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2021シーズンで去る選手たちに寄せて

 年が明けて早数週間。年始の怒涛のリリースも終わり、2022シーズンのスカッドが明らかになった。新デザインのユニ、シーチケの販売も発表され、徐々に開幕の足音が近づいている。今年はワールドカップイヤーのため、大分開幕が早まっており、あと1か月もすれば、土日の結果に左右される心臓に悪い1週間を過ごすことになると思うと、期待半分、不安半分。正直、まだ残留争いで生じた精神的疲労が癒えてない気もするし、そもそも選手たちの疲労回復も難しい。例年のようなJリーグ禁断症状が出ないうちに始まるかもしれない(フラグ)。
 (注:書き始めた時はこんな時期だったけど、気づけば開幕1週間前、恐ろしい。まだ始まる実感もなければ、3バックに駆逐されることへの覚悟もない。)

 で、2022シーズンの体制が決まったことはつまり、2021シーズンで我らがザスパクサツ群馬を離れた選手が確定したことを意味する。昨シーズンはクラブ史上初の監督交代を行い、久藤氏の下で残留を果たした。新体制発表でも松本強化本部長が述べていたように、当初は久藤体制の継続に向けて動いていたが、諸々のタイミングがあり、新たな監督として大槻氏を招聘。新監督を迎えるシーズンは選手の入れ替えが多いイメージがあったが、今シーズンのチーム編成自体は監督選考同様に継続路線のようだ。昨シーズン開幕前にも書いたが、以前に比べて入れ替えが少ないのは、クラブとしてのステージが1つ上がったようにも感じる。特にチーム始動前日に明かされた主軸選手達の残留は、引き抜きの過去からの脱却を意味しているのではないか。数多の選択肢の中からウチを選んでくれる選手がいることは幸せなことである。

 一方で、常に別れを伴うのはサッカークラブの宿命である。2021シーズンをもって、レンタルを除き7人の選手がクラブを離れることになった。

GK 21 松原 修平

 昇格に一歩届かなかった2018シーズン、チームを最後方から支え続けたことが評価され、一気に2ランクの個人昇格。しかし、J1の壁は厚く、なかなか試合に絡むことができなかった。そんな中でウチに帰ってきたことは、簡単な決断ではなかったと思われるが、何より嬉しかった。慶記と松原のポジション争いは、それぞれ2017・2018の苦しい時期を知る選手同士ということもあり、第三者からは感慨深いものだった。2020シーズン中盤までは出番が限られていた。しかも、出場した試合で悉く結果に結びつかず、自信を失っているようにも映った。しかし、終盤に定位置を確保すると、神懸った活躍で快進撃に大きく貢献。
 その勢いのまま、2021シーズン開幕直後もスタメンで出場を続けたが、3節からの3連敗の煽りを受けて控えに回る。その後、チームのコンディション面でのトラブルがあった期間など出場する機会もあったが、9月以降は著しく出場機会が減少。それでもチームで唯一、全試合メンバー入りを果たした。残留を手繰り寄せた要因の一つは、慶記と松原のハイレベルな争いだったと思う。

 トライアウトを経て、2022シーズンは京都サンガF.C.に所属することが決定。再びJ1の舞台に戻ることとなった。湘南時代と同じく、曺監督は松原のプレー面は勿論、パーソナリティを評価しているようだ。京都で金の雨を降らしてほしい。

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GK 37 外山 佳大

 2020シーズン、立命館大から加入したGK。川場村出身で、中学時代は昭和村のFC KRILOで稔也とチームメイトだったという経歴は、加入時から話題となった。2シーズンの在籍期間において、メンバー入りすることはなかった。練習見学もままならない社会情勢では、普段のトレーニングですらプレーを見れなかったのは残念でならない。1枠しかない極めて特殊なポジションの難しさは本人が何より感じているだろう。サポとしても、扱われ方に疑問を持つ部分はあるが、これもプロの世界ということか。

