見出し画像

#19 ベルンシュタインから考える13『練習と運動スキル』その2

前回は、「背景レベルに委託する段階」までの話でした。今回はさらに掘り下げていきたいと思います!

動作の自動化

ベルンシュタインは、「自動化は、背景で働く自動性を新たに精緻化し、動作の調整をひとつずつ低次のレベルに切り替えていくことであり、止むことのないプロセスである」としています。


これは適切な背景レベルでの調整が強化され、その後に背景レベルが先導レベルから独り立ちし、新たな自動性を引き受けるようになることを意味しています。こうして、自動化が完成するのです。



この自動化には、いくつかの特徴があります。

①突然生じる
これは前回も話したように、今まで出来なかった動作が歯車がカチッとはまり可能となる感じですね。

②質的に異なる調整へ移す
動作調整を支える感覚器の構成が変われば、調整は根本から変化することになります。例えば、草刈りをする時には、目から筋−関節感覚器へ移行します。これにより、動作の劇的な向上とともに動作の質的な変化につながってゆくのです。

③視覚制御の停止
自動化の際には、筋−関節リンクのレベルBへ調整が譲り渡されることがあります。このレベルは視覚を用いないので、視覚制御の停止という現象を伴います。例としては、靴ひもを結ぶ、ネクタイを結ぶ、歩く、など。これらの動作は、目で手や足を見ずに実施できますよね。



背景調整の段階

次なる段階の話へ進めて行きたいと思います!


第5段階:背景調整どうしの調和を作る段階
この段階は、いわゆるリハーサルの段階になります。まず、獲得していた古い自動性と新たに練習した動作に対する要求とが一致しないために干渉が起こります。

しかし、そのあと相互調節を経てお互いに協力し始めるようになります。この現象は「創造的休止」とも呼ばれます。スキル学習の遅れや停滞の先には、いつも自動化の飛躍が控えているのです。

ですので、練習で上手くいかなかったり、出来ていた事が出来なかったりしても、長い目で見る必要があります。きっと本人ももがいているので、それを見守り、時に適切なアドバイスを与えるのが良いのではないでしょうか。


標準化と安定化の段階

第6段階:運動スキルが標準化される段階
難しい仕事をする時には、感覚調節をしっかりと噛み締めながら実施するようなことはありません。神経系に負荷をかけ、新たなスキルをトレーニングすることにより、動作が標準化されてゆきます。このため、動作が標準化されているかは、スキル発達の程度を知るための指標にもなるのです。

練習する動作はどんな動作でも、単独で起こるわけではありません。パターンを安定して行えるように多大な努力が必要となります。

このように、動作を繰り返した後に力学的に安定した動作パターンが発達するのです。つまり、運動問題の解決に成功した方法はしっかりと記憶されていくのです。



第7段階:安定化の段階
この段階では、これまでの段階で獲得したスキルは定着させていく段階です。

そして、それと同時に、スキル確立のために、高い切り換え可能性が必要となります。特に、練習段階では目的を自覚し、その目的に直面することが非常に重要です。


豊富な経験を積んでいれば、ビックリしたり、準備していなかったりした時でも、慌てず変更や複雑化に対処することができます。

これは、動作が安定して行えない初心者では、対応が難しいのは理解出来ますね!


この段階での主要な目的は、出来るだけ多くの変更を学習させることではありません。豊かな資源の利用性、つまり予期せぬ状況に直面しても混乱せずにすぐさま解決を見出す能力を発達させることなのです。資源を利用する能力は、『巧みさ』にとって必要不可欠なものです。




では、何に注意を絞ればよいのでしょうか。

それは、自覚できるレベルに注意を向けるべきです!

つまり、運動課題を出来る限り、正確かつその場に応じた解決法を導くことに集中すべきです。問題に対して集中することにより、先導レベルの能力は最大限に発揮されるのです。

練習の本質と目的は、動作を向上させること、すなわち動作を変化させることにあります。

このために行われる正しい練習とは、反復なき反復となります。解決する一つの方法を何度も繰り返すのではなく、解決のプロセスを繰り返すことにより、解決法を変化させ、改善させていくことが大切なのです。



一一一一一
今回は難しい内容も含まれましたが、巧みさの獲得のためには目的を明確にし、自覚できるレベルに注意を向ける必要があると言えます。

どうしても、子どもには技術を教えがちになったり、こちらが良いと思う動作を押し付けがちになったりしてしまいます。しかし、その技術や動作が大切なわけではなく、目的地まで早く行くためであったり、相手のタイミングをはずしたり、といった目的を明示してあげることの方が大切なのではないでしょうか。

そして、そのために適宜、腰を捻ってみたらどうかな、足の前の方で地面を蹴ったらどうかな、といったような声かけや誘導により、解決プロセスを学んでいくと考えられます。


このような視点で、子どもたちを見るとまた違った指導方法になるのではないでしょうか。

子どもたちが、どの様な変化を感じながら運動しているかを想像してみてください!不思議とワクワクした気持ちになりますね!笑

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?