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D2C×食品起業した食シロウトの自分がはまったハマりどころ

ぼくは株式会社椎茸祭という椎茸出汁の会社を経営してます。
実家がもともと椎茸屋をしていたわけでなく、前職はチームラボという会社でアートやシステム開発をしていた、いわゆる食の素人の立場から起業をしました。2017年11月に起業して現在3期目です。
(詳しくは 「椎茸祭のつくりかた」を読んで頂けたらと思います)

僕自身もまだまだヒヨッコではあるのですが、WEBやIT・他分野の友人たちがD2C×食品で起業したりすることが増えてきたため、自分がいままでに感じた、D2C×食品ビジネスのはまりどころをまとめてお伝えできればと思います。

①「世の中の求めるもの」と「自分が好きなもの」をテーマにしよう、という罠

①世間に求められているもの
②自分が好きな食べもの
の両方を満たすことをテーマに決めて起業しましょう!

みたいなことをよく聞くじゃないですか。
僕も実際にそう信じて、世間で売れている出汁⇔自分が好きな椎茸をリンクさせて起業をしたのですが、実はこれだけでは足りませんでした。

食品ならではの観点なのですが
「売り方」と「賞味期限」を考慮して、テーマとなる食材のあり方をチューニングする必要があります。

例えば、ぼくの場合、椎茸が売れそう&椎茸が好きだからという理由で、生椎茸を取り扱う想定をしていました。しかし「売り方」をEC販売だとした場合は、実際、下記のフローで注文が来てお客さんに発送されます。

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木曜日にECサイトなどに発注が入って、翌日に配送依頼をし、週明けの月曜日に配送したとしてもお客さんに届くのは翌週の水曜日です。

・・・ぶっちゃけ、遅くないですか?

アマゾンで買い物慣れしてる人からすると、木曜日に注文したら週末間に合うようなイメージでいることが多いと思います。


しかも生鮮を扱う場合、発注から到着まで6日間かかってしまったら鮮度も落ちてしまいます。しかも発送先が遠方であれば日数は更にかかりますし、状況によって配送遅れが起きることもあります。また社会問題になっていますが、結構な確率で再配達は発生します。ひどいときは2週間も再配達状態になり、郵便局などで保管となると、商品価値はゼロになります。

いかにして賞味期限と戦うか

上記を踏まえるとEC販売の場合には10日以上保存できるようにしておくことは必須だと思います。賞味期限で考えるなら14日以上は欲しいです。

具体的には、乾燥・冷凍・フリーズドライ・発酵・レトルトなどの加工を施すことで賞味期限のコントロールが可能になります。ただこれは商品全体を加工品にするという意味だけではありません。

例えば、カップ麺は賞味期限が長いですよね。
それはカップ麺から「お湯」を取り除いているからです。もしもカップ麺にスープが混ざった状態であれば、賞味期限はずっと短くなるはずです。だから「お湯」を外部化して、お客さん側でよしなにやってもらう前提にしているからこそ、残りの部分は乾燥物だけになり、賞味期限を長く保つことができています。

リードタイムを最大限に改善する方法=フルフィルメント

今度は配送までの時間をいかにして短くするか。考えられる方法は2つ。
①土日配送対応可能などができる配送会社さんに依頼
②発注→商品発送までを配送会社が自動で行えるフルフィルメントを採用

①は単純に配送会社によって土日の集荷などが可能になる場合があります。もしも倉庫&配送を委託している場合であれば、会社によっての対応可否があるので、この点を留意します。

②のフルフィルメントとはなにかというと、倉庫会社が勝手にECサイトの発送情報を見てよしなに発送してくれる方法です。一番有名なものだとAmazon FBAなどがその一例で、"AmazonPrimeなど当日の14:00までの注文
は当日中発送"などの厳しい条件もフルフィルメントを活用すれば怖くありません。そしてなによりスピードが上がることでキャンセル率も下がります。

欠点としては勝手に発送してもらえる代わりに
・個人情報管理の問題
・発送にかかる手数料
について考える必要があります。が、個人的には自動発送のメリットが大きいので、特に自前で倉庫などを持ちたくない/持てない人には向いていると思います。

なお、Amazonのようなモール型でなくても、自社ECサイトに連動させたフルフィルメントを実現できます。shopify(EC側)とオープンロジ(倉庫会社)の連携など、データ共有ができる会社であれば実現できることがあるので、相談してみることをオススメいたします。

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②送料は原価より高い・・・・!

