々が行き交う時間となった。よい子は通話などしないのだがセンターは24時間体制とある。『こちら…、』ブツリと切れ
「はい。担当シライシです」
神はいる!
思わず泣きそうになった。のだが。

410文字

ツヅク

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