見出し画像

18きっぷ旅、飯田線に乗る

 鉄研顧問との会話がきっかけとなった、青春18きっぷの残り3回券を購入した一人旅。


 9月3日、旅の最終日。名古屋駅から豊橋まで行き、そこから飯田線に乗り継いで、東京を目指す。
 メインの乗車路線となる飯田線は、1980年代まで旧型電車が使われていた。
 現在でも秘境駅が点在していて、オールドな鉄道ファンのみならず、旅行好きにも有名である。
 また、この路線のダイヤグラムの特徴の一つに、ロングラン列車の存在があり、片道乗り通すと6時間を超える。

 6時15分名古屋発、普通浜松行に乗車。
 飯田線の始発駅である豊橋まで片道2時間弱の乗車だが、新しめの転換クロスシートの車両なので、この区間は快適だ。
 前日のネットカフェではほとんど眠れなかったこともあり、途中眠りの世界へと誘われる。

 豊橋8時11分発、普通天竜峡行に乗車。乗り継ぎは約10分と短かったので、コンビニへ急ぎおにぎりを二つ購入する。
 今回乗った車両は、213系という国鉄時代末期に作られた車両である。一応転換クロスシートではあるものの、シートピッチが狭く、座り心地がすこぶる悪い。
 かと言い、みんな背もたれを倒す人もいないから、4人がけにもしにくい。
 仕方がないので、2人がけにした状態のまま我慢する。
 ずっと座っているせいで、お尻の痛みと足の痺れは半端ない。おまけに、前日ネットカフェでよく眠れなかったので、半分意識が覚醒した状態だった。
 車窓も途切れ途切れの記憶しかない上に、写真も撮影する元気がなかった。

 だから今回は写真が少ないでしょ。

 そして、この路線はとにかく駅数が多い。トータルで94駅ある。
 普通列車はその全てに停車していく。
 秘境駅として名高い、小和田駅、田本駅などにも律儀に停車する。
 駅に到着する毎に電車を降りて、駅舎駅名標を撮影している人もいた。自分は降りていないが。

 途中の天竜峡で、一旦乗客はすべて降ろされる。

 この列車は時刻表上では、天竜峡で二つの列車(今乗ってきた天竜峡行と20分後に発車する天竜峡発茅野行)に分離されていて、両者はあたかも別の列車のように見える。
 しかし実際には、二つの列車は同じ車両を使っていたのである。
 おそらく、この20分の間に同じ駅から特急「伊那路1号」がやってきて先発するので、その待ち合わせもあるのだろう。
 その際、狭い駅構内、特急の通り道にこの普通列車を置いておくことはできないので、一旦車庫に入れて、特急出発後に茅野行として出発する、と言ったところだろうか。

 いずれにしても、この時点ですでに約4時間ぶっ通しで乗車していたため、お尻と背中がバキバキに痛くなった。
 車両が戻ってくるのを待っている間、ホームで一人、軽く伸びをしたり、豊橋で購入したおにぎり2つを食べたりして時間を凌ぐ。

 天竜峡駅付近は、商店らしきものが駅前に少しあるのみで、非常に閑散としている。
 もちろん、コンビニらしきものはない。
 ホームでは鳥の鳴き声くらいしか聞こえないくらい、人気がまばらだった。

 特急列車を見送り、車庫から戻ってきた車両に乗り込む。
 12時33分発、普通茅野行はわずかの観光客をのせ、再び静かに発車した。
 この先も、茅野駅の一つ手前、上諏訪駅で降りるまで3時間以上かかる。
 列車はやがて、長野県飯田市の中心駅、飯田駅に到着。
 地元の学生のような若い人たちが乗車してくる。
 この辺りから市街地がポツポツ点在し、車窓からも人里の気配が感じられてくる。さすがにここまでくると眠気から回復した。
 以降、下車した上諏訪駅あたりまでは、混雑ほどではないが、乗車率はそれなりに高く、山越えの区間に比べ、いくばかりか活気が出てくる。

 豊橋から通算約6時間かかって、列車が上諏訪駅に到着。
 この駅の売りはなんと言っても駅構内に足湯があること。私はこれに浸かるためにこの駅に降りたと言っても過言ではない。
 以前からこの足湯は気になっていて、次の列車を待つ間に浸かることに。
 駅に温泉ないし足湯がある駅は全国的に珍しい。
 わたらせ渓谷鉄道の水沼駅や、石巻線の女川駅など、日帰り温泉施設が併設された駅に行ったことはあるが、この足湯に浸かるのは初めてだった。
 6時間乗りっぱなしで、パンパンに膨れ上がった足が少しほぐれたような気がする。
 ここで、私はタオルの類を忘れたことに気づいた。仕方なくハンカチで足を拭く羽目になった。

 ここから中央本線になる。途中、小淵沢で乗り継いで高尾まで。
 小淵沢駅までの普通列車は、地元の大学生や、登山客とおもわしき人で混み合っている。
 セミクロスシートの車両が来たが、私はドアの横に陣取って立っていた。

 小淵沢駅で、小海線の観光列車「HIGH RAIL 1375」を駅で見かけ、この日唯一写真に収めつつ、小淵沢から普通高尾行に乗り込む。

小淵沢駅にて、偶然停まっていた「HIGH RAIL 1375」。

 幸運なことに、この高尾行の列車もセミクロスシートの車両だったので、窓側の席を確保し、早々に座る。
 上諏訪からの乗客がそのまま流れてきたので、車内はやはり混んでいる。
 この先、日が暮れて車窓も真っ暗になっていくので、持ってきた文庫本にひたすら没頭し、ついに読破した。
 そして、残り3回分の18きっぷが全て改札印で埋まった。 
 高尾で乗り換え、新宿には20時半頃到着する。

 また一つ、旅の思い出が増えた。

(完)


<18きっぷ旅の記事、1日目、2日目の記事はこちらから!>

  • 「時刻表が読めない鉄道ファン」から始まる18きっぷ旅

  • 続・「時刻表が読めない鉄道ファン」から始まる18きっぷ旅

上記2記事も併せてどうぞ!

この記事が参加している募集

一度は行きたいあの場所

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?