深海の話

明るい街に慣れすぎて、
人間達は少しの明かりだけでも充分生きられる事を忘れてしまった。
わたしのからだ。海の底で、自由も束縛もない、
天井も壁も無い、暗闇の箱に仕舞われている。
1つだけ持ってきた月の子供がぼんやり照らすソファの上で、
海藻から時々立ち登る気泡のモビールにあやされている。
どんどん溶けていく。
地面より深くいるせいで天国への階段が長くなって、
神様の顔も水面の反射のせいで歪んでいる。
将来地獄行きなのかもしれないなんて、
思ってしまった。

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