自分史的なクリッピング史料

先日は、人気漫画家とTVドラマの間でトラブルがあり、惜しくもその漫画家がこの世を去ってしまった。こうした事態は何と言えば良いのだろうか。原作者の作品がTV用にリメイクされてしまうことはしばしばある。登場人物だったり、そのキャラであったり・・・。原作に忠実にという作者の思いとエンタメを強く志向する製作者サイドとの溝はいつになっても埋まらない。

漫画は静止画的連続性でもって読者の想像を膨らませているのも確かだからそうした漫画ファンの熱気が絶えることはないだろうと思う。一方で、今の時代、録画を早送りで視聴する若い世代の方々の視聴スタイルもクローズアップされる。楽しんでいるエンタメはどのように作られその為にはどんな仕組みが適当なのだろうか? スポンサーのあり方もどうしたらその存在を記憶にとどめてもらえるのだろうか? と考えさせられることてんこ盛りだ。

2024年2月1日 日経 隠れた名作漫画 アニメ化請負人
大日本印刷、10分の作品を世界に

まずは、新しいエンタメの創造であるようだ。その名は「ライトアニメ」。2022年から配信している即席アニメだそう。動きを表現するコマ数はテレビより少なく、紙の漫画からは、セリフの吹き出しが取り除かれ、キャラクターに動きや色、音を付加するといったていのもの。1話の長さは約10分とタイパもいい。

対抗はスマホ向けの縦読み漫画。気軽さは変わらない。通勤や通学時間の隙間視聴を狙っている様子だけど、個人的にはそうまでしなくても・・・と思いつつも受容されているようだから文句を言ったところで始まらない。いずれ、大手動画配信サイトにも進出するということだから、ショート・アニメ・ムービーもどきが登場して市場に参入し嗜好をかき乱していくのかもしれない。

この危機感は2023年の紙の出版市場規模は約1兆円と、1996年ピーク時の半分まで減退してしまったところにある。大日本においてもその収益は20年で4割から3割に衰退したとの記載。それでも収益の3割もある印刷の沼から抜け切れず、いわゆる受注体質を解消できないでいたところに問題意識を向けた。

ということで、新規事業のアイデアをひねり出せと号令、その中の一つがこのライトアニメ。ただし、もっと正確に表現すれば、「日本の出版社や作家との共生関係を続けるための知的財産(IP)の変換と活用のプロ」という意義づけ。分かったような分からないような。

現代では、電子出版が牽引し、それを紙の雑誌や書籍が需要を補完するというスタイルになっていることに戦術を転換しただけということでもあるのだろうか。作家の立ち位置をしっかり守ってあげる必要もある。特に当事者たちは漫画、アニメ、映画、書籍などのループをしっかりと頭に入れておく必要がある。

世界的に日本のアニメの評価は高く、その需要は高まっているという判断。世界的な調査会社によれば、2030年の世界の漫画市場は2023年の3.1倍に。そしてアニメ市場は1.9倍になるらしい。

中小の出版社では戦術が限られてしまうところ、大日本がIPごとに最適な媒体や販路、市場への売り込みなど収益最大化装置を準備するという。勿論、制作支援、グッズ販売、イベント開催といった追加サービスまでをもカバーするということから、参画者への徹底したサービスの付与になるのは間違いなさそう。

バーチャル秋葉原なるものも用意し、英語表示も可能で、その空間内でアニメ関連の展示会を開催することもできる。個人的にはこうしたヴァーチャル空間というの今後発展可能性は高いと思うものの、まだそこにステップインするまでの興味が湧かない。更に海外向けには、ドル決済の定額制漫画アプリも手がけるとあるから、勢いよく事業展開を図るという気概は感じられる。

海外市場での大きな敵に海賊版という存在がある。洋服のブランドもそうだし、農作物の育種権なども相当侵害されていると聞くし、日本の技術でもってこうしたIPを保護する為にこうしたプラットフォームを利用するということは参加者も歓迎するはず。

更に更に、流通網の上流である作家、スタジオの支援にも乗り出すという。一旦引き取った上で、連携する制作会社や作家の仕事を確保するというもの。しかしながら、紙の出口である書店数は激減しているし、韓国発の縦読み漫画も市場に相当浸透しているなどの状況もあるし、この機能が如何なく発揮されて優位なポジションを確保できるかどうかは今後観察するしかない。

大企業にいた自分の現役時にはやたらと " 仕組み " という言葉が重宝され連呼されていたけど、確かに資本を有する企業の介入で、その仕組みが有機的に回ることも期待されるけど、クリエーティブな創造者たちの立場は対等であるという精神を忘れずにいて欲しいと思う。

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