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法務相談の受け方・終わらせ方

はじめに

私は、IT企業で法務担当をしています。

今日は、法務相談をどのような流れで進めて、どのように終わらせるかというところをお伝えしたいと思います。

まず、終わらせることの大切さについて、お伝えしたいと思います。

ついつい、考え込みがちな法務の仕事。

自分のところでボールをついつい止めてしまうこともままあることだと思います。

ただ、考えているだけでは、案件は前にすすみません。

法務のボールが完全に離れて、やっと事業部門や相談してくれているカウンターパートの施策が前に進みます。

法務の仕事はボールを止めないように動かし続けることだと、私は思っています。

自分のボールを手放すということを強く意識して、仕事をすることが非常に大切です。

ヒアリングのポイント

ここでいう、ヒアリングは、実際の打ち合わせだけでなく、テキストでのヒアリングを含めてヒアリングと言っています。

私は、どんな相談の時も次のポイントを大切にしてヒアリングしています。

①ヒト・モノ・カネ・データの流れ
出来るだけ具体的に法人名や金額などをヒアリングします。また、個人情報の取り扱いについては慎重にヒアリングします。
また、誰と誰との間で契約を結びたいのか、いつお金を貰いたいのかなど、ヒアリングする際には5W1Hを大切にしながらヒアリングをします。漏れていないか不安になったら、ヒト・モノ・カネ・データと5W1Hの組み合わせで、漏れをチェックします。
契約であれば、始まってから終わるまで(喧嘩別れする場合も想定して)を意識して相談に乗るようにしています。契約書雛型をチェックリストにすると漏れなくヒアリングできますよ。

②相談者の真に実現したいこと
何を本当に達成したいのか(契約した先にやりたいことは何か)まで聞くようにします。
この時に大切なのは、事業の実現したいことに興味を持ち、共感することです。
心を開いてもらって漏れなく事実確認できれば、今後の展開まで見据えて、回答を準備することができます。
この際に、商品、事業の全体の流れ、商流、背景、中長期的な戦略を、理解していると話がスムーズに進みますし、事業部の意図も汲み取りやすいと思います。

③スケジュール感
いつまでに対応してほしいのかを必ずヒアリングします。所属している企業では法務相談の回答目安を通常3日間と設定していますが、3日後にはじめての返信が来ても意味がなく、初日には返信をして、スケジュール感を把握して、事業部と納期について期待値調整をした上で案件を進めていくことが大切だと思っています。

打ち合わせをする際のポイント

打ち合わせの際には、事前準備が非常に大切です。
具体的には、事業部の貴重な時間をもらうことになるので、MTGの目的決めて、終わらせ方を想像しておくことが大切だとおもっています。

①認識を揃える又は説明するため(情報提供をする)
②不明点を明確にするため(情報提供を受ける)
③協議して、意思決定するため(意思決定)

上記3つが混ざることもあると思いますが、情報提供が完了して、認識が揃ってからじゃないと、意思決定にはいけないですね。

そのため、何を確認するのか、何が不明なのか、何を説明しないといけないのかを事前に必ず準備して、MTGの場で、何を考えていなかったことを話すようなことを避けることが大切です。

そして、MTGが終わった後に、だれが何をやることになるのかをある程度想像しながら、MTGに臨むことで、単に話合っただけのMTGではなくなります。

MTGは上記の事前準備が8割です。

残り2割ですが、自分も相談者も人間なので、全部が全部分かる訳じゃありません。その場で、相手の理解を確認しつつ、アプローチを変えないといけないかもしれません。
表情、声のトーン、話し方も含めて、しっかり観察しながら、MTGをすることで、臨機応変に対応できるかなと思います。
また、MTGの場で、事業部に追加でお願いすることもあると思います。どんな様子かをしっかり観察して、焦らずに、敬意をもってお願いすることで、案件を前に進めていきましょう。

