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2023シーズンでチームを去る選手たちに寄せて

 今までどこか夢物語に思えていた「昇格」というものが僅かばかりではあるが現実味を帯びたシーズンを終えて、しばしの休息。弱肉強食の世界、札束で殴られれば抵抗の術がないのは地方クラブの宿命であり、順位を上げたことで草刈り場になったチームは枚挙に暇がない(ex.北Q)。我が軍も抗えずに過去に隣のオレンジ色に2年連続でプロスペクトを買い叩かれたり、指揮官とSBをセットで隣の県の山賊に持ってかれたりもした(両クラブとも今年の対戦がないみたいなんだが、元気にしてるのだろうか)。これに関しては、ウチも東北方面から恨まれている可能性もあるので何とも言えんが…。スクラップ&ビルドを繰り返していたかつてのオフシーズンほどではないものの、ある程度は引き抜き覚悟していた。しかし、大槻体制3年目の集大成のシーズンに向けて、クラブは既存戦力を上手くプロテクトしながら的確な強化を行う。補強したことが結果に直結するのであれば上記のチームが降格することもないとはいえ、チームの体制を整えることには成功した印象。ここから大槻スタイルの落とし込みを行い、新シーズンに突入していく。

 目の前の試合で感じるストレスから解放されて数か月。定時にHP開いてリリースチェックする作業も終えた。試合日程も発表され、少しずつ2024シーズンが始まることを感じる。一方で、獅子のエンブレムを左胸に付けて戦い抜いた選手たちとの別れにも思いを馳せる。誰か一人が欠けていても2023シーズンのクラブ史上最高成績は実現しなかったはずで、それぞれが残したものは大きい。全員が置かれた状況に満足していたとは思わないが、それでもチームに貢献してくれたことには頭が上がらない。2023シーズンを以って、15人の選手が群馬の地を離れることとなった。


GK 1 清水 慶記

 前商出身のGKは流経大経由で大宮に入団するも、なかなか出場機会を得られず、2016シーズンに高瀬と共にレンタルで加入。2016シーズンはフルタイム出場を果たす。日本平で屈辱の8失点を喫することもあったが、守護神として残留に大きく貢献。このシーズンは瀬川、山岸、中村駿といった現在J1で活躍する選手たちのルーキーイヤーだったが、慶記や坪内が後方からチームを支えていたことも若手の躍動に繋がっていたように思う。前年の活躍を考えれば2017シーズンも正GKの筆頭格だと思われていたが、開幕戦ではベンチを温めることとなった。その開幕戦で色々あって2節の湘南戦からはスタメンで出場を続けたが、なかなか結果が出ない。その後も指揮官の思い付きで何度かベンチに座る試合があったが、シーズン後半はスタメンの座を渡さなかった。が、その頃になるとチーム状況は最悪で、いくら慶記が活躍してもどうにもならなかった。ウチは降格し、慶記は大宮へのレンタルバックからの2018シーズンは秋田にレンタル。2019年は大宮に復帰するも出場は無し。
 再び出場機会を求め、2020シーズンにウチに今度は完全移籍で加入。開幕直後に中断する未曽有のシーズンだったが、慶記がゴール前にいてくれる心強さはあった。しかし、シーズン最終盤は松原がスタメンとなりそのまま6戦無敗でフィニッシュ。翌2021年も慶記と松原がハイレベルなポジション争いをしていたものの、9月以降はほぼすべての試合でスタメン。慶記が何度も窮地を救ったことで、チームは辛くも残留を果たした。2022年以降は櫛引の加入によって著しく出場機会が減少。2022年7月の天皇杯広島戦が現役最後の出場で、9月からは山田の台頭などもありメンバー入りもせず。それでも、最年長の慶記がGKチームの結束に不可欠であったのは言うまでもない。

 2020年の復帰時から決めていたとリリースコメントで明かしていたように、今シーズン限りでの契約満了及び現役引退。既に「ゲームパティシエ」としてのキャッチコピーの通りセカンドキャリアも動き出している。クラブアンバサダーとしてクラブにも関わるとのリリースもあり、これからも地元に還元してくれるはず。


