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「Don't Look Back~」のエモさについて(いと・をかし②)

「Don't Look Back」ってなんかエモい

The Libertinesの『Don't Look Back Into The Sun』を思い浮かべた方もすこしはいると思う。大半はOasisの『Don't Look Back In Anger』だろうけど。この2曲はエモエモなんだけど、「Don't Look Back」ってフレーズがなんかエモい。

ザ・ピーナッツ

当たり前だけど、「Don't Look Back」は日本語に訳すと「振り返るな」。「振り返るな」で一番最初に思い浮かんだのは、ザ・ピーナッツの『ふりむかないで』。

でもこれ、「振り返るな」ではなくて「ふりむかないで」なので、厳密に言うと違う。

どうして「ふりむかないで」ほしいのか

完全に脇道にそれるけど、個人的に大事な気づきだったので、なぜ「ふりむかないで」ほしいのか考察をまとめておく。あるときふと、どうして「ふりむかないで」ほしいのか急に気づいた。そこには「戦争」があったのだ。だから、ある意味異常なほどのお願いで「ふりむかないで」ほしいのだ。

大衆歌謡が大衆全体の記憶と結びつくと、途端にその意味合いが重くなると同時に、「語らないことによって語る」ことを僕はこの曲を通して覚えた。

ほかにも書ききれないほどのものを僕はザ・ピーナッツから学んだ。今度、ザ・ピーナッツとドクター・ドレーのつながりについて書きたいと思う。

人はどこにエモさを感じるのか

たぶん、これエモい・エモくない話は、帰納的で、「エモさを感じるか否か」を個別に確かめていって、都度法則のようなものを見つけていくしかないと思う。ちなみにエモフレーズとは、という自問に対して出た事例はこれだった。

あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない

瞳を閉じて 君を描くよ それだけでいい (平井堅『瞳を閉じて』)

これらに共通するのは、「戻らない過去」の話を一人称でしていること。細かい話だと、人称でいうと「僕」「君」で、「俺」「お前」はエモ度が低い。あと、「あの」「その」とかもエモい。

ちょっと

賞味期限が切れたので、麦茶を捨てた

をエモく言ってみる。

あの蒸し暑い夏の日、その賞味期限を終えたもう飲むことのない麦茶を、ランニングシャツの僕は今朝食べた納豆の臭いがかすかに残る排水口に流した

エモいのかなんなのかわからなくなったが、原文に比べてエモいことは間違いないと思う。この比較から言えることは、

1.情景の浮かぶ言葉 例:蒸し暑い夏の日 臭いがかすかに残る
2.連体詞 例:あの その
3.人称代名詞 例:僕
4.エモワードたち(ないものにする系、永遠系 (もう)~ない、消えた、残る、流す、かすかに、フォーエバー、いつまでも) など

あと、単純な論理「Aなので(だから)、B」はエモくない。でも、「AだけどB」はエモい。先程の例

賞味期限が切れたので、麦茶を捨てた

を例にとると、

賞味期限切れてなかったけど麦茶、捨てた

なんかエモい。ここからわかることは、

5.単純な論理展開はエモくない
6.助詞はエモ度が低い
7.ふつうに打たれた句読点はエモ度が低い

ということになる。誰かに捨てられた誰かが捨てた誰かと二人で買った麦茶を捨てているようだ。引っ越しの際に。

つまりエモとは

不親切な展開になってしまったが(ほぼ自分しか読まないけど)、こうしてみるとやはり「エモ」は、その語源の「エモーショナル」のとおり、「感情(感傷)」をその表現に感じるもの全体、と言える気がしてくる。さきほどの「エモ法則」をこの観点から抽象化してみる。

1.情景の浮かぶ言葉 = なんらかの感情を引き起こすもの
2.連体詞(あの、その) = なんらかの感情の伴う特定の存在
3.僕 君 ≒ 自己対話の傾向の強い一人称 = 感情と向き合う存在
4.エモワードたち(ないものにする系、永遠系) = 考えてもどうしようもないけど考えちゃうものや空想・妄想 = 感情ドリブンの思考の表れ
5.単純な論理展開じゃない = 感情ドリブンの思考展開
6.助詞がない = 感情ドリブンの発話
7.ふつうに打たれた句読点はエモ度が低い = 感情ドリブンの呼吸

すべて 感情 につながる。つまり、 感情との接続がある = エモいと思う ということなのだ。なので、上記の法則が当てはまらなくても、そこに「感情との接続」があれば、きっと「エモい」と思うはず。

なぜ「Don't Look Back」がエモいのか

このプロセスを経て、改めて「Don't Look Back」のエモさを考察しようと思ったけど、上記の結論から推論すれば自然にエモい理由がわかるので、ここでやめにしようと思う。

次回は「人類史上最もエモい10トントラックの使い方」ということで、the smithの『there's a light that never goes out』のエモさを考察していきたいと思います。

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