質問する時に大切なこと

自分の分からないこと、気になることをついつい無邪気に聞いてしまうことがあるかと思います。

相談者が営業担当だったとしても、お客様のことを全て知っている訳ではありませんし、営業担当でなくても調べたら分かることもあります。

誰に聞くのが適切か、どう調べて確認するのが適切かを意識しながら、質問事項を考えてみる無駄なラリーが減ると思っています。

基本的に聞きたいことは聞けばいいと思うので、確認する相手を間違えないようにしましょう。

法務相談の検討について

上記を経て、きっと事実関係や相談者の実現したいことが明らかになったかなと思います。
そうしたら、検討(外部弁護士への相談含む。)や準備(契約書の作成含む。)などに、30分、1時間、1日、3日かかりそうかを考えます。
※そもそも、ヒアリングもせずに5分で終わる案件ならさっさと返信して片付けてしまいましょう!
※考える際には、①想定されるリスク(法令違反リスクor契約違反リスク)の程度(金額やレピュテーション)と発生可能性②適用される法令や社内ルール③過去の類似案件の有無(回答方針がズレないように)④相手の立場など色んな視点で場面を見てみる(視点の行ったり来たりでリスクが見えることもある)⑤その他(決裁ルート・情報共有するべき人や部問など)を考えてみましょう。リスクは出来るだけ具体的に想像するようにしましょう。そして、分からなければ、事業部門や相談者に、事業部として懸念されることや心配していることは何を思い切って聞いてみましょう!事業部は、実現したいことや心配ごともしっかり考えて事業を作り上げてくれているので。

30分や1時間で終わりそうな案件であれば、その日のうちに解決して、終わらせて、相談者に返信をしてしまいましょう。過去にやったことのある案件だったりで、ある程度回答の道筋や根拠も想像がついている状態だと思います。
きっと明日の自分を助けることになりますよ。

1日や3日かかりそうな案件は、時間を区切って(1時間ときめて)しっかり悩んで、ある程度方針立てて、わからないを部分を明確にして、さっさと上司や先輩に相談してしまいましょう。
※先輩や上司でも当たりがつかなかったら、一緒に論点整理して、外部弁護士の相談しちゃいましょう!

1日や3日寝かせても、いいことありません。

どうしても悩みたい・考えたいのであれば、最大で1日置いて考えてみるくらいにしましょう。
考えている時間は、案件が止まってしまっている状態であることを意識して、検討することが大切です。

これは、資料作り、契約書の作成、ドキュメントのレビューに時間をかけるないう意味ではありません。レビューなどにかかる時間は必要な時間だと思っています。

漠然とした悩み、方針の立っていない検討には、出来るだけ時間をかけないで、周りの力を借りるのがいいのではないかなと思います。

リサーチする際も漠然とリサーチするのではなく、仮説(自分が考えた方針)を持って、リサーチして、答え合わせをするようなイメージで調べることで、効率よくリサーチができると思います。

法務は、正解を出すのが仕事ではなく、案件を進めて、売り上げに貢献するのが仕事なので、時にはリスクも取らないといけません。

実務上は問題ないにもかかわらず法学的に理想な答えを追い求めることが、事業を止めてしまうことになりかねません。

一方で、間違った回答をすることが許される訳ではないので、正確な回答(根拠のある回答と選択肢)を用意するように心がけないといけません。

効率よく正確な回答をできるように、日々の研鑽も怠らないようにしないといけませんね(自戒の念をこめて、、)。

法務相談の終わり

法務相談は、こんなリスクがあります、あんなリスクがありますと伝えて終わりではありません。

相談者にどういうネクストアクションを取ればいいのかを明確に示して、相談者が自分の頭で理解してネクストアクションを取れることが、法務相談の終わりです。

分かりやすいところだと、契約書をレビューして修正をしたら、事業部にも目を通してもらって、お客様に説明ができる状態になってもらうようにする。そのために、ポイントをかいつまんで、フィードバックするように心がける。

事業部からしたら、いっぱい修正履歴がついていても、何が大切か分からないことも多いですしね。(毎回毎回伝えていたら、だんだんとポイントも理解してくれたりするものです)

どんな時も、ボールが浮かないように、誰が何をするのかを明確にし続ける意識で仕事を進めていたら、法務に相談する心理的なハードルも下がってくれるのではないかなと思っています。

おわりに

私の所属している組織では、法務組織のメンバーの理想像を「コンシェルジュ」と表現しています。

この人に相談したら大丈夫と思ってもらえるように、お客様に安心を届けられるように、日々業務に取り組みたいと思います。

一歩先回りしたサービスを届けられるように、事業理解(お客様理解)に努めて、自己研鑽をして、できるだけ毎日機嫌良く仕事をしているのが大切だとおもっています。

おわり

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