即興文a

くぁ~

兄がくれたペンダントを開くといつも鳴る音。
たちまち腐ったアボカドの匂いが充満する。
僕はふと思う。このペンダントを金閣寺のてっぺんにかけといて、夜中、猿とかの野性動物が開いてくれたら、朝が騒がしくなるな、と。

と同時に、肌がピイリピイリしだす。匂いで肌がピーリングされた。古い皮膚は剥がれ落ち、出てきたのはでこぼこの肌。色は、悪そうな緑。

ああ、僕もアボカドになってしまうのかなあ。アボカドになる人生だったら、昨日、ジェットコースターのっときゃよかった。株価変動と上昇下降がリンクしてるあの、ジェットコースター。半沢直樹のスパイラルの株価にリンクしたジェットコースターだったら、さぞ楽しかったはず。

右腕が少しずつしぼんでいく。右足も少しずつしぼんでいく。頭も同じくしぼんでく。左腕は少しずつ伸びていく。あれ?おかしいな、アボカドになるんじゃなかったのか?左足を見る。見た瞬間に、ワープしてどこかに消えた。切断面もしっかりかっちこち。

どんどん左腕が伸びていく。自分の意識が左腕の背後霊となってとりついてる状況。胴体を遠くから見ると、もう、既に丸い緑。

どんどん左腕が伸びていく。このまま伸びれば、アホなアニメーションの、ピストルから撃たれた弾丸みたいに世界一周して自分にぶつかる。

あれ?僕は生き物?それとも、もう生き物じゃない?もし、生き物だとすれば、心臓はどこにある?「今野、そこに心臓はあるんか?」今野に聞いてもわからない。もし、このまま腕が伸び続けて一周したら、僕の左腕が心臓を貫いてしまうのでは?さあ、どうなるんでしょうか。「わかりません!!!」

いよいよ、一周間近。ああ、僕の左腕が僕を貫く。僕が生き物だったら、僕は心臓を貫かれて死ぬ。ああ、当たる、当たる、当たる!!

ピタッ。止まった…?いや遠くで止めているやつがいる…!

「俺の腕だ!!返せ!」

ピッコロだ!あの、ピッコロだ!だとすると、そうか、俺はピッコロの腕を無意識的に盗んで、自分に埋め込んだんだ。右足と右腕がしぼんでいるときに、左腕が伸びていたから、あたかも、片側がしぼんだ分、左腕が伸びていたように見えていたけど、実際は、アボカドになり始める直前かそのあとかはわからないけど、とにかく自分でも気づかない内にピッコロの腕を盗んでた…!そしてその腕が伸び続けていたんだ!!

同時に2つのことが起きると複雑になる。現象あるあるだ…!!ということは、僕はもうアボカドで、僕は無生物だ…!

そうこう考えてる内に、盗んだピッコロの腕が伸びる。伸びている方向に、少しだけ力を加えて離す。すると、掃除機のコンセントの要領で、腕はみるみるうちに縮んでいく。左腕の背後霊となっていた僕は振り下ろされてしまったので、僕の本体であるアボガドに憑くことにした。するとすぐに、左側からとんでもない勢いで僕の盗んだピッコロの腕が向かってきた。

パァン!!腕がアボガドの僕に当たって弾け飛ぶ。空中に弾けとんだ僕の破片をピッコロが素早く口にくわえる。まるで、敵チームのものまで高速移動で先回りして食べるやつのパン食い競争みたいに。

ピッコロの肛門からうにゅっと僕の左足。そうか、左足はピッコロの中にワープしてたのか、と雑な伏線回収。それをピッコロが引っ張ると、出てきたのは、ピッコロの左腕。僕の左足とピッコロの左腕が繋がっている、奇妙な棒が1本生まれて、ピッコロは大きく深呼吸して「おおきにー!!」と叫んだ。

小さい頃からお金をもらうことが好きでした