Shigeru Hanano (花野 滋)

りっぱすぎる決心はきっと三日坊主になるから by ドラえもん

Shigeru Hanano (花野 滋)

りっぱすぎる決心はきっと三日坊主になるから by ドラえもん

マガジン

  • 科学的思考、ニセ科学、遺伝子組換えなどに関する雑文

    ここに書かれている情報は個人的な見解であり、研究所や大学の見解ではありません。

  • 実験プロトコール

    個人的に使っている実験プロトコールを公開しています。

  • バイオインフォマティクスのメモ

    実験メインの研究者なので、バイオインフォマティクスやデータ解析を忘れないための備忘録的なもの。

最近の記事

PCRについて

遺伝子工学の三種の神器といえば、DNAを切り貼りしてクローニングする技術、DNAの塩基配列を決定するSequence技術、そしてPCRである。 新型コロナウイルス感染症流行時の「PCR検査」で「PCR」という単語を耳にした人も多いだろう。 今回はPCRの話。 PCRとはPolymeras chain reactionの略称で、日本語ではポリメラーゼ連鎖反応といい、DNAの特定の領域を試験管内で大量に増幅する方法のことである。 1983年にPCR法を開発したマリスは、1993

    • プレゼン用スライドについて

      年が明けると、学士、修士、博士の学位論文の提出と学位発表会のラッシュです。そこで、学生さんのプレゼンを見ていて、スライドについて気になったことを書いてみます。 まずは、ダメなスライドの例を挙げます。 このように、論文の図をコピペしただけの図はいただけません。 (1)タイトルから「植物ホルモンの影響を調べたんだなぁ〜」ということは想像がつくものの、結論がわからない。 (2)A, B, C…については、きちんと説明した方がよい。B、Dについては全く意味不明である。 という

      • 【最近読んだ論文の備忘録】Uncovering the transcriptional regulatory network involved in boosting wheat regeneration and transcription

        Liu et al., 2023 https://www.nature.com/articles/s41477-023-01406-z.epdf 一般的に、動物では生殖細胞やiPS細胞、トカゲの尻尾やプラネリアの細胞などを除いて、一度分化した細胞は他の細胞に分化することはできません。それに対して、植物では一度分化した細胞から再び他の細胞を再分化させることができ、個体を再生することも可能です。と一般的に述べられていますが、実際には容易に再分化が可能な植物種はシロイヌナズナやタ

        • 【最近読んだ論文の備忘録】Comparative phylotranscriptomics reveals ancestral and derived root nodule symbiosis programmes

          Libourel, C., Keller, J., Brichet, L. et al. Comparative phylotranscriptomics reveals ancestral and derived root nodule symbiosis programmes. Nat. Plants (2023). https://doi.org/10.1038/s41477-023-01441-w 最近、窒素固定共生関連の論文を読んだので、メモ。 植物微生物間の相

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        • 科学的思考、ニセ科学、遺伝子組換えなどに関する雑文
          17本
        • 実験プロトコール
          20本
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          42本

        記事

          Rhizobium rhizogenes 毛状根形質転換法

          ここでは、Rhizobium rhizogenesを用いた毛状根形質転換法を紹介します。 Rhizobium rhizogenesは、通常の植物形質転換法でよく用いられるRhizobium radiobactor (旧名:Agrobacterium tumefaciens)と異なり、カルスではなく毛状根を誘導する。この菌を用いた形質転換法では、遺伝子を導入した形質転換体を個体として単離・維持することは難しいが、遺伝子導入時可能な植物種の宿主レンジが広い、根の形態を直接観察で

          Rhizobium rhizogenes 毛状根形質転換法

          マイクロタイタープレートのtips

          tipsというほどではないですが、参考までに… マイクロタイタープレートは、PCRやシーケンスなどの分子生物学実験や薬理学実験など、さまざまな実験で頻繁に使用されます。 サンプルが少ない場合には、通常のチューブや8連チューブでも問題ありませんが、多数のサンプルを取り扱う場合には複数の96穴や384穴プレートが必要になることがあります。このような場合、試薬の入れ方を間違えたり、隣のサンプルとのコンタミネーションが起こることがよくあります。 このようなトラブルを最小限に抑え

          マイクロタイタープレートのtips

          植物科学でできること、できていないこと~ゲノム編集・遺伝子組換え

           ゲノム情報の比較解析によって、植物種間の違いを明らかにすることができます。また、遺伝子発現パターンの違いを調べることで、植物の成長や環境応答に関わる遺伝子を見出すことができます。そして、その遺伝子の機能を確認するには、遺伝子を破壊した変異体や、逆に遺伝子を過剰発現誘導した変異体の表現型を調べることが有効です。また、植物バイオテクノロジーの分野では、遺伝子組換え技術を用いて、植物の品種改良を行うことが可能です。遺伝子組換え技術を活用した品種改良によって、収量や耐病性、栄養価の

