近所にカットハウスができた。その名も『ショートショート』。試しに行ってみた。話好きな美容師さんは苦手だ。やたらと自分語りをしたりこちらのことを根掘り葉掘り詮索してきたりされるとうんざりしてしまう。店内はこじんまりとしていて椅子は三台しかなかった。幸い無口なタイプだったので一安心。だが何事にも落とし穴はある。隣の椅子の客がしゃべるわしゃべるわ、そのうるさいこと。切って洗って染めてと一通りやるようだがそのあいだじゅうとめどなく語り続けている。しかもその話がどうやら美容師さん相手だけでなく、店内中に響いている。胸元の小型マイクの音が四隅のスピーカーから流れているのだ。
「このあいださ、放課後グランピングをやったんだよ。豪華なキャンプのことかって？　グラウンドでドーピングの略だよ。屋根に赤いランプを点滅させた車がさ、」
ああうるさい。
「お疲れ様でした」
は？　髪型変わってないよ？

隣で語り続けていた客は満足げに立ち去った。

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