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ちょっと面白い楽典シリーズ、1

今回は調性と調号のお話をしたいと思います。
「ドレミファソラシド」の間隔を保って(長調の音階ですね)ド以外の他の音から始めると順番は同じでも同間隔を保つために記号が付いて来ます。
例えばレから始めたら、「レミファ#ソラシド#」となり、調号としては#が2つ付くわけです。
シャープの付く順番は
「ファ、ド、ソ、レ、ラ、ミ、シ」
フラットの付く順番は
「シ、ミ、ラ、レ、ソ、ド、ファ」
専門的な話で言うと5度圏というもので表せますので、シャープとフラットの順番が逆なのも興味深いですね。

今回のお話は、調号が例えば#が一つファ#に付いた楽譜があります。
これが何の長調の調性か?という事に関してのお話です。
正解はト長調 G majorですね。
日本ではこの長調の調性(短調もありますので)の見分け方が
シャープであれば「ファ、ド、ソ、レ、ラ、ミ、シ」の順に数が増えますので#が一つファ#に付いているのですから、それがスケールの第7音(ハ長調で言うとシ)に当たるので半音上がってソですからト長調 G majorという教え方です。
シャープが4つならば最後に付いているシャープがレ#ですから、半音上がってホ長調 E majorとなります。
フラットは少し複雑で「シ、ミ、ラ、レ、ソ、ド、ファ」の順番で最後のフラットが付いた音が第4音(ハ長調で言うとファ)となります。
例えばフラットが4つ付いた調号は最後のフラットがレですから4音下がってラ♭で、変イ長調 A♭majorになります。
この教え方に特に異論はありません。でも不完全なのです。
もし、どなたかが楽器を趣味で習っていて、調性をきちんと判断して演奏するには十分ですが、作曲を勉強しており、すべての調性を自由に操って
作曲を行いたいなら少し不向きなのです。

私がこの話に最初に興味を持ったのは、ギターを弾いているとシャープ4つとせいぜいフラット3つ程度までで練習していて、この調号判定のやり方で特に違和感はなかったのですが、編曲や作曲を本格的にやればやるほど
もっと本質的な別のやり方にはまっていきました。
それはピアノの鍵盤に当てはめるやり方なのです。

ピアノの鍵盤に調号を当てはめる図、その.1

一般的に使う調号で完成していますが完全な物ではありません。

見ての通り長調の調号を鍵盤に当てはめた図です。まず、注目して欲しいのはファ#(またはソの♭)の場所が#と♭が6個づつになっている場所です。ファ#で書く場合は嬰へ長調 F# majorでソ♭で書く場合は
変ト長調 G♭majorになる訳です。
これは理解できました。
次にド#(またはレの♭)の場所が#7と♭5で理屈も同じ
ド#で書く場合は嬰は長調 C# majorでレ♭で書く場合は
変二長調 D♭majorになる訳です。それと同じくシの所が#5で書くと
ロ長調 B major,ド♭で書くと変ハ長調 C♭majorです。
ここまで理解して、変な事に気が付きました!
あれ!ファ#とソ♭の6・6の所を真ん中に白鍵と黒鍵を平たく並べてみると
左右がシンメトリーになっている(#と♭を逆に)

0ー(#7♭5)ー#2ー♭3-#4ー♭1ー(#6♭6)ここが真ん中で
ー#1ー♭4ー#3ー♭2ー(#5♭7)ー0

そして、という事は#と♭足して全て12個になるのでは?!
と変な方向に興味がわき、以下の図に書き足して完成させました。

ピアノの鍵盤に調号を当てはめる図、その.2

一般的に使う調号だけでなく、書き表せる全ての調号を書きました。

この図を見た方は最初は「いやいや#11個ってあり得ないでしょ!」と思うかもしれません。でも作曲家が書きたければ嬰ホ長調 E# majorはあり得るのです。「でも#11個って音7つなのに!」
いやいや「ファ、ド、ソ、レ、ラ、ミ、シ」にダブルシャープが
「ファ、ド、ソ、レ」付いて11個です。
でも、逆を言えば何故この調性で作曲家の皆さんは書かないか?
何故なら弾いたらヘ長調 F majorと全く同じ音が鳴るからです(笑)

このお話の核心部分はクラシック音楽にとって調性はとても大事なもので
和声学もコード理論に比べて圧倒的に調性にこだわったものです。
ですから、この表を頭に入れなくても、このような調号が存在するのだと
覚えておくと良いでしょう。特にこの凄い数の#や♭で調号を選ぶ作曲家はいなくても、転調時に通過するときに使う可能性は大です。
(例えばE majorーE #majorーFis #majorなどの使用例はあり得ます)

私自身の経験でも何度か複雑な調性をギター用にフィナーレでアレンジしていて、パソコンで移調した時に「何これ!」と
驚いたことがありましたが、オリジナルを純粋に移調するとこのような
調号に行き当たる事が実際にあるのです。

おまけですがバッハの「平均律クラヴィーア曲集」は長短すべての調性で24曲書かれていますが、先ほどの#6つと♭6つの調性は#系が得意なピアニストと♭系が得意なピアニストの為にサービスで両方の調号が載せてあります。最初はこれも「なぜ?」と思いましたが、上の図で丁度真ん中の
調性と分かってからは理解できました。(勿論私が読むのは#6つです)


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