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経営と言葉 (CASE1:総合商社と言葉)

私、企業の経営理念を見たり、社長の挨拶文を読んだり、中期経営計画をみたりするのが好きだなぁ~と前から思っていました。

謎の趣味ですよね(笑)
普通、就活生でもない限りそんなのを好き好んで見ることはないでしょう。
それらは形式的なものに過ぎないと思われがちですから。

しかし、最近判りました。
私は言葉に興味があるから、それらにも興味があるのだと。

経営理念、スローガン、中期経営計画、タグライン、社長の言葉・・・これらは経営において重要な役割を担う言葉たちです。

言葉によって、思想、信念、計画、方向性、心構えなどなどを表し、統制している訳ですから。

そこで、経営における言葉について着目・研究してみましたのでそのレポートをさせて頂きます。

今回は総合商社を取り上げてみたいと思います。

(1)三菱商事 ①経営理念:「三綱領」

三菱商事には三網領という「創業以来の社是」があるようです。
やっぱり、昔からある、「由緒正しき」言葉っていうところがポイントですね。
歴史ある企業にしか持ちえない、イメージ資産ですね。

「三綱領」は、1920年の三菱第四代社長岩崎小彌太の訓諭をもとに、1934年に旧三菱商事の行動指針として制定されたものです。旧三菱商事は1947年に解散しましたが、三菱商事においてもこの三綱領は企業理念となり、その精神は役職員一人一人の心の中に息づいています。

三菱商事ホームページより
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/about/philosophy/

3本の柱は以下のようなものです。

所期奉公

事業を通じ、物心共に豊かな社会の実現に努力すると同時に、かけがえのない地球環境の維持にも貢献する。

※(2001年1月、三菱グループ各社で構成される三菱金曜会にて申し合わされた現代解釈)

三菱商事ホームページより
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/about/philosophy/

処事光明

公明正大で品格のある行動を旨とし、活動の公開性、透明性を堅持する。

三菱商事ホームページより
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/about/philosophy/

立業貿易

全世界的、宇宙的視野に立脚した事業展開を図る。

三菱商事ホームページより
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/about/philosophy/

やはり総合商社ということで、地球規模・宇宙規模の視点を持つことを言っていますね。

(1)三菱商事 ②社長の言葉

ここで、社長のメッセージを見てみましょう。
社長のメッセージには、三菱商事の代表として、三菱商事がいま時代をどう見ているか、捉えているか、そしてどういう心がけで経営・対応していくべきかについての意見が盛り込まれているので、観察することは非常に有益と考えます。

2023年4月の中西勝也社長のメッセージの抜粋です。

先を見通すことが難しいこのような時代だからこそ、将来に備える思考を持つことが重要です。
『未来志向を持って、将来を一定の幅で想定し、そこから現在の課題と打ち手を深掘りする。そして未来を創っていくという志を持つ。』
中経2024はそうした想いの下で策定したものです。
未来を想定してEX(エネルギー・トランスフォーメーション)、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を一体推進することで、半歩先・一歩先を行く取組につなげて、新たな産業を創出していくとの想いから、「EX・DX・未来創造」を中経2024の成長戦略として掲げました。多くの産業と接地面を持つ当社がこれまで培ってきた「多様性」や「つながり」から生まれる「総合力」を最大限に発揮し、新たな価値としてのMCSV創出に努めてまいります。

三菱商事ホームページより
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/about/message/

まず、注目したいキーワードは、「先を見通すのが難しい」です。
やはりコモンセンスとして、先を見通すことが難しい時代であることが窺えます。VUCA的な時代観が一般化しているということかと思います。

次に、EX(エネルギー・トランスフォーメーション)、DX(デジタル・トランスフォーメーション)です。

○○トランスフォーメーションという言葉です。

つまり、いろいろとトランスフォームしないといけない時代であるということを示唆していると思います。

最後に、MCSVです。
三菱商事の中計(2024年)によると、MCSVとは

「三菱商事グループの総合力強化による社会課題の解決を通じて、継続的に生み出されるスケールの共創価値」

三菱商事中計2024年より
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/about/plan/

とのことです。
注目したいのは、共創という概念です。
三菱商事の巨大な力を以てして事を成すみたいなことではなくて、ステークホルダーとインタラクティブに創っていくというニュアンスを感じます。

共創という概念は他の分野でもトレンドだと思います。

例えば、テレビ局とyoutuberにおけるコンテンツ制作方法を比較してみます。

youtuberって、視聴者のコメント、高評価/低評価ボタン、などなどを受けて、企画を調整したり、新たな企画を立てたりしますよね。
つまり、視聴者と共に創っています。

一方でテレビ局はそういうインタラクティブ性はあんまりありません。
(多少はあると思いますが。)

