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[こぼれ話8]藤森先生はレーモンドがお好き?


建築家別掲載作品数


「藤森照信の現代建築考」には、45の建築作品が取り上げられています。

建築家別に集計をしてみると、一番多いのがアントニン・レーモンド。
取材候補だった八幡製鐵大谷体育館を1つ足せば、頭ひとつ飛び抜けます。
ご存知のように、レーモンドはF.L.ライトが帝国ホテルを建設するときに設計助手として来日した建築家で、その仕事を離れた後も日本で活躍し、著名な日本の建築家たちに多大な影響を与えた方です。

丹下健三」という評伝を上梓した藤森先生ではありますが、取材対象とした丹下健三の作品は香川県庁舎のみ。
お互いの弟子の作品数で比べても、レーモンドの弟子たち(前川、吉村、ジョージ・ナカシマ)の作品数の方がずっと多い結果。
(こっちの執筆のために丹下さんの建築は十分すぎるほど見ているから、あるいは並行して見ていたから、このシリーズでは扱いが少なかったのかもしれません・・・・)

「先生は、レーモンドがお好きなんですか?」

と質問をしたことがあったような気もしますが、その答えは明確じゃなかったのか、はぐらかされたのか、覚えていません。

ただ、好きだから多かったのかと色々思い出してみると、さまざまな建築的な手法や材料・仕上げなどを世界で初めてやったのは誰か、扱ったのは誰か、ということを探っている記事がよくみられる中で、そうしたテーマの原稿の時にレーモンドがよく出てきていたような印象があります。
なので、このシリーズでは、世界的な建築史的な興味からレーモンドを取り上げる回数が多かった、ということだったのかもしれません。

答えは「藤森照信の現代建築考」の中から見出せるでしょうか?
お読みになるときの視点の一つとしていただければ幸いです。

冒頭の写真は、東京女子大学チャペル(設計:A.レーモンド)。



「藤森照信の現代建築考」表紙

藤森照信の現代建築考

文=藤森照信、撮影=下村純一 出版=鹿島出版会
2,600円(+税10%)
ISBN:9784306047013 体裁:A5・208頁 刊行:2023年8月
日本のプレ・モダニズムからモダニズムへの流れを、ライトから丹下健三、そして現代の第一線で活躍する建築家たちの作品を通して概観する。
明治初期に開拓した日本の建築という新しい領域にモダニズムが如何にして浸透してきたのか。日本の建築界は近代という激変の時代に、コルビュジエやバウハウスの影響を受けながらも対応してきた。時代を代表する建築家たちの45作品を通してその特質を考察する。

目次

まえがき:藤森照信
Group 1 モダニズムに共通する住まいの原型をつくり続けた建築家たち
ウィリアム・メレル・ヴォーリズ、フランク・ロイド・ライト、アントニン・レーモンド
Group 2 戦後の日本建築界をおおいに豊かにした建築家たち
本野精吾、村野藤吾、堀口捨己、今井兼次、白井晟一
Group 3 造形力、力動性と民族性、記念碑性を接合させたコルビュジエ派の建築家たち
前川國男、谷口吉郎、吉村順三、奥村昭雄、内田祥哉、丹下健三、片岡献、松村正恒、池辺陽、ジョージ・ナカシマ、吉阪隆正、浅田孝、ほか
Group 4 戦後モダニズムにおけるバウハウス派とコルビュジエ派の建築家たち
大高正人、菊竹清則、磯崎新、黒川紀章、仙田満、山崎泰孝、象設計集団、伊東豊雄、内藤廣、高松伸、藤森照信、ほか
取材後記 ─ あとがきにかえて:下村純一


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