 2022シーズンはおこしやす京都に活躍の場を移す。京都U-18→立命館大というような所縁のある地において、飛躍していってほしい。

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DF 36 吉永 昇偉

 完全移籍加入が多かった2020→2021のオフに、唯一レンタルで加入した若手SB。開幕戦でいきなりスタメンに抜擢されたことは驚いたが、それだけ期待されていることの表れだった。その開幕秋田戦では、豊富な運動量で右サイドの攻撃を活性化させ、勝利に貢献。勝ち越しゴールが決まった時の両手のガッツポーズも印象的だった。開幕戦の出色の出来により、5月にかけてRSBの定位置を確保。積極的な攻撃参加が目立った一方、守備時の立ち位置やマークの受け渡しに苦労した。4節新潟戦では完全にサイドを制圧されるなど、良さを発揮できない試合もあった(当時の新潟の完成度の高さを考えると仕方ない面は多分にある)が、奥野前監督は我慢して起用し続けた。しかし、契約上出場できない大宮戦を境に徐々に出場機会を得られなくなる。7月に指揮官が変わり、時を同じくして小島が怪我から戻ってきたことで、メンバー入りも難しくなってしまった。それでも、久々の出場となった11月の相模原戦では、後半開始の投入直後に素晴らしいクロスを供給し、翔大のゴールをお膳立て。1つ結果が出たことでその後もベンチ入りしていたが、契約の都合により磐田戦をもって、シーズンを終えた。

 2022シーズンは、レンタルバックして大宮でプレーする。他チームの編成を気にするほどの余裕もないが、噂によるとLSBの人材がとても薄く、開幕スタメンの可能性も十分あるとか。相模原戦のあのクロスを見れば分かるように、ポテンシャルは確か。1つのキッカケがあれば飛躍すると思うし、ある程度出場時間が得られれば化ける。栗鼠からのレンタル組はもう一度帰ってくる選手も多いし(島田、慶記、優孝)、いつかまた紺色のユニに袖を通すことも楽しみにしたい。

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DF 40 大武 峻

 城和・川上が立て続けに離脱しCBが人材難となった2021年夏に磐田よりレンタル移籍。持ち前の高さ、対人能力の高さを活かしてすぐにスタメンに定着。特に右足から繰り出される高精度のフィードは、COVID-19アクシデントに揺れた8月下旬を乗り切る上での重要な要素だった。その後も攻守で活躍を見せたが、相模原戦での負傷によってシーズンアウト。それでもチームへの貢献度を考えれば完全移籍加入は既定路線に思えた。

 所属元の磐田との契約も満了となり、今シーズンからは福島でプレーする。J3では頭一つ抜けるほどのクオリティを持つ選手だし、最終ラインからチームを支えてほしい。

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MF 15 金城 ジャスティン俊樹

 J3で苦しい戦いを強いられていた2018年夏に、フォルトゥナ・デュッセルドルフから加入。8月末の瓦斯戦でデビューすると、すぐに定位置を確保。右のWBとして攻守で躍動すると、佳境に差し掛かっていた鳥取戦で値千金の勝ち越しゴールを決める。ゴール後のゴル裏に向けてのガッツポーズ、そして終了間際に井上に決められて昇格戦線から後退したあの試合の記憶は鮮明。
 翌2019シーズンは序盤こそコンディション不良で出番がなかったが、4バックに切り替えてからはCMFとして定位置を確保。ジャスの定着と同じタイミングでチームとしても戦術の落とし込みが進んで一気に順位を上げた。しかし、J3特有の夏場の中断後、後藤京介の加入によってジャスはベンチを温める日が続く。結局リーグ再開後の出場時間は127分に限られた。それでも、昇格を決めた福島での笑顔は印象的で、J2での活躍を期待させるものだった。
 2020シーズン、0からのチームビルディングを余儀なくされたが、始動直後のTMでジャスがFWとして出場していたことは衝撃的だった。後に林を緊急補強するほどFWが不足しているチーム事情も影響してのことだが、ジャスのポテンシャルとサイズを考えてのFW起用だった。一方で、本来とは違うポジションでの出場しているのは、序列がそれほど上ではなかったとも推察できる。事実、開幕戦及び再開後数試合は絡むことができなかった。7月末にようやくメンバー入りして、不甲斐ない内容の栃木戦では、途中出場ながら1人気を吐いた。8月中旬の超過密日程の影響により得たスタメンの機会を逃さず、CMFとして定着。磐田戦では左足ボレーのスーペルゴラッソを叩き込む。このままスタメン起用が続くと思いきや、その後は再びベンチを温める日々。使ってほしいと思う気持ちがある一方で、複数ポジションこなせる選手がベンチにいるのは有り難い側面もある。20シーズンには、ジャスだったり舩津だったりがベンチにいることの安心感は間違いなくあった。京都との最終戦では怪我人が続出し、最終的には10人での続行を余儀なくされるスクランブルに陥ったが、ジャスがCBを務めて逃げ切ったことも良き思い出。
 2021シーズンも開幕直後はメンバー入りできず。それでも、守備強度とサイズ感に課題を抱えたチームの修正として5月頃から出場機会を増やす。一時はRSBのファーストチョイスとなり、右サイドの攻撃の一翼を担ったが、小島の復帰と共に徐々に出場時間が減少。11月3日の長崎戦を最後に試合出場はなくシーズン終了、契約満了がリリースされた。

