安いモノでつつましく生活すれば安い税金で済むし、高いモノで贅沢な生活をしたければ高い税金を納めれば良いからだ。

『ただ「逆進性は勘違い」と筆者は過去にSNSで何度かつぶやいている。すると見知らぬ人物から一体何が勘違いなのか? と絡まれたので、ググって自分で調べて下さいと答えたが、どうやらまったく理解できなかったようだ。各種メディアでも消費税には逆進性があると報じられることはいまだにあり、勘違いであることは自明の理かと思っていたらそうでもないらしい。~消費税は弱者に厳しい、逆進性があるという勘違いに基づく指摘は、結果的に複雑怪奇で史上最悪の軽減税率の導入にもつながった。改めて逆進性は勘違いであるとハッキリ説明しておきたい。消費税は所得が低い人ほど負担が重い、とはどういう事か。これは支出に占める「生活費」の割合による。食費、光熱費、通信費など、生きていく上で欠かせない支出を生活費と考えた場合、所得が少ない人ほど生活費の割合が多い。筆者はFP(ファイナンシャルプランナー)として多数の家計を見ているが、これはもちろん十分に承知している。年収が500万円の世帯と1000万円の世帯は、生活費に2倍の差は無く、貯蓄にまわるお金の割合も収入が多い人の方が高い。つまり所得が低い世帯は支出に占める生活必需品の割合が多く、増税の負担から逃げられない。一般的には、これをもって逆進性、つまり消費税は弱者に厳しいと指摘される。軽減税率が食料品に導入された経緯や、他の生活必需品にも導入すべきといわれるのもこれが理由だ。~「負担と給付」といわれるように、集めた税金は当然さまざまな形で使われる。つまりは「給付」だ。消費税に限らず税金はどのように集めるか、そしてどのように使うか、負担と給付をセットで考える必要がある。税金による給付=公的なサービスで、高所得者がどのように扱われているか知らない人も多いだろう。筆者が逆進性は気のせいと指摘する理由はここにある。結論からいうと高所得者の負担は極めて重く、冷遇されている。~保育料に限らず所得が多いほど負担が多い、あるいは給付が少ない公的なサービスは多数ある。つまり負担と給付の両面で発生する「二重の累進性」が高所得者には働く。これは消費税の逆進性を打ち消して余りあるほどに大きい。~筆者はすべての公的サービスの仕組みを把握しているわけではないが、他にも所得に応じて負担が増える制度は当然あるだろう。収入が多いほど有利な制度はふるさと納税くらいだ。筆者は軽減税率について、「なぜデンマークは、消費税が25%でも軽減税率を導入しないのか」で、いかにトンチンカンな仕組みであるか指摘した。EUで導入されているこの仕組みは、経済成長に悪影響を与えかねないから他国は導入すべきでないと警告をしているほどだ。日本でも多数の経済学者と政治学者が連盟で導入すべきではないと提言をしている。~消費税は一律10%を適用して低所得者には別途お金を支払うなど、消費税の枠の外も含めて全体でバランスを取ればいい。この考え方は逆進性も同様だ。消費税による逆進性が問題であれば、消費税以外の税金や保険料も含めた「負担と給付」全体でバランスを取ればいい。逆進性を過剰に問題視すれば、世紀の悪法である軽減税率をなくすことはできない。加えて、消費税と引き換えに、現役世代だけが負担する社会保険料が大幅に引き上げられる。高齢者が消費税に反対するのは当然だが、現役世代は軽減税率と社会保険料の引き上げに反対すべきだ。~消費税には逆進性があるという話は、だから「軽減税率が必要」「消費税の引き上げは辞めて社会保険料を引き上げよう」「法人税を上げろ」「金持ちに課税しろ」という話へと展開していく。軽減税率がろくでもないことはすでに以前の記事で書いた通りだが、社会保険料の引き上げは現役世代を直撃して、最も負担している世代をさらに痛めつける形になる。~法人税の引き上げや「金持ち」への課税は、もうかってるやつらには罰を与えろという話に等しい。