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[こぼれ話11(最終回)]15年間の取材旅で、一番印象的で一番目指したいと思った藤森先生の一つの言葉


藤森先生との取材旅の中で、色々なお話を伺いましたが、一番印象的な言葉は何?と言われたら、いの一番にあげたくなる言葉があります。

沖縄に取材に行った帰りの飛行機を空港のロビーで待っているときだったと思います。
何かのスケジュールの話になったことがありました。
先生が一瞬考えるふうになって、『今日は何曜日だっけ?』とひと言。
「水曜日です」と誰かがそれに答えたあと、『いやぁ、困るよね。曜日感覚がなくて。僕は毎日が日曜日みたいな生活だからさ』。

毎日が日曜日?!

「毎日が日曜日」という言葉のイメージは、定年後の仕事に行かなくて良くなった人といったものでしたが、藤森先生が発した言葉に含まれる意味は明らかに違いました。
先生は設計も研究も趣味みたいなものというニュアンスでおっしゃったんだと認識しました。
先生にとって、設計も研究も、100%お仕事として位置付けられているわけではなく、きっと好きなことをした結果がお仕事として報酬を得られている、ということなんだと思ったのを覚えています。

僕らはどうでしょう?
仕事は仕事、趣味は趣味。
そうやって区別している人も多いかと思います。
分類が大好き、そんなハビット(癖)。

でも僕は、どうせなら「好きなことを仕事にする」ほうがいいのではないかと思ってます。
情熱が違うし、熱量が違えば向上心も湧いてきます。
きっと効率とか考えないし、何よりも幸せな日々になるはずです。
苦しささえ、きっと楽しい。

好きなことだらけの毎日を過ごすこと。
『毎日が日曜日』はそういうポジティブな人生を表現する最たる言葉なんじゃないかと思えたのです。

藤森先生も色々大変なことがおありかと思いますが、「毎日が日曜日」と言える人生を歩まれている。
その言葉の向こうに先生のすごさを感じると同時に羨ましさも感じました。

せっかく生まれてきたのなら、やっぱり目指したい、いい意味で「毎日が日曜日」と言える人生。

先生への尊敬の気持ちはいろいろな場面で感じましたが、15年間先生と取材をしてきた中で一番印象的だったことを一つあげてと言われたら、即思い出せる言葉はコレでした。

そんな藤森先生の日曜日の仕事が詰まっている「藤森照信の現代建築考」。
ぜひ隅々まで味わっていただければと思います。

※今回でこの「こぼれ話」シリーズは最終回となります。
 全12回ありがとうございました。



「藤森照信の現代建築考」表紙

藤森照信の現代建築考

文=藤森照信、撮影=下村純一 出版=鹿島出版会
2,600円(+税10%)
ISBN:9784306047013 体裁:A5・208頁 刊行:2023年8月
日本のプレ・モダニズムからモダニズムへの流れを、ライトから丹下健三、そして現代の第一線で活躍する建築家たちの作品を通して概観する。
明治初期に開拓した日本の建築という新しい領域にモダニズムが如何にして浸透してきたのか。日本の建築界は近代という激変の時代に、コルビュジエやバウハウスの影響を受けながらも対応してきた。時代を代表する建築家たちの45作品を通してその特質を考察する。

目次

まえがき:藤森照信
Group 1 モダニズムに共通する住まいの原型をつくり続けた建築家たち
ウィリアム・メレル・ヴォーリズ、フランク・ロイド・ライト、アントニン・レーモンド
Group 2 戦後の日本建築界をおおいに豊かにした建築家たち
本野精吾、村野藤吾、堀口捨己、今井兼次、白井晟一
Group 3 造形力、力動性と民族性、記念碑性を接合させたコルビュジエ派の建築家たち
前川國男、谷口吉郎、吉村順三、奥村昭雄、内田祥哉、丹下健三、片岡献、松村正恒、池辺陽、ジョージ・ナカシマ、吉阪隆正、浅田孝、ほか
Group 4 戦後モダニズムにおけるバウハウス派とコルビュジエ派の建築家たち
大高正人、菊竹清則、磯崎新、黒川紀章、仙田満、山崎泰孝、象設計集団、伊東豊雄、内藤廣、高松伸、藤森照信、ほか
取材後記 ─ あとがきにかえて:下村純一


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