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[こぼれ話4]藤森先生が取材後に連れて行ってくれた、ただ一つのお菓子屋さん。

先日、「現代建築考」の写真撮影をしてくださった建築写真家の下村さんに久々にお会いしました。
その時に、新刊の宣伝に思い出話や裏話を書き始めた話をしたところ、下村さんから『そういえばさ…』と思い出話にのぼったのが、栗きんとんのお話。

馬籠宿にある谷口吉郎の『藤村記念堂』を取材した後、帰りのタクシーの中で、どういう流れからか栗きんとんの話になりました。
この日、JR中津川駅からタクシーで現地へ行って、帰りもJR中津川駅へ向かっていました。
中津川市を含む岐阜の美濃地方は、栗きんとんが名物だったので、食いしん坊な僕がお土産に買って帰りたいと言い出した可能性は否定できません。
お目当ての「栗きんとん」は、お正月のお節料理に入っているペースト状の食べ物ではなく、一口大に形作られた伝統的な高級菓子です。

そんなとき、先生の口から『栗きんとんなら“すや”だよ』と一言。
え?先生、お菓子にもお詳しいの?

この「現代建築考」の取材で、先生がお菓子の話をされたのは、おそらくこの時と、香川県庁の取材をした時(僕と下村さんが撮影している間にかき氷を食べに行っていた!!!笑)と、最後の取材で先生の作品である草屋根(ラ・コリーナ近江八幡)に行った時くらいです。

そのくらい稀な話題への参加だったと思います。
だから、先生がお菓子のお店にご案内してくださったのも珍しい出来事です。
いや、珍しいというか、取材をしてきた15年間の中で、取材先じゃなかったお店では唯一ここだけです。

到着すると、年季の入った店構え。
見るからに美味しいんだろうな、という雰囲気がありました。

老舗だからご存知だったのか、お菓子がお好きだったから詳しかったのか、
何か理由を聞いた気もしますが、なにせ10年単位で昔の話で、もう忘却の彼方です。
もしかしたら、栗がお好きだったのかも。
ほら、ラ・コリーナに建設したカステラショップの作品名も『栗百本』でしたし。。。

と、ここまで下書きを書いていて、昨日気がついたことがあります。
昨日の記事で触れた「小泊Fuji」さんの先生のご紹介文に、「好きな食べ物甘栗。」って書いてあるじゃないですか!
それなら栗きんとんだって、大好きですよね!!!

ちなみに「すや」の栗きんとんは季節もので、秋(9月〜1月)だけの限定品だったようです。
ちょうど良い時期に岐阜に取材に行っていたんですね。

そんな珍しい出来事の発端になった藤村記念堂の取材記事では、藤森先生がなぜこの小さな建築が谷口吉郎の代表作と言われるのかを考察されています。
新刊『藤森照信の現代建築考』のp.80に掲載されています。
ぜひお手に取っていただければ幸いです。


栗きんとん すや
https://www.suya-honke.co.jp/



「藤森照信の現代建築考」表紙

藤森照信の現代建築考

文=藤森照信、撮影=下村純一 出版=鹿島出版会
2,600円(+税10%)
ISBN:9784306047013 体裁:A5・208頁 刊行:2023年8月

日本のプレ・モダニズムからモダニズムへの流れを、ライトから丹下健三、そして現代の第一線で活躍する建築家たちの作品を通して概観する。
明治初期に開拓した日本の建築という新しい領域にモダニズムが如何にして浸透してきたのか。日本の建築界は近代という激変の時代に、コルビュジエやバウハウスの影響を受けながらも対応してきた。時代を代表する建築家たちの45作品を通してその特質を考察する。

目次

まえがき:藤森照信

Group 1 モダニズムに共通する住まいの原型をつくり続けた建築家たち
ウィリアム・メレル・ヴォーリズ、フランク・ロイド・ライト、アントニン・レーモンド

Group 2 戦後の日本建築界をおおいに豊かにした建築家たち
本野精吾、村野藤吾、堀口捨己、今井兼次、白井晟一

Group 3 造形力、力動性と民族性、記念碑性を接合させたコルビュジエ派の建築家たち
前川國男、谷口吉郎、吉村順三、奥村昭雄、内田祥哉、丹下健三、片岡献、松村正恒、池辺陽、ジョージ・ナカシマ、吉阪隆正、浅田孝、ほか

Group 4 戦後モダニズムにおけるバウハウス派とコルビュジエ派の建築家たち
大高正人、菊竹清則、磯崎新、黒川紀章、仙田満、山崎泰孝、象設計集団、伊東豊雄、内藤廣、高松伸、藤森照信、ほか

取材後記 ─ あとがきにかえて:下村純一


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