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掟の門がわかりますか

掟の門が分からなかった。
自分ひとりのために生きよということか
一般的な解釈を知ろうとして、携帯電話を手にとろうとするのをぐっと堪える。

もう一度本を手にする。

初めから門は開いていた。だが入れなかった。
男ひとりのための門。最後は閉じられてしまう。
遂に死ぬ。


ここは近所の喫茶店。しかしまだ2回目だ。
昼過ぎの日差しが細く唯一入ってくる奥の席を選んだ。
やさしさが欲しくてほうじ茶ラテ。
口が広く分厚い陶器にどっしりとはいっている。
写真を撮ろうかと迷って、自分のための時間を守るため、撮らなかった。
撮りまくっていたあのときのラテを思い出して、決別するつもりで。

ゆるくて明るい音楽と一緒に、
「さあ時間という液体をのむんだ」
と思って飲むほうじ茶ラテは、やはり甘くて優しかった。

あとから続けて若いカップルとお姉さまがそれぞれ来店した。
空間を皆で分かつような気分になる。

窓の外からの日差しを顔で受ける。
手元の水が入ったグラスも光を受けて白い輝きを机の上に伸ばしている。

あのとき、こんなに自分のための時空間を持っていただろうかいやない、と振り返る。
こうして書く余裕すらもなかったのだ。

“おらおらでひとりいぐも”

掟の門が教えていることはこういうことか
顔を上げると西日の輝きがグラスの反射が弱まるかわりに増して見えた。


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