給食日記 如月

割引あり

1日
何の抵抗もなく二月。老いるとは万物を受け入れることである。

ドライカレー、油揚げのサラダ、林檎

流れゆく歳月のごと林檎剝く
カレー喰ふ頬で涙の乾きをり
おいしいと思うて無言で食べ進む顔はほのかに笑みてをるらむ

2日
節分御飯は大豆と青のりをかけた御飯。粘りがなくても大豆が御飯にまざつてゐると納豆に見える。もちろん味も納豆だ。

節分御飯、鰯の竜田揚げ、味噌汁、おひたし、みかん

福豆のまだ一桁で足りる頃
青海苔に噎せたることも咳としてインフルエンザを疑はれをり

5日
自転車の後輪の空気が抜けてゐた。ちやうど戻れないくらゐ進まないと気づけないのが憎らしい。おまけに帰りは大雪。雪の中、自転車屋に寄つて空気を入れるのがなんか恥づかしかつた。

麦御飯、ホキのハーブパン粉焼き、じやがいものそぼろ煮、もやしと小松菜のおかか和え

雪の日の部屋に充ちゆくバジルの香
じやがいもが崩れぬやうに煮込むこと無言で雪を数へたること

6日
やはり自転車はパンクしてゐるやうだ。片道だけは空気が持つ。さながら雪の特攻隊。学校の3階から見たまはりの家の屋根は雪が積もつて綺麗だつた。

麦御飯、お好み卵焼き、じやがいもの煮物、味噌汁

たつぷりとソースを塗つて深雪晴
被災地の雪の深さを憐れんでじやがいも続くことを疎みぬ

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