見出し画像

定年教師の独り言vol.6 災害時に思う 「自分にできること」とは…

 自然災害から始まった2024。こんな時、自分に何ができるだろう…と考える。多くは考えているうちに時が経ち、結局何もできずじまいのことも多い。

 数年前。近県で大水害が発生した。死者、行方不明者も出た大規模災害で、そこは2ヶ月後、勤務校の修学旅行予定先だった。修学旅行は実施できるのか、変更した方が良いのか…考えた末、土日を利用して、状況を確認に行くことにした。

 災害から数日経った現地は、すでに道路が整備され、車の通行に支障はなかった。だが、街全体が土色をしている。ここが土砂に呑まれたことは疑いようがなかった。
 ボランティア本部は、巨大パチンコ店の駐車場にあった。様々な県ナンバーが泥まみれで停まっている。向こうから歩いてくる集団は、某大学のビブスを着た若者たちだ。こんな力のおかげで、道路復旧が早めになされたことに感謝しつつ、目的地に向かうため、畳の一枚も土の一杯も動かすことなく素通りしてしまう自分を恥じながら通過した。

 幸い、宿泊や見学の予定地は比較的被害が少なく、むしろ「子どもたちに元気をもらいたい」と、予定通りの実施を懇願された。協議の結果、現地でのカリキュラムに、災害を学ぶ内容を加え、実施されることになった。

 後日、たまたま被災地の関係者とお会いする機会があった。勤務校が、無事に修学旅行を実施できたことを報告しお礼を伝えると、驚きの答えが返ってきた。
「こちらこそ感謝です。御校のH先生には、ボランティアとしてお世話になりまして…」初耳だった。

 戻って、後輩のH先生に話を聞いてみると
「うちの6年生がお世話になるはずだったところなので、自分にできることはないかと思って…」
上司にも相談せず、休みの日を使って土砂撤去などを手伝ったそうだ。月曜日には、何事もなかったように勤務をしていたので、気づかなかった。
「言ってくれたら、一緒に行ったのに…」そう言いながら、いやいや、行動が先にあるところが彼らしさだ。自分とは違う。年下でありながら、純粋に「かっこいい」と、憧れた。

 ボランティアとは…支援とは…。災害のたびに議論に上る。机上論が飛び交う下で、待ったなしの支援は動いている。思いはそれぞれだ。形が違っていていい。
求めに応じて現地に赴く人、募金で支える人、無事を祈る人…何であっても、大切なのは、自分ができることを自分なりの方法で実行する…H先生が教えてくれたことだ。

 今改めて、自分にできることは何か考えている。考えすぎるな!実行するのだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?