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決行!お伊勢参り

「雨か」…
 3月末、妻の仕事終わりを待って夕刻に出発した。地元は快晴。しかし目的地の伊勢はこれから雨予報。我々夫婦は恐ろしく天気運が悪い。しかも、高速に乗ったと思ったら事故渋滞に巻き込まれる。新車の自動運転機能がなければ、とっくに気持ちが切れていたところだ。予定していたSAより随分手前で仮眠をとることにした。ここまで8時間。

 4時間ほどうつらうつらしただろうか。車を叩く雨の音で目が覚めた。予報的中だ。早朝の薄暗さに加え、雨の幕が広がっている。不安はあるが、ナビの案内はあと4時間。行くしかない。
 予定より1時間ほど遅れて、外宮駐車場に到着。疲れてはいたが、初めての伊勢神宮に気持ちが高揚する。この時点で駐車場はほぼ満車。傘同士がぶつかり合う中を正宮に向かう。霧に霞む参道、天に向かって聳える木々。そのうち、砂利を踏み締める音も他の人々の声も、一瞬聞こえなくなった錯覚に陥る。不思議な、でも初めてではない感覚。何もかも圧倒されるその場所の雰囲気に、自然と胸が熱くなった。

 正宮を参拝し、遷宮の様子に想いを馳せながらいよいよ内宮へ。やはり駐車場は満車で、随分離れた河川敷駐車場に案内された。雨の中の移動は気が重かったが、おかげ横丁の店を眺めながら歩くうちに、いつのまにか宇治橋に辿り着いていた。数ヶ月前、日曜劇場でよく見ていた景色だ。五十鈴川の水の冷たさを感じたのち、正宮に向かう。雨でも大混雑だが、ここでも他の人の存在を忘れ、一人きりになったような感覚になる。音も一瞬消えた感じだ。混雑を避け、一番端に立って妻と二人参拝した。永年の願いが叶った。

 その後、神宮内を歩いて回ったが、我々世代が多いことはもちろんだが、外国人と若い世代に多く出会った。この場所をデートコースに選んだ理由を聞きたいくらいだったが、大きなお世話だ。ただ、なんとなくほっこり嬉しかった。

 神社に参ることは、側から見れば「神頼み」だろうが、自分ではそうではない。むしろ、自分と向き合う時間だ。これからの自分の生き方、振る舞いを神様に報告することを通して、自分自身を鼓舞している、というのが一番しっくりくる。誰かに宣言することで、覚悟を決めているに過ぎない。声高に言えないので、神様にひっそり告げているのだ。伊勢神宮を参拝できたことで、令和6年度の覚悟も、グッと締まった。

 天気運の悪さも、今回に限ってはマイナスではなかった。むしろ、雨に濡れる参道や社の佇まいが、荘厳さを際立たせてくれた。日本に生まれてよかった。そして、日本って縦に長いことを痛感した二日間だった。

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