シロイヌナズナの無菌播種と栽培

  <培地作成>

1. 1/2 MS salt 溶液を作製する。

     0.5 g/L MES
     1/2 MS salt(必要に応じて+vitamin mix)
     1% sucrose
     (1/2 B-5 +1/1000ハイポネックスなどの無機塩類培養液でも可)

2. 1N KOHでpHを5.6〜5.8にあわせる。

3. Agarを0.8〜1%、あるいはPhytagelを0.9〜1.2%を加えて、オートクレーブする。
(根の観察には、Phytagelの方が培地が透明に固まるのでよい)。

4. オートクレーブ後、クリーンベンチの中で培地を作製する。
1週間以上の栽培中に乾燥しないように、深底シャーレ(例:φ90 x H20 mm)に通常の菌用培地よりも厚めに培地を固めます。培地をシャーレに流し込む前に、必要に応じてフィルター滅菌した抗生物質やホルモンなどを加えます。

* プレートを立てて育てる、根のプレート内への侵入を防ぐ等の用途でagarやphytagelの濃度を1.5〜2%にする場合もあります。

* 1/2 MS-1%Sucrose培地は、あらかじめKOHの量などを決めておけば、毎回pHを合わせる必要はありません。

 例)Sucrose                              30     g
   MS Salt                              2.15  g
   Vitamin sol'n                      0.5   mL
   250 mM MES-KOH ph 5.7    5      mL
   5N KOH                            20      µL
                      /L

<種子滅菌>

シロイヌナズナの種子は、およそ50粒/mg。
100から1,000粒程度の場合、1.5〜2 mLのエッペンドルフチューブ、それ以上の場合は15 mLあるいは50 mLのファルコンチューブを用いて滅菌します。

以下、エッペンドルフチューブの場合。

1. 500 μLから1 mLのエタノールを加え、3分間程度上下に緩く振りながら撹拌する。

2. (軽く遠心して)上澄みを取り除き、0.25-0.5% 次亜塩素酸ナトリウム(あるいは20% ブリーチ液)- 0.01% Triton X-100溶液 1 mLを加えて5分間再び撹拌する。

3. (軽く遠心して)上澄みを取り除き、滅菌水1 mLで3回リンスする。
培地にMESなどのバッファーが入っていない場合は、5〜6回以上繰り返しリンスする。

4. 最後に、種子を0.1% agar液もしくは水に懸濁して、上記plate上に播種する。

5. 播種後のプレートは種子がプレートの表面を流れない程度に乾燥させた後、サージカルテープでシールする。

6. アルミホイルでくるみ、2〜3日間冷蔵庫で静置した後、生育条件下に移動する。

*Agrobacteriumで形質転換したT1植物の選抜時には、100〜500 μL volの種子をファルコンチューブに入れて、同様に滅菌します(200 mg = 10,000粒)。
Φ150 x 20 mm選抜プレート、3〜5枚にプレーティングします。
Agrobacteriumなどのバクテリアが生えやすいので、カルベニシリン(Carb)を入れておきます。
選抜後は速やかに、通常プレートに移植して、根を長くさせてから土へ移植すると、土での栽培がうまくいきます。。

*シロイヌナズナの一般的な生育条件は、22℃、16-h light 8-h dark の長日サイクルである。この条件下では2ヶ月程度で世代交代が行われます。しっかり育てたい、交配のタイミングを合わせたい、種子を多く欲しい、といった場合は、16℃や短日条件下で生育させます。その場合は、種子が取れるまでに半年程度かかります。

*滅菌後直接生育条件下へ移動すると、発芽率が悪く、発芽時期も揃いません。一方、数週間冷蔵庫に放置すると、春化処理をしたことになり、短日条件でも開花が早くなります。

<土への移植>
1. メトロミックス:バーミキュライト=1:1の土を作製する。

2. 植物の根をピンセットでつまんでプレートから取り出し、根を土の中に潜らせるように移植する。移植する際には、プレートに水を加えておくと根が切れにくい。

3. 移植直後は植物体が乾燥しやすいので、小さい個体の場合は1週間程度、大きい植物でも2日程度ラップをかけておく。

4. 水が湿る程度に水やりをする。1週間に一度程度、1/1000希釈のハイポネックスを与える。

* カビが生えやすい場合にはバーミキュライトを大目に、乾燥しやすい場合にはバーミキュライトを少なめにします。

* シロイヌナズナはどちらかというと乾燥に強く、湿度に弱いので、カビたり、藻が生えてこないように、水のやり過ぎには気をつけましょう。

* 通常栽培の場合は土に直播きしてもかまいません。直播きの場合、生育が遅い、生育が揃わない、あとで間引くのが面倒であるといった欠点があります。可能であれば、播種した後、土ごと低温室で2,3日静置するのが良いでしょう。

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