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敬体に常体を飛び込ませると、気持ちが伝わりやすいことがあるんです

今更ではありますが、文章における「敬体」とは所謂「です・ます」調の文体です。一方の「常体」とは、「だ・である」調ですね。

通常は、敬体と常体は混ぜないようにします。長文になると、最初は敬体で書き始めたのに、後半が常体になっていた、ということもあるので注意が必要です。

ところが、この敬体の中に、ポーンと敢えて常体を放り込むことで気持ちが伝わりやすくなることがあります。

たとえばこんな感じです。

――
会社員時代、私はお昼休みになると必ず通っているカフェがありました。
お昼休みは毎日、そのカフェに行き、ドーナッツとホットコーヒーを注文していました。
それが、私の昼食です。
そして、必ず読書をしていました。
このカフェに通っていた一番の理由は、お昼休みくらい職場から離れて一人で読書をして過ごしたいと思っていたためです。
そしてもう一つの理由は、美しい女性の店員さんに会うためでした。
会う、といっても、それは私の一方的な行為であって、彼女にとっては大勢のお客のなかの一人に過ぎません。
ところがある日、仕事中に必要な文具を買うためにオフィスを出て近所の商店街に向かって歩いていると、向こうから見覚えのある女性が歩いてきました。
カフェの美しい店員さんです。休憩時間だったのでしょうか。
私大勢の客の一人に過ぎませんから、そのまま素知らぬ顔ですれ違おうとしたそのとき、彼女は私に笑顔で会釈しながら、「こんにちは」と声を掛けてくれたのです。
嬉しかった。
「こんにちは」と平静を装って応えましたが、心は小躍りしていました。
――

ありゃりゃ。長くなってしまいました。

気付いていただけましたでしょうか。

そうです、最後から2行目の「嬉しかった」ですね。ここだけ突然常体が紛れ込んでいます。

このように、本来は異質な文末を飛び込ませることで、気持ちを強調することができます。

まぁ、あまり使うことはない技法ですが……。

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