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Netflix「マエストロ: その音楽と愛と」

 アカデミー賞まであと1か月! ということで、配信で見られるノミネート作品をちょこちょこ見始めました。

 「マエストロ」は、音楽家 レナード・バーンスタインの半生を描いた映画。バーンスタイン演じるブラッドリー・クーパーが、監督も共同脚本もプロデューサーも務めています。「アリー/スター誕生」以来、2作目となる監督作。

 まず、ブラッドリー・クーパーのバーンスタインへの変身ぶりがすごい。ヘアメイクのカズ・ヒロの手腕により、20代から70代までのバーンスタインを、本人そっくり(ホントにビックリするほど似てる!)に演じています。見た目もさることながら、鼻にかかったしゃべり方や姿勢、歩き方まで、ブラッドリー・クーパーとは気づかないほど。

 バーンスタインは、20代で急遽代役としてニューヨーク・フィルを指揮したことがきっかけで一躍有名になり、そこから指揮だけでなく、作曲家、演奏家として第一線で活躍し続けます。私生活では、女優でピアニストのフェリシアと結婚。3人の子供をもうけますが、妻と子供たちを愛しながらも、常に若い男の恋人がいました。妻は、バーンスタインの才能をまるごと愛するあまり、夫の奔放さを黙認しつづけます。でも、徐々に自分の本当の気持ちを無視していたことに気付き、夫婦の関係に亀裂が生じます。

 希望にあふれた恋する少女から、悩める妻、そして癌でやせ細る闘病中の姿までを演じ分けた妻役のキャリー・マリガンがとてもよかったです。この記事のトップ画の、哀愁漂うキャリー・マリガンの背中を採用したポスターもよい。

 若い男の恋人と目の前で堂々といちゃつかれる妻(きっと子育ても一人でしてたんだよ…)のリアルな表情は見ていてつらかったけど、それでも夫の元に戻るのが、なんで!?じゃなくて、そうだよな、分かる…と思わせる演技力よ。

 私は父を癌で亡くして以来、映画でも本でも、家族の闘病シーンというものにめっきり弱くなってしまいました。今回の映画でも、妻が癌と診断されてからの描写は泣きっぱなしでした。この涙もろさはもう一生変わらないんだろうか。

 音楽が好きだった父にバーンスタインのこといろいろ教えてもらいたかったなーなんて思いました。

 白黒とカラーの入り混じった映像と、舞台転換のようなカット替わりも、わざとらしすぎず、そのバランスが絶妙でした。

 アカデミー作品賞は日本では未公開の「オッペンハイマー」が有力みたいだし、主演男優賞も「オッペンハイマー」のキリアン・マーフィーが本命っぽいけど、カズ・ヒロは本作で3度目となるアカデミー賞を取るんじゃないだろうか。

 ブラッドリー・クーパーの大物化が止まらない。もうただのハングオーバー俳優じゃないな…。


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