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指揮者修行、その4

指揮者としての編曲作業とは?

気が付くと数十年もギターアンサンブルを複数教えていて、編曲から毎月の指導、練習本番での指揮など年間のルーティンも大体決まっています。
まず、大切なのはしっかりした編曲譜を渡すこと。市販譜でも良いものはあるのですが、中々そこまで行き当たりません。クラシックのオーケストラの大きな作品となると編曲をするしかないのが現状です。
オリジナルも素晴らしい作品もありますが、やはり皆さん愛好家の集団ですので憧れの曲や、独奏では手が出ないものの重奏化した譜面も必要になります。
何年もこの作業をしていると、オーケストラのスコア譜にも慣れてきますが
、それでも注意は必要です。
ギターの譜面は元々オクターブ高く書かれていて、実際の音はすべてオクターヴ低いので、そのままモーツアルトなどのピアノ曲をそのままアレンジすると重くどんよりした感じになってしまいます。ではオクターブすべての音を上げてしまえばよいかというと、今度は音域が足りません。

弦長だけの事を考えてみると、チェロぐらいの音域が丁度良いのです。
さて、そのままではオクターブ低い、オクターブ上げたら高すぎて音域が足りない。ここで初めて移調を考えます。調性はとても大切なものですが背に腹は代えられません。大概の場合は調性がギターに合う物の場所で4度か5度位上げる事が多いです。

慣れてしまうと、ピアノ譜面ぐらいだと頭の中ですべての音を上げながら編曲を進めることもできますが、少してこずりそうだなと思ったらその調性のまま打ち込んでしまいってから、ソフトの性能で好きな調性に一瞬で移調することもあります。

それでも最大の敵は移調楽器でしょうか。クラリネットはB管で半音ですからまだ良いですが(と言ってもC管や他の管もありますが)ホルンの種類が多く、F管とB管もあり持ち換えしたり最初はかなり混乱しました。
オーケストラスコアを読んでいてパッと見て木管・金管類がユニゾンで
吹いてくれていると「お!移調楽器の高さの見本市みたいでいいね!」と
分かりやすくなりますが、曲の中盤でバラバラにおかずなど吹かれると「え!この楽器なんだっけ?」となってしまいます。

そして、移調の楽器で苦しむたびに王立音楽院の例のソルフェージュの先生が話していた事を思い出します。
「皆さん!移調がすべて完璧に出来る手段があるのを知っていますか?
簡単です。すべてのクラフ(記号)を読み替える技術を身につければ良いだけです。ト音記号ばかり読んでいるからいけないのです!ト音、へ音、ハ音4種類、それに使う楽器が存在しないへ音の第3線、このたった7つの記号を自由に読み替える事が出来ればどの調性からどの調性も読み替え自由ですよ!」これを初めて来た時私は「ちょっと言っている事が分からないんですけれど」とサンドイッチマンの富沢状態でした(笑)
これは、また別に解説をここでしようかと思いますが、今思えば深~いお言葉でした。

今思えば本当に素晴らしい授業でした。そして、世の中にある楽器で誰も使用していない記号があり、それが楽器の為ではなくすべての音に読み替えるための7つ目の記号なのだ、と初めて理解した時には感動しました。
先生、あの時は理解できずにごめんなさい。

続く




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