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指揮者修業、その8

まさかのダウンバトン(指揮棒の降りおろし)でのブレスの話。

指揮を習っていて素直に驚いたことの一つに、「せ~の!」と言って指揮棒を振り上げても、その後に棒を振り下ろして打点を示すまでに時間があると
演奏は合わないという事。
大概はブレスも(息づかい)「せ~の~!」の「の~!」で息を吸っていることが多いはずです。
ところが、ゆっくりとした曲。例えば「新世界より」の二楽章(家路)では
「た~たた~」のスタートで「せ~の~!」と棒を上げてブレスをしてしまうと、一番上に到着してから振り下ろして打点までに間が出来てしまいます。これではギターカルテットなどのブレス指示を出しても合わないわけですね。
しかも、このブレスのやり方ではテンポも分からないくなるし、息使いの量が多いフルートや金管などは、これでは吹き始めの場所が正確にどこだかわからないと言うのです。
もう一度「せ~の~!」のタイミング(あまり良い例でもないですが)を確認すると「せ~!」で右手を右側に動かし始めて、一度止まり「の~!」で
ブレスと共に上げるわけですが、この方法は一度止めた棒がブレスなしでテンポの通りに上がり「の~の部分」(1拍目に向かう最後の拍の表)棒が下りてくる(1拍目に向かう最後の拍の裏)で「の~すぅ~!」ブレスを入れると次の1拍目の頭の打点まで繋がって、どこが打点か分かりやすいのです。
理屈では分かりましたが、最初はこの動作に対して体が拒否反応を示しました。息を吸う=上半身や頭を上げる(息を吸う)という固定概念からです。
そこで、棒を使わなくても頭を上げて自然に降ろしながら(放物線運動)
ブレスをする練習をしました。

指揮者が振る指揮棒の基本動作が自然の放物線運動に近いので誰でも打点が予想して分かるという理屈も初めて知りました(これが出来ないとワンちゃんもご主人様が投げたフリスビーを取れないですし、人間も野球でフライを取れなくなってしまいますよね)

その他にもブレスで驚いたことは木管や金管楽器(私も小3から1年少しトロンボーン吹いていたはずですが)のブレスと弦楽器のブレスで曲によってブレスが異なる場合があるのも初めて知りました。
息をたくさん使う楽器はぎりぎりまでブレスをせず、ヴァイオリンやギターはロングブレスの後息をのんで弾き始める週間の違いもあるのですね。

弦楽器は弓を弦に置くタイミングもあるので(ギターでは弦へのセットですね)例えばベートーベンの「運命」の冒頭の8分休符は、すぅ~(ロングブレス)ん!(打点を感じて、ギターですと指を弦に置いたりして)「たたた、たーん」ですが、管楽器には、ブレスなしで棒が上がって、す!(ショートブレス)「たたた、たーん」とやるようです。

これをあの曲を指揮している時のソロの指示をする時には無意識に吸い分けているようです。(Tutti(トゥッティ)はその時にふさわしい方でしょうが)

オケの指揮者はやはりすごいなぁ~と思ったことの一つでしたが、今思えば当たり前の事で、ギター合奏の指揮でもこの2つのブレスを音楽的にきちんと使い分けるようになりました。

と言いますのも、ギターという楽器は演奏中に好きな場所でフレーズとは無関係にブレスが出きる楽器の一つですので、せめて指揮者が音楽的に気を付けてあげないと演奏もブレスも揃わないのです(笑)




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