GK 46 山田 晃士

 2021年に阿部とともに早稲田ア式から新卒で加入。ルーキーイヤーはなかなか試合に絡めなかったが、クラスターなどの非常事態によって夏場にベンチ入り。その時のロッカーアウトの声掛けで一躍有名となったが、90分間ベンチから鼓舞し続ける姿はとても頼もしかった。2022シーズンは開幕当初からベンチ入りを続けると、天皇杯で初出場。そしてハイライトは9月の味スタでのヴェルディ戦、ベンチに控えGKがいない緊急事態の中で遂にリーグ戦での初出場を果たす。浮足立っても不思議ではない状況下で、安定感あるプレーを見せ、チームに勝点をもたらした。ヴェルディ戦を含めて4試合でスタメン出場。結果としては、これがザスパでの最後の公式戦出場となった。2023シーズンは石井の加入もあって試合に絡めず、天皇杯でのベンチ入りのみ。

 クラブからは契約更新の打診があったようだが、山田は出場機会を求めてFC大阪への移籍を決断。プレーは勿論、人間性を含めて群馬サポは魅了された。誰よりもストイックな山田は、大阪の地でも多くの人間を勇気付けるだろう。

DF 3 畑尾 大翔

 大宮から契約満了を告げられた後、親交のあった大前の誘いもあり、2021シーズンから加入。コンディション面の問題で合流が遅れ、開幕には間に合わなかったが、4節の新潟戦で初出場。その後は不動のCBとして文字通り大車輪の活躍を見せる。常に身体を張り、声を出し、負けが込んでも戦い続けた。また、苦しい試合でも終盤にヘディングを叩き込んで何度もチームを窮地を救った。愛媛・北九州・町田のどのゴールも勝点に直結しており、1つでも欠けていたら、ウチの戦うカテゴリは変わっていた。2022年は開幕から出場を続け、天王山となった古巣大宮戦で値千金の決勝ゴール。またもチームを残留に導いた。昨シーズンもCBの一角として出場を続けていたが、9月頃の怪我での欠場を機に出場機会が一気に減る。パワープレーとして前線に途中投入することも多くなったが、それでも自らのタスクを果たそうとファイトした。

 終盤は出場が減っていたとはいえ、出場時間が2000分を越えた選手が契約満了となるのは少なくない驚きを感じたが、稼働率やスタイルとのマッチなど様々な面を総合的に判断したのだと推測される。パーソナリティでも優れていて、求人力がある選手だけに、ウチとするとその穴は埋められるのか。今シーズンからは金沢に活躍の場を移す。久藤さんや小島とも再会。闘志あふれるプレーで金沢をJ2に押し上げるはずだ。
 畑尾の熱きハートを忘れることはないし、新幹線で高崎に帰ってくるたびに思い出すに違いない。

DF 4 川上 優樹

 クラブがJ2に復帰した2020シーズンに明治大学から加入。布氏&飯田氏が最後に残した置き土産だった。夏場の岡山戦で守備固めとして投入されてデビューすると、10月の千葉戦で初スタメンを飾る。デビューから福岡戦で前に決められるまで300分強、出場している間は無失点だった。成長著しい大八とCBコンビを組み、リーグでもかなり若い組み合わせとなった。クレバーな守備で要所を締め、今後の成長が楽しみだった。しかし、肩の脱臼癖が川上を苦しめる。京都との最終戦では途中出場するも相手に倒された際に負傷して続行不可能に。肩の手術を受けるなどして、2022シーズン以降も復帰してスタメンで出場する機会もあったが、肩以外の怪我にも度々見舞われ、どうしてもプレー時間が伸びていかなかった。

 今シーズンからは富山へ。広大がクラブを離れる際、「ポテンシャルは最も高い」と川上を評していたように、怪我がなければ間違いなく活躍できる選手である。新たな環境において、今までの鬱憤を晴らすような活躍を期待。

