「身体を流れる」より(海老名絢著『あかるい身体で』より)


雨が揺れる街で
ビニール傘越しにビルの光が滲む
唐突な水たまりは
影の向こうに
夜景を映す

空っぽの瓶を逆さに振って
見えない空気だけが入れ替わる
ように
雨の日、
わたしの水は深まる

降雨の膜が境界をはっきり知らせる
舞い落ち跳ね返る雨粒、
わたしは足首から水を吸う
吸い上げて歩く
髪の先まで水が満ちて
ざあざあ鳴っていた
耳も静かになった



海老名絢『あかるい身体で』収録
発行:七月堂

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