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藤堂明保と史記

※この記事は2018年に作成したものです。

NHK BSで放送された「司馬遷と武帝」を見てから司馬遷がマイブームです。

とりあえず入門書的なものから読み始めているところですが、ふと昔読んだある本の事を思い出しました。
その本は子供の頃に何度も読み返すほど好きな本でしたが、買い与えてくれた母が他界しているため、タイトルも著者もわかりません。

しかし現在はインターネットという便利なものがある時代。
覚えていた主人公の名前「小甲」「小乙」「伯夷」「叔斉」でキーワード検索してみると、知恵袋で同じ本を探している質問者がおられまして、書名が「漢字ものがたり」で著者が藤堂明保、というところまで分かりました。

現在は絶版になっていて入手は難しそうですが、全国の図書館の蔵書を一括して検索出来る「国立国会図書館サーチ」で探してみると、おおっ、大阪市の中央図書館にもあるじゃないですか。

そんな訳で早速件の書籍を借りてきた訳ですが、ちなみに大阪市民になって二十余年。図書館は初めての利用です😅
せっかく税金払ってるんだから、もっと活用しないとなー。

おおよそのストーリーは覚えていた通りで、史記の「伯夷列伝」と「殷本紀」をベースに脚色とフィクションを加え、さらに主人公の兄弟が文字(漢字)を考えていくという設定をとって、物語の中で漢字の成り立ちも説明しています。

子供向けに分かりやすい表現にはしてあるものの、この本には「文字はすべての人のための、真実を記録するための道具であり、決して権力者が自分の都合のよいように事実をねじまげたり、嘘を流布するためのものではない」というテーマが一貫して流れており、まさにフェイクニュースやプロパガンダ的なものが蔓延している現代に警鐘を鳴らしているかのようです。(出版は1974年)

ところで「史記」に登場する紂王は「酒池肉林」や「炮烙の刑」など多くの悪事を行った暴君としてあまりにも有名ですが、最近の研究では殷を滅した周が武王の正当性を示すためにことさら紂王の悪行を強調した、または捏造したのではないかという見方もあるそうです。

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)より↓

悲しいことですが理想とはうらはらに、文字は誕生したその瞬間から、記録の捏造と改竄という宿命を背負っているとも言えますね。

「あれ?そういえば殷代のお話なのに表紙が万里の長城?」と思ったら、中国文学全集の他の巻も同じ絵を使っているようです。
そりゃあ音韻学の偉い先生がそんなところを間違う筈ないですもんね😅

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