ぼくたちは1000円~1500円ほどの商品単価で考えていましたが、5000円以上の商品などでない限り、送料は原価以上に高くなります

実際に落とし穴にハマった生々しい事例をご紹介します。
まず、取扱商品を日持ちする干し椎茸に。原価率は35%ほどで、可能であれば1000円を切った価格で販売したいと思いました。梱包作業の外注費を含めてもいけるかもしれない。そう思って送料をカウントしてみたところ、、

送料計算の結果↓

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元々は粗利で425円(42.9%)だったのに、送料等を考慮した途端に粗利はマイナス▲556円(-56.1%)になってしまいました。結構抜けがちなのですが、配送を委託する場合は配送作業費や、配送に使う包材、倉庫の管理費も追加でかかります。また上の送料は最小60サイズ(3辺合計のサイズが60cmという意味)の通常便、東京〜千葉で想定していてこの金額です。また、現段階で実績がないため価格交渉も難しい状況でした。

安い送料から必要な条件を考える

では送料を落とすためにどうしたらいいか。サイズや重量制限のある配送方法を選択することが重要です。

先ほどの60サイズでは825円の送料でしたが
① 日本郵便 クリックポスト 198円(税込)
② ヤマト運輸 ネコポス 385円(税込) 

先程の60サイズと比べて1個あたり400~600円価格を落とすことができます。(価格は2020/4/22現在)

制限はなにかというと、サイズや重量制限のことです。
①は 長辺34cm / 短辺25cm / 厚み3cm
②は 31.2cm×22.8cm以内 / 厚さ2.5cm以内 / 重さ1kg以内
を満たす必要があります。

しかし逆に言えば、条件を満たせるパッケージを作ることさえできれば、送料を劇的に下げることができます。なので始めから厚み3cm以下など、指定サイズのパッケージに商品が入るように設計をしておくことで利益計算もしやすくなります。

ぼくたちは最後のA4で3cm&1kg以下に焦点を当てたうえで、パッケージを考えることによって、1296円(税込)+送料200円=1496円(税・送料込み)へターゲットし直しました。

いきなり商品をデザインをせず、まずは送料からサイズ制限を調べる。次に配送方法を意識してパッケージデザインをする。そしてパッケージデザインが途中の段階でフルフィルメントを行う倉庫会社を見つけておいて事前に相談する。といった流れがオススメです。

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③商品原価に大きな差はなくLOTこそ鍵

「迷惑をかけないほうがいい」的な教育を小さい頃にされている人は少なくないと思うのですが、商売において自前のお金でドカンと商品開発していくのは余裕がない限りはやめたほうがいいと思います。

可能な限りクラウドファウンディングなどでテスト販売を行うなどしながら少しずつ数量を増やすという考え方でないと需要のない製品を大量に作ってしまいがちです(しかも賞味期限のあるものだとその後賞味期限に追われます。体験談はまたいずれ。)

特に重要なのは商品の原価ではなくLOTです。
正直、OEMで加工品を作るにしても商品を仕入れるにしてもそこまで大きな値段の差はないように思います(こと椎茸においては)
そうなると、LOT=生産量/回が重要になってきます。特に加工品のLOTの差は会社によって10倍〜100倍以上になることが当然のように起きます。

なぜなら、加工技術や加工方法によって導入設備が異なり、鍋や釜のサイズ差がとんでもなくあるため、複数社にお声がけする場合は加工方法ごとにLOTを重視するといいと思います。

椎茸祭の初期生産はどうだったか

ようやく商品のイメージができて、販売価格も決まってきました。
そこで、初期生産ロットにかかる費用を積み上げで計算してみました。

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ざっくり計算しても280万円ほどかかることがわかりました。
しかしそれでもコストが高すぎる。少しでも節約するべく、金額の高い初期生産費用、ECサイト構築費の削減を進めました。

ここで大事なことは、まずコストを具体的に積み上げてから削減するという順序です。積み上げ途中で値下げに挑んだりするとロクなことになりませんので、まずは大まかに予算を決めながら先方と話を進めることが大事です。(何よりもちゃんとした礼節は大切です、言うまでもないですが、、)

●初期生産費用そのものを下げられるか
初期生産費用 = (LOT) × (単価) です。
前述の通り、LOT数量をなるべく抑えることで初期生産費用を下げます。

●ECサイト構築は自分でやれるならやる
ECサイト構築費は、かなり簡単になってきているので、節約も兼ねて自前でやってみるのもありかもしれません。ざっくりと紹介いたします。

