新年
駅で降りる乗客たちを
神妙な顔で見る私たち
下車した人たちは
笑いながらこちらに手を振る
ゆったりゆったり手を振る
トコトコと再び走り出す電車が
短いトンネルを抜けると
ゴーンゴーンと大きな花火が上がる
目が眩んだ乗客が後ろを振り返る
トンネルの形に切り取られた光が
乗客だった人たちの
僅かな影でゆらめくのだ
私たちの切符だと
そちらには行けないから
これからも新しい年を何度も越えて
花火を見て笑っていてね
トンネルの影が見えなくなるまで
乗客だった人たちは
ゆったりゆったり手を振る
さようなら
行ってらっしゃい
新しい年へ
私はそちら側に残りたかった。
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