          植物科学でできること、できていないこと~ゲノム編集・遺伝子組換え

          植物科学でできること、できていないこと~ゲノム情報と遺伝子発現解析

          近年、有機農業や無農薬が流行りである。地元の小学校も「オーガニック給食」と称して、化学肥料不使用、無農薬の給食を提供しているらしい。 大量の化石燃料を必要とする化学肥料や農薬を減らしていく試みは世界の流れで間違いではないが、一方で、世の中すべて自然農法や無農薬で回ると思われては困る。有機農業も自然信仰も個人の範囲でやる分には構わないが、現状、世界の食糧を支えているのは化学肥料や農薬なので、それらを一方的に否定する主張が初等教育の現場に入り込んでいるのはいかがなものでしょうか

          植物科学でできること、できていないこと~ゲノム情報と遺伝子発現解析

          植物を育てる

          植物科学の基本は「植物を育てる」ことです。 「植物を育てる」と聞けば、「土に種子を撒き水をやれば植物は育つ」と簡単に考えるかもしれません。 あながち間違いでもないですが、現実にはそんなに単純ではありません。 現在、私たちはモデル実験植物であるシロイヌナズナ、イネ、ミヤコグサ、ゼニゴケなどをはじめ、栽培作物を含めて、ありとあらゆる数多くの植物を栽培することができます。 イチゴや樹木など、ランナーや挿し木等の株分けで栽培できる植物種も多くあります。 イモは受粉して種子を得るこ

          世界人口の推移と穀物生産

          近年、急激な人口の増加とそれに伴う温室効果ガスの排出増は、食糧・エネルギーの供給と気候変動および地球環境に大きな影響を及ぼし、さまざまな問題を引き起こしています。それら問題を解決し持続可能な循環型社会を実現するためには、バイオテクノロジー、特に植物科学の力を欠くことはできません。 <これまでの植物科学の貢献> 産業革命以降、世界人口は増え続けてきました。第二次世界大戦以降、1950年には25億人だった世界人口は、1970年には37億人、2000年には60億人、そして、202

          世界人口の推移と穀物生産

          SDGsについて日頃感じていること

          ここ1-2年、「SDGs」という単語を耳にする機会が増えてきました。 実際、「2021年新語・流行語大賞」にもノミネートされていました。 SDGsは大事。 環境問題、社会のあり方に、人々が注目するのはいいことです。 SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年9月の国連サミットで定められた2030年までの15年間で達成すべき、17の目標、169のターゲット、232の指標のことを指します。 「SDG

          SDGsについて日頃感じていること

          RDP classifierで微生物叢の解析を行う

          2017年から2018年にかけて、メタバーコーディングによる土壌微生物叢の解析を行なっていたときに使っていたRDP classifierの使い方についてのメモ。 RDP classifierは、ある微生物叢の階層を視覚的に表現するのには向いているが、複数の微生物叢の構成を比較したい場合にはQiimeの方が向いているので、大量のサンプルを解析するようになってからは使わなくなった。 また、COPEreadはMac OS上では動かないので、PC上にインストールしたCentOSやス

          RDP classifierで微生物叢の解析を行う

          Rで正葉曲線を描く

          植物の葉の絵をRの正葉曲線を使って描いてみる。 正葉曲線は、 x = a cos(θ) y = a sin(θ) で表せる。 例えば、Rで9枚の葉を描く場合、Rのコンソールに以下の行を順番に入力する。 > t<-c(1:3600)> u<-2*pi*t/3600> x<-sin(u*9)> y<-x*(cos(u))> z<-x*(sin(u))> plot(y, z, col = "darkgreen") せっかくなのでScriptを書いてみる。 これをテキストフ

          Rで正葉曲線を描く

          N. benthamianaの葉を用いた外来遺伝子の一過的発現法

          タンパク質の植物細胞内局在を早く解析したい、あるタンパク質Aと別のタンパク質Bの植物細胞内での結合、複合体の形成および局在を解析したい場合、N. benthamianaの葉を用いたAgrobacterium infiltration法が便利です(オリジナルの方法;Voinnet et al., 2003, 例:Hanano and Goto., 2011)。 ここでは、その方法について紹介します。 <試薬> Infiltration medium:  10 mM MES  

          N. benthamianaの葉を用いた外来遺伝子の一過的発現法

          ClearSeeを使ったシロイヌナズナ植物の透明化

          植物体や植物細胞は葉緑体の自家蛍光が強く、そのままでは蛍光顕微鏡観察が困難なことがあります。 GUS染色の場合には、エタノールや抱水クロラールを用いて透明化を行うことができますが(https://note.mu/shigeruhanano/n/n1a25755d2899)、蛍光タンパク質を用いた染色では色素が抜けてしまうため、それらの代わりにClearSee (Wako Code No. 031-25151) を用いて透明化を行います。 <固定液の作製(ドラフト内作業)>

          ClearSeeを使ったシロイヌナズナ植物の透明化

          [翻訳] Plant science leads the way in understanding biological timekeeping

          以前、Gatsby The Plant Science TREEのサイトにあるOPEN LECTURESのAndrew Millar教授のセミナーのJapanese Translationを依頼されたのですが、数年たっても一向公開される気配がないので、ここで公開しておきます。 http://www.gatsbyplants.leeds.ac.uk/index.php ーー Prof Andrew Millar, University of Edinburgh Plant

          [翻訳] Plant science leads the way in understanding biological timekeeping