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海老名絢 詩集『あかるい身体で』(注文チラシ付)

このたび海老名絢詩集『あかるい身体で』を発行いたします。

海老名さんはこれまでに私家版で、『きょりかん』と『声を差し出す』を発行され、ともに、23回と25回の中原中也賞最終候補になりました。

私家版以外での詩集の発行は初となります。


 わたしにとって明確な定型がない現代詩は、「どこから書き始めてもよいし、どこで書き終わってもいい」気軽さがあって、自分の感覚を書き残す最適な手段です。日記の延長線上にあって、好きだから書いているものです。その好きでやっていることを受け取ってくださる方が存在することは、とても嬉しいことだし、ちょっとした奇跡だと思います。

「あとがき」より抜粋



海老名さんの詩を読んでいると、いつのまにか呼吸が深くなっていることに気がつきます。

読み進めていくほどに、身体が軽くなっていくような気さえしてきます。

それはきっと、他の誰に与えられるものでもなく、自分でみつけることが出来たからこそ大げさに表明しなくたっていい。

そんな淡い光を放つ、やわらかな肯定感のように感じるのです。

この一冊の詩集を包み込んでいるものは、そのようなものたちなのだと思うのです。



「灰色の猫」


足がしびれて朝です
もうこれで最後と繰り返して
フローリングの床を滑ってしまう
終わりにしたい物事を
持っていることは
少し背中を丸くする

わたしは装置なので
故障しやすい部分もあるし
通り抜けていくいろいろの感触を
受け取ったり流したりする
言葉は
わたしが生めるものではなくて
組み合わせだけを考案できる
研ぎ澄ました指先で感触を編んで
片隅から放つ

重さは絡まり合ってほどけない糸
背中に猫を作っている
抱きかかえられることを拒んで
そのくせ爪を立てて離れない
わたしだけの猫

春先のすーっとした冷え込みは
ふるい灰色の記憶を引き出す
再生を止めたいのに
毎年律儀に胸をひっかきにくる
終われないから そこに
とどまる感触があって
ちいさな子どもの身体だったことを
覚えている
灰色の猫を背負って
わたしは続いていて
今日も
世界の手を取る

『あかるい身体で』収録「灰色の猫」



著者 海老名 絢
四六判・小口折・帯付
114ページ
1500円+税
発行 8月20日
発売 8月20日頃
ISBN 978-4-87944-541-4



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直接取り引き(委託70%・買い切り65%)と、取次ぎは地方小出版流通センター子どもの文化普及協会へのご注文が可能です。

詳細は下記のチラシにてご確認いただけます。どうぞよろしくお願いいたします。


【直取引の店舗さま初回入荷特典】

海老名さんが制作された栞入り書籍をお送りいたします。
部数の限りがありますので、出荷分の一部になります。
ご了承ください。


直取引用
地方小出版流通センター


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