他のシーンでもこういう傾向はあると思います。
もう権威的なものは流行らない。
権威より、インタラクティブで民主主義的な方が発展していくのかもしれません。

(2)伊藤忠商事 ①経営理念

伊藤忠商事の経営理念は「三方よし」です。
これは有名で、かなり一般化されていると思います。
いろんなところで使われているのを目にします。
今風に言うならば、「Win-Win-Win」かと思います。
商売の本質を捉えていると感じて、好きです。
関わった人が全員幸せになるなんて、なんて素敵なんでしょう!
いろんなシーンで応用できそうな言葉ですよね。
シンプルだけど、深くて力強い・・・。
世の中を渡っていく上で指針にしたくなる言葉です。
また、日本語である点もいいですよね。
輸入された概念とか言葉じゃなくて、
ちゃんとアイデンティティというか、受け継がれてきた感が出る。
考えれば考えるほど味わい深い。いい言葉だ・・・。

伊藤忠グループは、
創業者・伊藤忠兵衛の言葉から生まれた「三方よし」の精神を
新しい企業理念に掲げます。これは、1858年の創業以来、
伊藤忠の創業の精神として現在まで受け継がれ、
そして未来においても受け継いでいく心です。

「売り手よし」
「買い手よし」
「世間よし」

自社の利益だけでなく、取引先、株主、社員をはじめ
周囲の様々なステークホルダーの期待と信頼に応え、
その結果、社会課題の解決に貢献したいという願い。
「三方よし」は、世の中に善き循環を生み出し、
持続可能な社会に貢献する伊藤忠の目指す商いの心です。

※「三方よし」は、「売り手よし」「買い手よし」に加えて、近江商人がその出先で地域の経済に貢献し、「世間よし」として経済活動が許されたことに起源があり、現代サステナビリティの源流ともいえるもの。初代伊藤忠兵衛の座右の銘「商売は菩薩の業、商売道の尊さは、売り買い何れをも益し、世の不足をうずめ、御仏の心にかなうもの」が、その起源とされている。

伊藤忠商事ホームページより
https://www.itochu.co.jp/ja/about/mission/index.html

(2)伊藤忠商事 ②企業行動指針

これもまたすごいんです!

「ひとりの商人、無数の使命」

すごい、カッコ良すぎる!

でっかい企業だけど、ひとりひとりが商人としての自覚を持っている感じがする・・。それに、大企業の一員じゃなくて、一人の人間として向き合ってくれる感じがする。

そして「ひとり」に対比させて「無数」の使命。
なんかもうこれ以外は考えられないくらいに言い当てている気さえします。

日本における総合商社の手がけるプロジェクトって、不毛地帯で描かれているように、(時代は半世紀くらい違いますが・・・)国益に関わるような大きな仕事だと思います。ある意味、国家公務員みたいな・・・。
だから、使命っていう言葉がピッタリですね。

▼ご参考:不毛地帯の感想文です。

三方よしの解説をホームページから抜粋しました。

社員一人ひとりが、
「求められるものを、求める人に、求められる形で」お届けするために、
自らの商いにおける行動を自発的に考えることにより、
伊藤忠の強みである「個の力」が発揮できる。
そんな伊藤忠らしさをあらわすのが「ひとりの商人、無数の使命」です。

これはまさに、創業者・伊藤忠兵衛の商いの哲学であり、
当社の企業理念「三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)」を
実践するための道。わたしたちは日本を代表する総合商社として、
これからも常に「商人魂」を原点に据えながら、
売り手にも、買い手にも、世間にもより善い商い、より善い未来に向けて
「無数の使命」を果たしてまいります。

伊藤忠商事ホームページより
https://www.itochu.co.jp/ja/about/mission/values/index.html

ちゃんと、経営理念の「三方よし」とも関連付けて表現されていて、すごいなと思いました。

(2)伊藤忠商事 ③代表取締役会長CEO 岡藤正広氏のご挨拶

岡藤会長のご挨拶も拝読してみました。(2023年5月9日付け)

また、当社の強みでもある経営の効率性を示す指標ROEは17.8%と、一桁水準に止まる日本の上場企業平均を大きく上回り、継続して総合商社最高水準にあり、黒字会社比率も約9割と過去最高の水準にあります。「稼ぐ」・「削る」・「防ぐ」が現場で確りと実践されている証と考えています。
中期経営計画『Brand-new Deal 2023』の最終年度である2023年度の連結純利益計画については、地政学リスクの継続等、引き続き不透明な世界経済の先行きや市況の変動も踏まえ、(中略)
引き続き「三方よし資本主義」のもと、「稼ぐ」・「削る」・「防ぐ」の実践と共に、「利は川下にあり」の精神で、常にお客様目線で新しいビジネス、サービスを構築し、伊藤忠グループとしての商人道を突き詰めてまいります。

伊藤忠商事ホームページより
https://www.itochu.co.jp/ja/about/message/index.html

まず、伊藤忠は業績が良いということ。
それは「稼ぐ」「削る」「防ぐ」という精神の実践結果であること。
今後もそれらに加えて「利は川下にあり」の精神を継続していくことなどが盛り込まれています。

とても興味深いキーワードが出てきました!

