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学校でオンライン授業が進まない4つの理由

はじめに

 第6波が来て、これまでと違い生徒たちにも感染が広まっている中、オンライン授業という選択肢が去年の流行期と異なって話題にも上がらない自治体も多いのではないでしょうか。

 今回は現場から見た、オンライン授業が進まない理由をまとめていきたいと思います。教員や教育関係の方だけでなく、保護者の方にも見ていただけると幸いです。

①学校にオンライン環境が整っていない

 信じられないかもしれませんが、学校のネット環境は劣悪です。私の勤める学校では、そもそも有線LANが教室に引かれておらず、ホテルよりも脆弱なWi-Fiがちょろっと通っているだけです。
 ネット配信には常に安定した回線が求められますが、高速Wi-Fiならまだしも、そうした配信環境がそもそも整っていないという現実があります。

 授業を実際に行うにあたっては、黒板の文字が読めるように高解像度で重たい映像を届けたり、音声が途切れないよう、細心の注意を払わねばなりませんが、公立学校にはそのような準備が出来ていません。

②生徒側に視聴用端末が普及していない

 いきなりオンライン授業を始めてくれ、と言われても、生徒が見られるものがなければ始まりません。全家庭にWi-Fiが通っているはずもないですし、スマホで見たりしようものなら通信制限にかかってしまい、とても視聴が出来る状態ではなくなってしまいます。
 かといって全家庭に端末と通信機器を配布する準備は、行政側に整っていません。

③生徒(家庭)側にオンライン授業の準備が出来ていない

 端末が配られていたとしても、あるいはスマホでの視聴を強制したとしても、配信アプリや連絡アプリの使い方を周知徹底出来ていなければ、必ず問題が生じます。これをオンライン授業として丸投げした場合、機械に明るくない生徒や家庭には混乱が起きます。

④教員側に準備が出来ていない

 残念ながら、多くの自治体では、オンライン授業に最適化した教員の指導状態を用意出来ていません。対面授業での技術は身に付いていても、画面越しに授業を展開する力は、間違いなく予備校のオンライン授業の方が上です。
 しかもこの二年間、そういった不測の事態に備えての授業実践は図られることなく、特に昨年感染が一度収まりを見せた頃には、通常の学校運営に全面的に戻すという状態を作り出したわけですから、いわば、〝防災〟を一切しないで〝もとの町作り〟を行ってしまったわけです。
 加えて第6波で増え続ける感染者の情報の整理に現場はとても準備をする余裕などありません。

もしこのままオンライン授業を断行したら……

 既に自治体からは、ガイドラインとして「オンライン授業に備えろ」という指示が下りてきているところもあるはずです。
 しかし、費用・時間を落ち着いていた直前のタイミングに何も割かなかった中、お得意の「現場の工夫」で乗り切らせようとするのはどだい無理な話です。

 もし今、無理にオンライン授業を展開した場合、質の低い映像の前に、八時間ほど拘束される苦痛が起こる上、機器の操作や不具合発生の際に、保護者についてもらう必要が出てきます。
 慣れた教員であれば別ですが、生徒との双方向の授業実践は出来ず、NHKの高校講座や、YouTubeの学習動画を見た方がよっぽど有意義な時間が過ごせます。

対面授業を続けるべき、ではない

 しかし、現に感染は広がり続け、正直、破綻を起こしつつある現場は少なくありません。コロナウイルスの取り扱いや対応の仕方は今一旦脇に置くとして、学校そのものについて、既存の運営を続けるのは、好ましくないとは思います。

 打てる手を打たない、今の教育行政のあり方も問題ですが、差し当たって動くとも思えません。

何だかんだやるしかないのでは……

 現時点で言えることは、上記四つの問題点を認めた上で、感染症対策のために、結局断行するしかない、と思うのです。不平不満が爆発してようやく、行政は重たい腰を上げざるを得なくなるはずです。
 現場、末端の人間に変えられない、結局の所「お金の問題」を、権限のある上が改善してもらえなければ、教員、保護者の双方に多大なストレスと不安の溜まる現状を、まだまだ耐えてもらわなければなりません。

 オンライン授業の質は、もう体当たりで上げていくしかないと思います。どの道GIGAスクール構想なんてものを現実のものとしたいのであれば、どこかで血反吐を吐かねばならず、それがこういった最も体裁の悪い形で行われる、ということなのかもしれないと思っています。

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