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日日

わたしが両手いっぱいにのせている

その小さい水晶のようなものは

ひとつひとついびつだがどうにか丸さを保っている

このひとつひとつにわたしを吹き込むのだ

ふきこんだそれは透明からさまざまな色に変わり

手からこぼれ落ちて道をつくる

点々と落ちるにじいろのそれは

わたしが歩んだ場所を色あざやかに飾るのだ


しかし

色づいたそれを見ることはできなかった

色づいてこぼれ落ちるその瞬間は

目をつぶり呼吸を止める

とすんという音を聞いて

初めて

ひゅっっと息を貪るように吸い

おそるおそる目を開けまた進むのだ

落とした分だけいつの間にかまた

手のひらには新しいそれがのっている

手に感じる重さと

にじいろと信じる今まで落としたそれら

それだけがわたしの生命


ほんとうは

点々と

真っ黒い炭のようなものが

落ちて

それは嘲笑され

避けられ

腐り

気味の悪いものと成っているのかもしれない

そんな妄想をふりはらうかのように

足早に

鳥の声だけに耳をすませ

わたしは日日歩む



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