DF 19 岡本 一真

 2022年、前橋育英から加入。高校3年時はプレミア昇格を達成し、選手権もベスト8に進出したが、岡本自身は怪我の影響もあって出場時間は限られていた。元々プロ志向を持っており、山田監督も守備面ではプロでも通用するというコメントと共に送り出した。
 加入当初はユース年代とトップの差や怪我の影響などもあって試合に絡むことはなかったが、天皇杯の山形戦が一つの契機となる。右サイドで上下動を繰り返して勝利に貢献すると、3回戦の浦和戦でも一切臆することなくプレーし、ディフェンディングチャンピオン相手にも通用する力を示した。その後の山形戦で満を持してリーグでもスタメンを果たすと、そこからは一度もスタメンの座を譲ることなく出場を続けた。ルーキーとは思えぬ落ち着きぶりを見せ、チームに欠かせない存在となる。2023シーズンは副キャプテンにも任命され、より一層チームにとって欠かせないピースとなった。右片上がりの可変において岡本に課せられたタスクは重要だったが、見事な活躍を見せる。甲府戦で念願の初ゴールを挙げると、パリ五輪の年代別代表合宿にも招集されるなど、想像以上の成長曲線を描く。ヘルニアによって夏場に離脱し、また長倉の栄転というダブルパンチによってチームは勢いをやや削がれていたが、それだけ岡本が大切なピースであることが窺える。10月に戦線復帰すると、完全制覇のかかったダービーでスタメン復帰。いきなり自らゴールを奪うなど2ゴールに絡み、改めて自分の価値を証明した。

 昨オフの時点で何らかの声が掛かっていても不思議ではなかったし、怪我していなければ確実に夏場に買い取られていたはず。成長の為に選んだチームは山形。チームを離れることを申し訳ないと本人はコメントしていたが、海外や代表を視野に入れるなら、新たな環境を求めるのは当然だし、それを止めようとは思わない。山田さんの下でサッカーをする上での原則は身に付けているし、大槻さんによって立ち位置やボールの運び方なども習得。そして次は渡邉氏が指揮を執る山形というのはとても良いチョイスではないだろうか。ポジショナル志向の中で、岡本がどのような活躍を見せるのか楽しみで仕方ない。数年後、日の丸を背負ってプレーする姿を見れることを願う。

MF 6 内田 達也


 2020シーズンにヴェルディから加入。中盤での出場が主だったが、RSBやCBでも出場するなど、マルチに活躍した。あまり派手にプレーするタイプではなく、パスのテンポを作ってゲームをコントロールする。その働きは目立つものではないので、時に的外れな批判を受けることもあったが、内田がいるといないでボールの落ち着き方は全く異なる。大槻体制となった2022シーズンも中盤でいぶし銀の活躍を見せていたが、練習中に負った右足のACLでシーズンアウト。2023年は開幕1か月ほどの頃に戦線復帰すると、途中出場することが多かった。これは信頼を得ていないのではなく、途中出場でも試合に入ることができる点を評価されていたのだと個人的に考えている。試合がバタついたり、塩分要素が高くなってきたりした局面で打つ手を考えた時、取り敢えず内田でゲームを整えるのが定石となった。また、内田がバイタル付近に顔を出せている時はチームとして機能しているといった指標にもなる(2022シーズンの水戸戦の決勝ゴールが最たる例)。シーズン終盤は中盤トレスにするといった立ち位置の変化を試合中にできたのも内田の存在が大きかった。

 今シーズンからはティアモ枚方に移籍、地元でのプレーとなる。周りの事象に動じることなく落ち着いてマイペースでプレーできるのは何よりの強み。ウチでも3人に指揮官全員から信頼されていたように、枚方でも重宝されるに違いない。