①作りやすくて編集しやすい簡易サイトなら strikingly (16 USD/月)
②さくっと作るなら BASE (0円/月)
③少しコツがいるけれどビジュアルがかなりよくできるWix (900円/月)
④代引き配送できる stores (1,980円/月)
⑤分析ツールが多くて少し高い。shopify (29 USD/月)
⑥自前でガリガリコードを書くならWordpress

最後の⑥はハードルが高いので、①~⑤のうちどれかが良いです。
個人的な判断基準ですが
さくっと+英語表記メインなら①
さくっと+日本語メインなら②(でも手数料は高い)
しっかり+デザイン重視なら③
しっかり+日本メインなら④
しっかり+グローバル or 分析色々やるなら⑤(椎茸祭はこれ)
という感じかなと。ちなみに③+④でいいトコ取りみたいなこともちょっと頑張ればできます。

ただなにせECサイト自体を作れたとしても文章や画像、分析ツールなど、機能はあるけど使いこなせない&うまくいかない・・・なんてことは日常茶飯事(だから世の中にたくさんシステム屋がいるわけですし)
苦手なことに時間を使うくらいならさっさと委託してしまうのもアリだと思います。

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③試験販売とヒアリングを徹底。
製造量を増やすのは限りなく慎重に。


僕の場合は(自前の貯金+融資)で初回生産をし、ある程度売れると判断してからは大量生産に移行してしまいました。けれど、まずはクラウドファウンディングで試験販売を行い、ヒアリングを充分に行ってから製造量を増やすべきだったと思っています。

仮説検証のためのクラウドファウンディング

クラウドファウンディングは要するに、前売り販売なので、別に怖がる必要なくどんどんやっていいと思っています。特に初期生産段階においては、試験販売が目的だと思いますので、クラウドファウンディングを活用して購入してもらい、実際の使用感・価格感などをヒアリングすることを目的にするのがいいと思います。また試験販売であれば、初期生産後に利益をあまり追う必要はなく、赤字にならないように仮説検証できればいいです。

ぼくらのクラウドファンディングに関しては、創業から3年目の2020年に実施しました。ただ、クラウドファンディングに必要な準備は、D2Cにおいても同じ情報が必要であるケースが多いので、創業初期にやればよかったなと思っています。

例えば、クラウドファンディングで下記のような準備をします。
・商品の文章(ストーリーや意義、商品説明など)
・商品のリターン(=商品セット)
・商品の写真
・商品PR動画
・商品の応援メッセージ(あれば)

上に書いてあるものは、自社のECサイトに流用できるものが多いです。しかも今後勢いをつけて商品を販売していく取っ掛かりにもなると考えると全然ありだと思います。特にECサイトオープン後に「新規顧客獲得」が何よりも大切になってきますので、そういった意味合いでも波及効果を臨む上ではクラウドファンディングはありかと思います。

助成金を活用して出費を小さくする

助成金については地域によってかなり差がありますが、だいたいどこの自治体にもあって、50万円〜とかのものだと書類も少なく採択数も多かったりするのでオススメです。ちなみに先程のECサイトの委託なんかも補助金はたくさんありますので、活用できそうなものを探しながら進めてみてください。

ぼくは「助成金に頼るなんてへなちょこだぜ!」なんて息巻いて、創業3年目を迎えたのですが、3年目にして助成金活用できるところを全力探すようになりました(カッコ悪いけど大事なんですよ)

助成金といってもかなり色んな種類のものがあるので探し方が大切です。
オススメの検索の仕方を書いてみました。上から順番に探していくイメージです。

①市区町村、自治体の創業支援の補助金
②本社所在地の都道府県の補助金
③中小企業庁の補助金
④政府の補助金(業界的に管轄がどこの省庁なのかを把握しておく)

なぜこの順番がいいかというと
競争倍率的に通りやすいものを優先していること。またなにより初めての補助金申請は、コツをつかめていないと思いますので、身近の自治体の助成金を受けつつアドバイスをもらうことで経験値を積めるからです。

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一緒にがんばりましょう〜!

過去にまんまとハマった事例をギュッと煮詰めて書いてみました。
僕たちもまだ起業してから3年。これからもたくさん罠にハマっていくかと思いますが、めげずにより良い社会にするべく頑張っていきます!一緒にがんばっていきましょう〜!

twitterもせっせとやっておりますので、フォロー大歓迎です!
これからもどうぞ宜しくお願い致します。


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