 本人のコメントでも触れられていたが、どのポジションでも及第点以上のプレーができるのはチームにとって重要だった。と同時に、中盤での出場機会がもっとあれば、よりジャスの良さが活かされたのではないかという行き場のない思いもある。現時点で次の所属先は決まっていないが、ジャスはどこに行っても間違いなく活躍できるはず。またプレーを見たい。

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FW 10 青木 翔大

 乾坤一擲の2019シーズンに沼津からやってきたストライカー。「緊急SOS!同リーグ10番全部抜く大作戦」(仮称)によって引き抜いた3選手のうちの1人。前シーズンの群馬戦で点を決めており、沼津への苦手意識を植え付けた張本人の1人でもあるが、味方になると実に頼もしかった。開幕戦からドッピエッタを記録してサポの心を掴むと、その後も攻撃陣を牽引。序盤なかなか勢いに乗れないながらも、翔大が前線でポイントを作ってくれることで崩れずに済んだ部分はあった。5月の天皇杯を機に4バックにシフトし、尚且つ規格外の大卒ルーキーが最前線に起用されるようになると、翔大は主にRSHの役割を担った。この起用は間違いなくキーポイントであり、吉田将也とのコンビネーションは永遠に見てられた。中断を挟みながらも破竹の勢いで連勝街道を進み、翔大自身もゴールが増えて2桁に乗せた。しかし、古巣沼津戦で前十字靭帯断裂しシーズンアウト。本人は試合中に足の甲を踏まれて踏ん張る力がなかったと言っていたが、相手選手の必要以上のタックルに壊されたという印象は拭いきれない。翔大の負傷、その後の高澤の負傷によってチームは一気に窮地に立たされる。それでも、何とかJ2昇格を勝ち取った。
 翌2020シーズン、怪我の影響で7月まで戦線復帰できなかった。チーム編成を見ると、(3月に緊急補強するくらい)どうやってもストライカーが足りておらず、翔大の復帰は大きかった。最前線からのプレスによってチーム全体の守備陣形を整えるとともに、豊富な運動量でボールを引き出した。最終盤の快進撃時は攻撃もだいぶ整理され、ホーム最終戦では翔大自身もゴールを記録した。
 怪我が癒えて迎えた2021シーズン、開幕戦こそ途中出場だったが、その後はスタメンでプレー。しかし、7節の長崎戦で左膝内側側副靱帯損傷で全治6週間のけがを負ってしまう。やっと戦い方を構築しかけた矢先のキープレイヤーの離脱により、チームは混沌。翔大が帰ってくる頃にはチーム状態は悪化しており、監督交代がなされる。久藤監督の下でも、翔大の献身的なプレーは必要不可欠だった。最前線での起点となるだけでなく、縦への推進力を見せる場面も多かった。琉球戦のカウンターからのゴール、水戸戦の冷静にGKを寝かせて流し込んだゴール、相模原戦のダイビングヘッド、どれも異なったパターンからの得点であり、残留に向けても重要な意味を持つものだった。苦しい状況でも、闘い続ける翔大の姿を見て勇気付けられたサポも多かったはず。