MF 8 岩上 祐三

 2020シーズンからチームに加わった前商出身戦士。ロングスロー、ミドル、FKと対戦するたびに脅威に感じていたからこそ、加入した時は心強かった。初年度からほぼ全試合にスタメン出場。当初はRSBで起用されていたが、やはり中盤で出場することで個人のパフォーマンスもチームも安定していった。良い意味でのダーティさを持ち合わせており、相手が嫌がるプレーを徹底。冬場の古巣相手の試合で土壇場での移籍後初ゴール。エンブレムをアピールするゴールセレブレーションは胸が熱くなった。翌2021年も高い稼働率で、チームの残留の大きな原動力となった。大槻氏が監督となった2022年も中盤の1stチョイスは岩上だった。琉球戦での左足ミドルや岡山戦での直接CKなど、印象的なゴールも多い。終盤は残留に向けての現実的な戦いをしていたが、細貝との中盤は強固。時にヒップドロップの如く相手にアタックするなど危ういプレーもあったが、それでもカードを貰わない辺りは経験の妙である(褒めている)。しかし、2023シーズンは一転して出場機会を失う。天皇杯での途中出場が唯一のプレーとなった。その際に大槻氏から「ビビらず足元に付けないと意味がないぞ」と声が飛んでいたことから、色々と察する部分はあった。長いボールを蹴れるのは岩上の魅力の一つだが、ウチが志向したスタイルと合致しているとは言い難く、チームを変えるのも現実的な選択肢となる。夏場に相模原へと移籍し、16試合に出場した。

 今シーズンからは相模原に完全移籍。チームへの貢献度の大きさを考えると、別れは簡単なものではないが、求められているチームにて活躍することがプレイヤーにとって何より大切なはず。ジャスや彰人など、紺黄の方々との共闘することとなる。ルヴァンでいきなり敷島凱旋の可能性もあり、盛大に迎えたい。

MF 14 白石 智之

 J2復帰初年度の2020シーズンに富山から加入した地元群馬出身のドリブラー。前橋育英、法政大を卒業後、沼津、盛岡、富山とJFL・J3を戦い、ついにJ2でのプレーとなった。ウチが2017年に降格が決定的な中、唯一残留する条件は沼津が隣に勝つこと。その状況下、当時沼津に所属していたシラがザスパの為にも勝ちたいといった旨のコメントをしていた。結局逆転負けによりウチの降格が決まったわけだが、そこから数年の時を経てシラが紺黄のユニを着てJ2の舞台でプレーするのは感慨深かった。2020・2021シーズンともに途中出場が主だったが、常に縦に仕掛ける姿勢は相手が分かっていたとしても脅威になった。劣勢でもシラが推進力を見せてくれることで、気持ちが保てる部分は少なからずあった。身内の不幸がありながらもチームに帯同することを選び、勝利に導いた2021年の松本戦。試合後に見せたシラの涙を見て、改めてこのチームへの愛着の強さを感じた。2022シーズンは開幕直後の仙台戦のアップ中にトラブルで試合を回避すると、怪我が長引いてなかなか復帰できず。天皇杯を足掛かりにメンバー入りするようになり、町田戦でようやく巡ってきたスタメンのチャンスが巡ってくる。が、クソみたいなジャッジでハンドを取られて退場の憂き目に…。その後のCOVID-19流行などの影響もあり、出場機会が減ってしまう。2023シーズンもゲームチェンジャーとして終盤に投入される試合が多かった。思い切りの良いプレーは時々悪い方向に転がることもあるが、やはり我々に勇気を与えてくれる。しかし、10月の練習中に負傷してしまい、一足早くシーズンを終えた。

 今シーズンはレイラック滋賀へ。草津から草津への移籍だと本人はコメント。選手兼サポーターとしてプレーしてくれたシラは俺たちの誇りだったが、それは群馬を離れても変わらない。滋賀の地においても、縦に仕掛けてサポの心を動かす。思い入れの強い敷島でまた会える日が来ることを楽しみにしている。

MF 16 久保田 和音

 2021シーズンに加入。鹿島時代には稔也ともプレーしていた。開幕数試合はRSHで出場していたが、厳しい台所事情によりLSBでプレーすることもあった。丁寧なボールコントロールと推進力でチームの活力となった。愛媛戦ではヘディングで決勝ゴール、北九州戦でも見事なカットインからゴールを奪って見せた。中央でプレーした方がやりやすいんだろうなと思いつつ、サイドでも堅実なプレー。2022シーズンはゲームから遠ざかっていたが、内田の怪我を受けて6月頃から出場機会を増やす。ただ、細貝の復帰によって再びプレー時間が限られてしまった。2023シーズンは岐阜にレンタル移籍。