そして、完全に誤解されていることがある。すでに規模が大きくなった企業や資産家になった「本当のお金持ち」は、法人所得や個人所得に課税が強化されればかえってその立場は安泰になるのだ。新たに勃興したベンチャーも老舗企業も、そして資産家もこれからたくさん稼いで資産家になりうる若者も、同じ稼ぎには同じ税率が適用されるということは、後から来た新興企業と若者は税率が高いほど追い付き追い越すことが難しくなるからだ。個人でいえば、初めて1000万円を稼いだ人も、20年間連続で1000万円を稼いだ人も、税率は同じだ。これは企業にも当てはまる。税率が高いほど手元に残るお金は減り、先に財産を築いた個人や、地位を築いた企業に勝負を仕掛けるだけの資金が減ってしまう。つまり順位、ヒエラルキー、地位は税率が高いほど入れ替わりが難しくなる。~資産の高低と所得の高低をごっちゃにすると、金持ちに課税をしろという勘違いが生まれる。実際には資産と所得、それぞれの高低を組み合わせれば2×2=4つの分類があるにも関わらず、資産も所得も低い人を除けば、残り3者は現在全ていっしょくたに「金持ち」扱いされている。所得は高くても資産がない人、所得は低くても資産がある人、そして所得も資産も多い人と、3者3様に適切な課税がなされなければ、入れ替わりがなくなって階層の固定につながる。企業を見ても、売上や時価総額で上位の企業は昔からほとんど入れ替わりがない。これは日本の活力を大きく削いでいる。時価総額上位100位までの企業を見ても、新しく興った企業はソフトバンクとファーストリテイリング、そして大きく離れて楽天、目立つのはこの三社程度だ。税率が高いほど投資に回される資金は減り、新しい企業の成長は阻害され、そして経済のダイナミズムは殺される。いい加減この程度の認識は共有されるべきだ。広く薄く課税される消費税は、入れ替わりを阻害する要因となりにくい。世界でトップクラスに豊かな北欧諸国は、デンマークの25%をはじめ消費税も世界でトップクラスに高い。短期的に見れば景気の上下があっても、長期的に見れば高い消費税が経済成長を阻害しないことを明確に証明している。~『個々の制度に問題はあっても、全体として公平性が保たれていれば可とすべきではないだろうか。税や保険料という負担面だけではなく、給付面も含めた制度全体で、豊かな人は給付に比べて負担が大きく、そうでない人は給付に対して負担が小さくなっていれば十分だろう。消費税の逆進性だけをことさらに取り上げてこれを問題視するのは、結局非常に複雑な制度を作りだすだけに終わる恐れが大きい。消費税の逆進性は大問題か? ニッセイ基礎研究所 経済研究部 専務理事 エグゼクティブ・フェロー 櫨浩一 2012/05/15』負担と給付を含めた制度全体で公平性が保たれていればいい……。これは12年に書かれたかなり昔の記事だ。負担と給付はトータルで考えるべきと、繰り返し説明した話は、このレポートがベースになっている。逆進性の勘違いについてはとっくの昔に指摘されているにもかかわらず、低所得者対策として軽減税率は高い支持率で導入された。そしていまだに逆進性が問題であるとトンチンカンな指摘がされる。ググれば10秒で見つかるような情報を確認しない人が多数派である限り、今後も不利な政策が採用され続けるだろう。』

私も消費税率アップが単純に弱者の負担増になるとは思えない。安いモノには安い税金、高いモノには高い税金という公平性は保たれるからだ。安いモノでつつましく生活すれば安い税金で済むし、高いモノで贅沢な生活をしたければ高い税金を納めれば良いからだ。

消費税は弱者に厳しいというウソ ~逆進性という勘違い~
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1910/31/news040.html

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?