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『情動』について

隔週更新のんびりペースではありますが

noteを始めてから
はや半年が経ちました。


作業療法士として働くなかで予防医学の大切さを実感し
自律神経リハビリテーションについて学ぶとともに
それまで気まぐれにしたりしなかったりだったヨガに取り組み深めるうちに
呼吸法やヨガ哲学に興味が湧き

では、それらはどのようなメカニズムで繋がりあっているんだろう。

と、純粋に探究心がムクムクと湧き上がってきました。




というわけで。

今回は生理学的観点から『情動』についてまとめてみたいと思います。




はじめに生理学においての言葉の整理から。

感情:『情動』として生理的反応が伴う前の快・不快や喜び・悲しみ、怒り、恐れ、驚きといったもの。

情動:『感情』に伴い、身体の生理的反応あるいは行動を生じさせるもの。

ちなみに『感情』は、末梢の感覚が脳に伝えられた結果に生じる二次的なものともいわれ(James,米,1884 Lange,デンマーク,1885)「人は悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しい」という言葉も残されています。

やさしい自律神経生理学 より


自律神経を呼吸により調整可能であることと同様に、感情もトップダウン・ボトムアップと両方の機序があるということで・・・

深呼吸をして肩の力を抜くことで焦る感情を静める事ができることや、辛いことがあっても努めて笑顔でいることで感情も優しく変化することも、その表れのようですね。

ヨガでは、「優しい微笑みを浮かべながら」と誘導されることがありますが、これも末梢感覚から『感情』を誘導するボトムアップ的な試みかと思われます。


次に・・・


情動の起こる脳の局在について触れる前に
脳の仕組みをざっくり見直してみます。


私は自律神経的なことと併せて認知・意識・瞑想・ヨガ・呼吸といったことを考える際、進化について理解すると腑に落ちやすいように思うのです。
なぜかというと、自律神経は生命の恒常性を維持するための機構として備わっているものなので、それを取り巻く働きは進化のうえでより良く変化しているに違いないからです。


系統発生学的に脳は『古い脳』と『新しい脳』と分けられます。

古い脳:脳幹と間脳と大脳辺縁系のこと。爬虫類から哺乳類まで共通してある。
新しい脳:大脳皮質と小脳のこと。

古来、脳は『古い脳(芯の部分)』から順番に外側に向かって進化したと考えられています。
なので、古い脳は爬虫類から哺乳類まで持っていますが、『新しい脳』は系統学的に歴史の浅い生物ほど発達しており、ヒトでは脳の半分以上が『新しい脳(大脳皮質)』です。

1.2.は古い脳 3.は新しい脳

『古い脳』は、生きていくうえで最低限必要な機能(姿勢の制御・睡眠・食欲・呼吸・性欲・自律神経の働きなど)を担っています。

『情動』も、ここ『古い脳』で生まれます。



ようやくですが・・・

『情動』が生じる流れについて考えてみようと思います。



身体のあらゆる感覚器官で得られた情報は大脳皮質の感覚野に伝えられますが、同時に大脳辺縁系に属する扁桃体にも入力されます。

大脳辺縁系にある神経回路(Papezの情動回路)では、それまでの経験により得られた記憶が保存されています。
それらの記憶と照合・意味づけしながら扁桃体で統合された情報は視床下部や脳幹に出力され、自律神経系・内分泌系・運動系などの情動反応を引き起こします。

Papezの情動回路



ただ、何せここは『古い脳』です。生きていくうえで最低限の働きに重きを置いていますから、扁桃体は生命を守るために最も大切な『恐れ』『不安』に敏感に反応する特性があります。

ex. 昔、蛇に卵を食べられた鶏のお母さんが「シュー」という音を聞いて警戒の鳴き声をあげる。

「卵を守らなきゃ!!」

ですので、ストレス社会では扁桃体を野放しにしていると自律神経反応が過剰になってしまうことは安易に推測できるかと思います。



ここで
『新しい脳』と『古い脳』の話に戻りますが・・・


『新しい脳』は、『古い脳』と連携しながら『情動』を調整し、論理的思考を行ったり、言動を選択・計画・遂行します。
また相手を思いやったり、不安を安心に変えたり、不快な感情を我慢したり、さらには他の人を愛したりといった心の働きも行います。


マインドフルネスといった認知療法は、扁桃体そのものの働きを抑制し、扁桃体と連携し思考や行動を調整する働きの前頭前野を活性化することで自律神経反応を穏やかにしてくれる働きがあるものです。

そして、ヨガのアーサナや呼吸法・瞑想は『今・ここに集中』することがとても大切であり、マインドフルネス的効果が得られる活動です。


まとめ:
先輩生物が得意な『情動』は、系統発生学的に古い大脳辺縁系で作られる原始的な反応です。
後輩生物は『古い脳』と『新しい脳』とで連携しながら、自分も周りも大切にできる反応を選択できるように進化し続けているようです。


最後まで読んでいただき有難うございます。

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