 2022シーズンは、吉田謙の率いる秋田でのプレーを選択。寝耳に水の移籍であり、ダメージは大きかった。最後まで悩んでの移籍だったようだが、恩師に誘われれば仕方ない。本人はFWとしてゴールにこだわりたいという趣旨のコメントをすることが多かったが、翔大の貢献度は結果だけでは計りきれない。どんな時でも愚直にボールを追い、最終ラインまで下がって相手と対峙することも厭わない。また、セットプレー時に「切らすな切らすな、ここ集中だぞ。」と常に声を出し続けていたのも印象深い。
 また、ゴールも3シーズンで15ゴール決めているが、2021シーズン第28節甲府戦の大前へのアシストも忘れられない。左サイドで相手を剥がし、DFの足が届かない絶妙なコースにボールを転がした。あれは、完璧なカウンターだった。
 1つ心残りは、もうあのチャントを歌えないこと。アウェイ沼津の時に、古巣相手に点取らせようと兎に角歌いまくったのに全くゴールの匂いがしなかったのも今となっては良い思い出だ(基本的に古巣戦で気持ちを乗せようとして上手くいかないことも多い、対長野の駿太然り、対鳥取のKJ然り)。ここ数年では個人的に1番気に入っているチャント。そもそもチャントが歌える日常が帰ってくること第一だが、いつかまた翔大のチャントを歌いたい。

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FW 50 大前 元紀

 J2復帰を果たした2020シーズン、強化本部長のつながりをフル活用して獲得に成功。上毛の大本営発表があっても半信半疑だったが、本当に来てビビった。中断開け直後は途中出場が続いたが、その後はほぼ全試合でスタメン出場を続けた。ウチに来る前は怪我がちのイメージもあったが、過密日程でも長引く怪我はなかった。そして、やはりキック一つで違いを生み出した。セットプレーの精度は勿論、大前を経由して攻撃するケースは極めて多かった。前線から一列落ちてボールを引き出しながら、上手く七聖を使っていもいた。翔大のところで触れた甲府戦のゴールは、大前のゴール前での駆け引きも楽しめる。
 2021シーズンも、引き続きスタメンでの出場が続いた。キック精度は健在だったが、動き出しの部分で前シーズンほどキレがなかったり、ボールを引き出しに下がる癖を完全に相手に利用されたりと、上手くいかない部分も目立った。それでも、あれだけ違いを生み出せる選手は稀である。事実、ものすごく流れ悪いのに、全然脈略ないところから点が入って命拾いすることも多数(謎の後半ATのCKの得点力)。大前がライン間に下りて捌いていたからこそ残留まで持っていけた部分はある。

 2022シーズンは京都に所属し、自身5シーズンぶりのJ1でのプレーとなる。21シーズン最終戦当日に移籍情報流した某スポーツ紙に対する怒りは置いておいて、曺氏に評価されてのオファーだったようだ。インテンシティの部分で指揮官の求めるレベルをクリアできるかという懸念事項はあるが、ポジショニングやキックの面で違いを生み出せる選手は重宝されるはずだ。
 彼はピッチの外でも選手たちに多くのものを残した。SNSを見ていると、多くの選手に慕われていたことが良く分かる。特に若手選手にとっては良き先輩だったようだ。クラブを離れた鈴木順也や外山も退団時に贈り物をしていたようだし、大八がステップアップしていった札幌で選んだ背番号も、大前へのリスペクトの象徴である。今シーズン、大前の背番号を継承する平尾も、番号が発表された際に大前への思いを明かしていた。また、畑尾が加入する際も、松本強化本部長の交渉と同時に大前の後押し(勧誘?暗躍?恐喝?)が効果的だったと本人が明かしている。
 そもそも、あのクオリティを持つ選手がウチに来るのも珍しかった。プレーの随所に見える「上手さ」は、まさしくお金を払う価値のあるものだ。敷島で観れない寂しさはあるが、J1でも「50」を付けて活躍するのを心待ちにしている。

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終わりに

 4チーム降格という過酷なサバイバルレースを乗り越えた2021シーズン。誰か1人でも欠けていたら、残留を勝ち取ることはできなかっただろう。厳しい状況でも常にハードワークを続けてくれた全ての選手たちに心から感謝したい。どこへいったとしても、次の舞台で活躍することを願う。

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