空洞(栁川碧斗『ひかりのような』より)

いつか目を覚まし瞳には虚空があり衣が剥が
れぽつねんと悲歎のみがひろがる朝靄を手繰
る肢体と辺りに留まる地面とコンクリートだ
けが関係を持ち同心円状に影響を及ぼすとき
の音が揺らした空気を棉に取り込んだことば
はふわりふくよかに自由になりやがて総身の
肌は圧迫されたすぼんで両手に散らばるなに
かを凝視するだけのことばなどが詩に呼ばれ
てふたたび意味をむすぶと信じる野鳥のさえ
ずりを都会にたたずむひとりの身体はかろや
かに裏切りそこにある空洞を抱えしぼみゆく
接触感覚にわたしの所在地を失うその一瞬を



栁川碧斗『ひかりのような』収録
発行:七月堂

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