「一本の声」より(永澤康太著『誰もいない』より)


一本の声に戻ってゆきたい
あなたであり、ぼくでもあるような
きみであり、きみでさえないような
一本の声に戻りたい
透明な樹を、植えてゆきたい
こころのずっと奥のほうに
落としてしまった種がある
そこから延びて来るものだけ
そのものだけを、信じたい
どうして
どうして
そう思うのか
どうして
どうして
ここにいるのか
どうして
どうして
あなたは
ここに
いないのか



永澤康太『誰もいない』収録
発行:七月堂

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