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「介護者D」河﨑秋子

「ともぐい」で再び直木賞候補となった河﨑秋子氏は圧倒的な「熊文学」の書き手だという。この括りは元々あったのだろうか。シートン、戸川幸夫、熊谷達也、吉村昭など? 
 初めて読んだ「介護者D」では未知の世界であるが近年益々注目を集めている「熊」でなく「介護」「推し活」「コロナ禍」といった身近で誰にでも経験がありそうなテーマが選ばれている。読みながら自分の父親やコロナ禍の身動きのとれなさなどが思い出された。

 以下ネタバレ有り。

 Dとは何かといえば塾教師だった父の目を通した偏差値、合格判定といったランクづけをヒロインの派遣、未婚などその後の生き方にまで当てはめた評価を指している。試験があれば便宜的にランク付けも悪くなかろうが解放されてもなお格付けしたがる何かがある。誰もが承認欲求を抱えて生きている一方で他人をそうした目で見がちだ。
 ラストには爽快感がある。父は危なげだが長生きしそうで推しは解散し婚活は進まず友人も去った。彼女を悩ませていた基準からいえばEやFをマークしていてもおかしくないのに? 何が起きたのかは読んでのお楽しみ。

470文字

Dはdaughterかという指摘も見かけました。なるほど。「わた離」のヒロインが介護人Cなのでそれにあやかっているのかも?

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