 今シーズンからはレイラック滋賀へ。多くの元ザスパ戦士とともにJ3昇格に向けて戦う。

MF 27 奥村 晃司

 2021年に拓殖大学から加入。拓殖大4年時はチームを関東1部に昇格させ、自らもアシスト王とベストイレブンを受賞。当時のベストイレブンを見ると、伊藤敦樹・満田・村上といった錚々たるメンバー。ルーキーイヤーの2021年は開幕2戦目の相模原戦で途中出場でデビューすると、いきなり非凡なセンスを見せて攻撃を活性化させた。レジスタといった表現がしっくりくるようなプレーぶりであり、ゲームを組み立てる。スタメンでの出場は多くなかったが、1年目としては長めのプレータイムを得る。2022シーズンはリーグ戦27試合に出場して2ゴール。特にフリエ戦でのビューティフルゴールは試合展開も相俟って印象的である。一方で、シーズンが進むにつれて徐々に出場機会が限られていった。2023シーズンもなかなかメンバーに入れず。秘めているポテンシャルは確かだが、なかなか発揮する機会がなかった。

 今シーズンからはYSCC横浜へ。出場時間が得られれば違いを生み出せるはず。クリエイティビティを発揮し、飛躍を。

MF 41 田部井 悠

 前橋育英全国制覇時の中盤の一角、田部井ツインズの兄。早稲田大学でプレーするも怪我の影響もあって冬までプロからの内定は得られず。それでも最後のインカレのアピールによって、地元クラブでプロとしての一歩を踏み出すこととなった。ルーキーイヤーの2022年は大学時代からの怪我によって始動時から出遅れる。天皇杯広島戦の終盤に初めてピッチに立つが、その後もメンバー入りもできず。緊急事態となったヴェルディ戦で唯一ベンチ入り。ピッチアップに加わることが度々あり、恐らく19人目として帯同していたことも多かったが、そこから一段上には進めなかった。2023シーズンになっても状況は大きく変わらず。天皇杯のヴェルディ戦でシーズン初出場を果たしたが、夏のマーケットで滋賀にレンタル。JFLでは頻繁に出場機会を得て、J3昇格を目指して戦うチームに貢献した。

 今シーズンからは滋賀に完全移籍。地元では小学生の頃から有名だったし、大学時代を除いてほとんどの時間を過ごしてきた群馬の地を離れる。群馬では勇姿を見ることがあまりできなかったが、コンディションさえ整えば類稀なる才能が発揮されるのは確実。JFLで爆発することを祈る。

FW 7 川本 梨誉

 オフェンス陣の運用に悩んでいた2022シーズン夏、清水(岡山)よりレンタル移籍。加入直後の仙台戦で途中出場すると、左サイドからカットインして強烈なミドルを放ってインパクトを残した。メンバーを揃えることすらままならなかったヴェルディ戦ではチームに希望を与える先制点を決めた。その後もパワフルなドリブルを見せていたが、やや粗削りな部分は否めず、好不調の波もあった。シーズン終了後は清水の復帰が既定路線であり、本人もそれを希望していた。しかし所属側の都合によって再度ウチへのレンタルが決定。家を引き払っていた梨誉は再び群馬での生活をスタートする。試合によってFWの一角やLSHの異なる役割をこなす必要があり、開幕当初はやや苦戦。攻撃時は推進力を見せるも相手に警戒されてなかなか足を触れず。また、トランジションの部分で後手に回ってファウルで止めるといったところもあった。しかし、試合に出場して経験を積むにつれて徐々に課題も克服する。2シーズン連続で味スタでゴールを奪った後くらいから肩の力が抜けたのか動きにキレがでてきた。ボールを落ち着くポイントがなくチームとして苦しむ試合もあったが、梨誉が相手を背負いながら前を向けるようになり、何とか時間を作れるようになった。シーズン終盤は明確に相手に脅威を与えるようになり、力強さが増した。水戸戦ではPKをぶち込んだのも含めて出色の出来。覚醒の雰囲気が漂い、本人も自信が持てていたように思う。

