Fセクを母にカミングアウトしてみた

今日の朝二度寝から起きたら、母からラインが入っていた。
「コロナ騒動疲れた!!!焼肉行こう!!!」
この時期に外食なんて、と思われるかもしれないが、うちの地域では幸いまだ感染者は確認されていない。そして母の職場はコロナ騒動関連について対策したりその他いろいろやっており、苦労は偲ばれたのでいいよと返事をした。これくらいは許されたい。

もちろんマスクを着けて出かけ、母と合流し、店に着いたら入り口にあるアルコールスプレーを手に吹きかけた。
頼むのは好物のネギ塩牛タン、それと適当な肉盛り合わせ。頼み終わって一息ついた隙に、私は切り出した。

「フィクトセクシュアルっていうセクシャリティがあってさ」

「? うん」

「私それかもしれなくてさ」

「うん」

「フィクションのフィクトで、架空のキャラクターに本気で恋をするってやつなんだけど……」

「んん?!」

母は眉を顰めた。よくわからん、という顔だ。私はスルーして話を続けた。

「んで、お金かけて、ソロウェディング、しました」

「ほう」

鞄に忍ばせておいたアルバムを取り出して手渡した。母の顔は一気に明るくなった。計画通りである。

「ええ!なにこれすごい!!モデルさんみたい!!たかみなみたい!!!」

「たかみな?!」

予想外の褒められ方をして動揺してしまった。

「ま、まあ、そんなわけで、お金かけてウェディングドレス着るくらい、降谷零が好きなわけです」

「なるほどなぁ、そうかぁ」

アルバムを見返して、写真撮っていい?と訊かれたので後でデータを送るよ、と言った。



これで終わりである。

何故って、その後うちの妹は成人式に出ておらず晴れ着を着ていないのでこんなふうに着せてやりたいという話になり、ソロウェディングの値段の話になり、10万円程と答えると10万円と言えば給付金が~と話はどんどん逸れてコロナの話になっていった。

この反応が良いのか悪いのか。

少なくとも私は安心した。否定されないだけよかった。そう思う。

私はつくづく幸運だと思う。何って私のこの想いを否定してくる人間が傍にいないのだ。これまで否定されたことがないのだ。だから私はここまで来れたし、否定してくれないでいる皆には感謝しかない。

これはただの一例であって、私の場合にしか過ぎない。セクシュアリティなんて絶対カミングアウトしなければならないものではない。別に人に話さなくてもいいものである。
何故話したかと言うと、そろそろ結婚しないの?みたいな質問が来るのが怖くなったからだ。うちの親は幸いあまり言ってこないタイプだが、いつか言われるんじゃないかとビクビクしていたのは事実で、それならもうこちらから三次元の男と結婚するつもりはないと言ってしまえ、と思い立ったのである。
結局良いのか悪いのかわからないし、母は表面的にはこういう反応だったが内心もしかしたらいろいろ考えているかもしれない。けれどそれを私に言ってこないということは、少なくとも今はこれでいい。このままでいいってことだ。

かくして私の意を決したカミングアウトは終了したのであった。おわり。

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