(2)伊藤忠商事 ④「稼ぐ」・「削る」・「防ぐ」

下記のような精神のようです。

かせぐ。
よく稼ぐ商人に必要なものは「勘」という説もあり。
商いは、相手を瞬時に見抜く目にかかっている。
いつも本能を研ぎすませ、一生懸命コツコツと、
小さな成功体験を積み重ねた先にある勘は、
科学でもうまく説明できない説得力がある。

けずる。
削るは商いの基本。余計な支出。無駄な会議。
不要な接待。多すぎる残業。削る、削る、トントン削る。
それは、終わりのない掃除のようなもの。
徹底すれば、低重心で隙のない商いの姿勢を保てる。
削ることで生まれるものが、尊い。

ふせぐ。
防ぐは、稼ぐ・削るより難しく、最重要。
サッカーの試合で1点の負けを取り返す苦労があるように、
損した分まで稼ぐことがいかに大変か。
1億を稼ぐより、まずは1億の損を防ぐ。
防ぐと稼ぐは表裏一体。防御こそ最大の攻撃なり。

か・け・ふ。
それは伊藤忠商事が掲げる商いの三原則、
「稼ぐ・削る・防ぐ」を意味しています。
稼ぐは商人の本能。削るは商人の基本。防ぐは商人の肝。
その3つが支え合って成立するものです。

伊藤忠商事ホームページ 「コーポレートメッセージ」シリーズ 「か・け・ふシリーズ 統括」より
https://www.itochu.co.jp/ja/about/media_center/paperad/back_number7.html

これまた含蓄のある言葉に出会いました・・・!
やはり徹底して商人マインドを醸成しているのですね。

「稼ぐ・削る・防ぐ」
いろんなシーンに応用できそうです。

(2)伊藤忠商事 ⑤「利は川下にあり」

更に更に興味深い言葉を目にしました。
「利は川下にあり」

岡藤会長の言葉の中にこの解説も含まれていました。

私は、従来の総合商社のビジネスモデルのままでは、今後、存続の危機に晒される可能性が高いと考えています。全産業で川上のメーカーから川下の消費者に主導権が移っており、消費者接点を持つ川下の企業がより多くの利益を獲得する構図、すなわち「利は川下にあり」の状況が一段と加速しています。従い、総合商社の「プロダクトアウト型」のビジネスは、淘汰されていく可能性が高いと考えています。資源高の収束後を睨み、「マーケットイン」の発想でビジネスを再構築していくのは、すべての総合商社にとっての共通の課題とも言え、いち早くそれを成し遂げた総合商社が次の時代をリードしていくでしょう。無論、伊藤忠商事がその先頭を走り続けていく所存です。

伊藤忠商事ホームページ IRより
https://www.itochu.co.jp/ja/ir/doc/annual_report/online2022/ceomessage.html

先程、三菱商事の共創の話の中で、書いたことと同じ話題だと思います。

「利は川下にあり」=「消費者に主権が移っている。」
ということです。

掘れば掘るほど、伊藤忠の商い精神が湧き出てきますね。
さすが伊藤忠です。。。

(3)三井物産 ①社長挨拶(2023年4月)

三井物産はその長い歴史の中で、「挑戦と創造」の理念を掲げ、商社機能とグローバルに張り巡らせたパートナーネットワークを組み合わせ、お客様のニーズに真摯に応えてきました。

三井物産ホームページより
https://www.mitsui.com/jp/ja/company/message/index.html

「挑戦と創造」が経営理念のようですね。(経営理念としてはっきりと書かれていなかったので、推測です。)

(3)三井物産 ②ロゴと社名表記

2014年から、「三井物産ブランド・プロジェクト」というブランディングプロジェクトを展開しているようです。

社名表記を「MITSUI & CO.」に統一したと言います。

また、ロゴにおける社名表記を「MITSUI & CO.」に統一しました。MITSUI & CO.は、“三井物産とその仲間たち”という意味を持ちます。多様な個の一人ひとりが主役であり名脇役でもある。会社と個人が共に成長していく、自由闊達な場という三井物産の理想を表しています。

三井物産ホームページより
https://www.mitsui.com/jp/ja/innovation/brand/index.html

これも即ち、共創の精神ではないでしょうか。

(3)三井物産 ③コーポレートスローガン「360°business innovation.」

やはり、共創てきな精神と推測します。

コーポレートスローガン「360°business innovation.」を策定。ロゴ同様、グローバルで統一展開しています。世界のあらゆる国・地域で、また、あらゆる産業領域で、発想や情報、顧客やパートナー、そして事業などをかけ合わせビジネスを革新する。それによって社会課題を解決していく。私たち三井物産の未来への意志を表現しています。

三井物産ホームページより
https://www.mitsui.com/jp/ja/innovation/brand/index.html

おわりに

日本の諸産業をリードする総合商社。
その言葉はどれも含蓄があり、これからの未来を拓く力強さがあった。
また別の企業・切り口でも研究したいと思います。



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