 今シーズンはようやく清水に復帰。FW陣の層は厚いが、梨誉のパワーと泥臭さはあのチームに足りない要素だし、報われてほしい。ウチとの対戦以外での爆発は楽しみ。

FW 11 深堀 隼平

 2022シーズンに名古屋から完全移籍で加入。開幕戦からスタメンで出場すると、自慢の快足を飛ばして相手最終ラインのブレイクを果敢に狙う。スピードは武器であり、抜け出す動きは分かりやすく相手を困惑させた。古巣である水戸との一戦で移籍後初ゴールもゲット。しかし、そこからなかなか決定機を決めることができず、徐々に出場機会が限られる。長崎戦で相手にレッドを突き付けたり、大分戦で追撃となるゴールを奪うなどしたが、夏以降はまとまった時間を与えられることはなかった。2023シーズンは愛媛にレンタル移籍すると、7月の富山戦でハットトリックを決めてチームに勝利をもたらした。シーズン通して6ゴールで愛媛のJ2復帰に貢献。

 今シーズからはいわてに移籍。あのスピードはそう簡単に止められるものではない。チャンスを仕留められれば、間違いなくより一段上のストライカーとなるはず。

FW 13 武 颯

 ウチがJ2復帰を決めた福島戦で最後までゴールを脅かし続けたストライカー。秋田時代も対応に手を焼いたが、翔大加入の影響で出場機会を減らしており、2023シーズンにレンタルで加入。開幕戦でいきなり秋田戦が組まれたため契約上出場できず。2節の町田戦でスタメン出場すると、千葉戦、秋田戦で連続ゴール。どちらもこぼれ球にいち早く反応して押し込んで見せた。雨中の山口戦でもストライカーらしいダイビングヘッドでチームを勝利に導く。清水戦で負傷して夏場は離脱。秋口に復帰したが、そこからはなかなか出場時間が伸びなかった。途中出場で試合に入る難しさもあり、ボールに関わる機会も限られる。それでも攻守ともに役割を全うした。

 今シーズンからはFC大阪でプレーする。生粋のストライカーは、自らトレーニングを課してストイックに取り組む。スピードとパワーを兼ね揃えており、ケチャップの蓋が外れれば大爆発する。

FW 39 髙木彰人

 G大阪U-23時代から対戦しており、その時から怖さを感じていたが、2021年にG大阪より加入。開幕戦でスタメン出場を果たすと、そこからコンスタントにメンバー入り。大前・翔大・稔也・KJと前線の選手が多くいる中でスタメンのチャンスを虎視眈々と狙う。天皇杯の順天堂大戦で決勝ゴールを叩き込むと、翌週のヴェルディ戦でもジャスのアーリーに見事に合わせ、一時逆転となるゴールを奪う。ストライカーとしての嗅覚を持ち、ハードワークも厭わないプレースタイルはチームにとっても有難い存在。2022年は途中出場が多くなっていたが、天皇杯の山形戦と浦和戦でゴールを決め、アピール。そこからスタメン出場を続けていたが、そんな最中の練習で右足のACLを負う。これからというタイミングでの負傷は本人にとってもチームにとっても痛かった。G大阪時代にも右膝を負傷しており、メンタルを保つのも難しい状況だが、懸命なリハビリを経て2023シーズン5月に戦線復帰。ゴールこそ奪えなかったが、前線で起点となる役割を担った。

 今シーズンからは相模原に活躍の場を移す。岩上、ジャスとともにJ3で暴れてほしい。


終わりに

 勝点50・16位以上という目標をクリアし、クラブ史上最高成績を達成した2023シーズン。チームとしての可能性を広げ、これからへの希望を示した。チームの為に直向きにプレーした全ての選手に感謝している。できれば、共に戦った全員と新たなクラブハウスでトレーニングしたかったというのが正直な気持ちだが、勝負の世界だし、それが叶うことはない。それぞれの次のステージで輝くことを切に願っている。

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