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夕焼けは、不条理をも包み込んだ。

1件の大事な仕事があった為片道1時間の会社にでかけた僕であったがその仕事がキャンセルとなり、ではピクミンブルームの新たなイベントが始まったので歩くかと思えば空は愚図つき、お前はないているが俺も泣きたいよと僕もなき、車に横になり、コンビニで昼食を食べ、せっかく来たので職場に少し寄って、16:00に予約していた整体に行き、そして帰ってきた僕である。思えば色々片付けられたなと振り返ってみれば全て良しである。素敵なレイニーデイは雨音が優しく鼾を包み込んだ。

鹿田です、よろしくね。

そうそう、それから序でと思いタイヤ交換も済ませた。昔は自分でやっていたのだが最近は冬の準備という思いから相当な億劫に苛まれ、ガソスタに頼んでいるのだが、1000円もせずにできるとあって、まして平日なのですぐに済ませられるだろうとタイヤを積んでエネオスに向かった。なんだかんだあってすぐにタイヤ交換をしてもらえることになり、店内で無糖の缶コーヒーを持って、本でも読むかと車内を探したが前回再読したばかりの掏摸しかなくて、それでも手持ち無沙汰なので掏摸を再再読した。

はじめ小ぶりだった雨が次第に強くなっていった。しかし雨音とは、なんでこんなに読書に集中させてくれるのだろう。夜眠る時の雨もそうだ、そっと隣で主張せずにただその存在のみを継続させ続ける。低めのカウンターに時々体を起こして見つめる窓の外の雨は時間の経過を感じさせず、ゆっくり読書に浸れることも利点だ。

そう思っていたところに先程担当してくれたスタッフさんが来て、「タイヤを見てください」という。直後をついていくと「もうどれもスリップサインが摩耗してしまっていますね、近々交換された方がいいと思います」とのこと。タイヤもすまん、といった様子でラゲッジスペースに肩身狭そうに身を寄せ合っている。

ましかし、今年の◯は侮れないと聞いていたのでらしからず腹を決め、エネオスで冬タイヤを購入し、装着してもらうことにした。そこでもう少し大丈夫かなぁなどと迷ってスリップなどを起こしては元も子もない、痛い出費ではあるがまもなく◯のボーナスもでることでしょうから、と前向きに受け止めたのである。それに◯に対抗する策ならば、鹿田はいくら出そうとも惜しくないのである。

そして数秒後には(新しいタイヤかあ)、と少しうきうきして、掏摸の続きを再び読み始めた。そして数日ぶりに起こる不条理な結末を目にして、そっと閉じて、缶コーヒーを飲みきって、カコンと、缶専用のゴミ箱に投げ捨てた。

あ、勿論浅はか代表鹿田は、「世の中って、不条理だなぁ」くらいの感想しか出ない。読んでいる間は心のなかでうにょうにょと無形のものが蠢く程度はするのだが、読み切ったならそんなもんである。因みに先日読んだ時の感想も同じである。先日も読み終わって世の中って、不条理だなぁと思ったのである。そしてなぜだかふと、山崎豊子の白い巨塔を読み返したくなった。

午後、天気予報通り半纏の綿みたいにぎっしり空に敷かれていた暗雲は次第にはけ、同時に雨も上がったが、その頃の鹿田といえば昼食の牛丼を食べ終わり、車中でしっかり午睡の最中であった。整体まであと4時間ほどあるが、歩くなどという野望はとうに雨雲とともに散り散りとなり、4時間ほど寝るか、と僕は運転席で暖房に吹かれながら眠る姿勢になっていったのである。

3時頃尿意に目覚め近くのコンビニで用を足し、その足で整体院に向かった。空はすっかり雲がはけていたがすでに西日が染み入り、僕は同調して少し切なくなった。秋なんて季節、誰が作ったのだろうとやり場のない憤りを鎮めるため仕方なしにコンビニスイーツを購入し、食べた。

そして整体では凝りに凝った肩から腰までをきれいにほぐしてもらい、本日2度目の朝かとうくらいに空に向かって思い切り背伸びをしたが、すでに空は夕焼けていたのである。秋の風物詩夕焼けであるが、雨上がりの夕焼けは僕の口をそっとつまんで、鼻で深呼吸させた。本当言うと、僕は夕焼けは好きである。夏のそれなら言うことなしだが、秋のそれも好きである。明日は晴れると教えてくれる。明日は晴れると思って眠れる。優しく消えていくグラデーションの空と、たそがれていく街並みと、鼻元を過ぎてゆく少し切ない季節の匂い。それらは、モチベーションになるのである。どんな明日がまっていようと、不思議と走り出してしまうのである。雨上がり後の、まだ居残ったアスファルトの轍にも、映って。

僕はそうして、いつものように部屋にこもり、ビールを開けては夜の中で文を描く。暗いところで世界を描き、明るいところでは世界を歩く。

いつか不条理が来ても、今は今だからかまわないのである。

洗車後、雨が降ろうとも。




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