独立不撓 vs徳島 1-0

 立ち位置を工夫しながら前進を模索していき、アクシデンタルながら先制したものの、最後は相手の強烈な個に屈した前節。シャビエルとグレイソンはJ2軍縮条約に反しているのは確かだが、あの内容であれば1ポイントは積んでいきたかった。それでも僅かに見えた光明を信じて続けていくほかない。

 3月最後の試合でのシーズン初勝利を目指して乗り込む今節の相手は徳島。シーズン序盤ながら間違いなく天王山になり得る一戦。
 長らくスペイン路線を続けていた徳島であったが、昨シーズンはラバイン体制が開幕時から低空飛行を続けた。途中から吉田達磨氏が監督に就任し、チームを何とか残留に導いた。が、今シーズンもスタートからウチと同様に低調。サポからも風当たりも強く、ルヴァンで長野に惨敗したことも追い打ちをかける。
 白井が柏に帰り、森もフリエに移籍するなどのoutはあったものの、永木や玄、渡、柿谷等々のメンバーは揃う。エウシーニョが高い位置を取って攻め込むのは脅威である。4-2-3-1と4-1-2-3を使い分けており、前線と中盤の組み合わせはかなり流動的。一方で、耐えられずに失点を重ねることも多い。右が前に出たところをひっくり返されて崩れる傾向。
 で、昨シーズンまで気を吐いていた西谷が全然メンバー入りしていないと思ったらマッチデーに地元新聞からの大本営発表。完全に干されていたことが明らかとなった。これが当日に出てくるあたり、クラブとしても穏やかではない。

 どちらも是が非でも勝利が欲しい。相手の失点が嵩んでいるというが、ウチは過去2年間スアレスの牙城を全く崩せていないので俄かには信じ難い。ボールを握るのが好きな相手だからこそ、取りどころを明確にしてショートカウンターで一刺ししたいところ。


メンバー

 ウチは前節からノーチェンジ。ある程度前節の内容に手応えはあったのだろう。一方で、櫛引と酒井が今節もメンバー外となると、単なるスキップではなく何らかのアクシデントがあった可能性は高い。ベンチには勇利也昨年7月の負傷後初のベンチ入り。

 対する徳島も引き分けた前節仙台戦からノーチェンジ。ウィンドー最終週にPanic Buy気味の加入リリースのあったチアゴアウベスがいきなりベンチ入り。山形にいた方ではなく、岡山にいた方のチアゴアウベス(山形の方はちょっと前にヴェルディ移籍)。

前半

 ここまで6戦1勝のホームチームと6戦未勝利で目下4連敗中のアウェイチーム、順位表の1番下とその1つ上の両者の直接対決。コイントスで勝利した徳島は風上のエンドを選択し、ウチのキックオフで試合が始まった。ウチはスタートから3バックスタートの形を採る。

 4分、いきなり徳島がチャンス。ウチの自陣でのビルドアップ、中塩から1つ飛ばして髙澤に付けようとしたパスが内側にズレたところを永木が掻っ攫う。そのこぼれを杉本が拾って前を向いて左に運ぶ。杉本→橋本→児玉と繋ぎ、児玉がDFラインの裏に柔らかいボールを供給。そこに大畑と城和の間を抜け出した坪井が反応するもミートしきれず。

 6分、徳島に決定機。ウチが徳島のビルドアップに対して前から掴もうとするも簡単に剥がされて徳島の左から右にボールが推移。中央の永木から柿谷がライン間で動いて風間の脇でボールを引き出して中野へ。中野は周りを確認しながらボールを持ち、オーバーラップしたエウシーニョへスルーパス。エウシーニョはゴールライン際まで到達してから少しずつ後ろに戻り、一度児玉に預けてから急加速してリターンを受けてPA内でフリーになる。正面には中塩が立ってコースを消したが、エウシーニョは左足で巻くボールを蹴る。これにファーで坪井が合わせたものの、シュートは枠を逸れる。
 ウチはマーカーに対して各々がそのまま付いていったものの、空いたスペースを徳島に簡単に使われるのと、ファイナルサードに徳島が入った後は全く持って限定できずに自由にボールを動かされた。エウシーニョも坪井も捕まえられておらず、PA内でフリーにするとなると厳しい。

 徳島はエウシーニョ片上げでのDF3枚で回しつつ、1つ前で永木が角度を付けるのが基本形。ただ、エウシーニョと入れ替わるように児玉が落ちてきてゲームメイク。
 ウチは佐藤・平松・髙澤の3枚で最終ラインにそのまま当てに行くが、永木と児玉の所への牽制がなかなか難しい。永木にはアマ、児玉にはエドが見るような役割には見えたが、エドは大外のエウシーニョも気にしながらの対応。そこに中野が絡んでくるとやや情報過多になるも、中塩と連動して何とか決壊せずにやり過ごす。

 20分過ぎから少しずつウチもボールを落ち着かせるようにはなる。田頭とエドの両WBが幅を取ってCBとの深さも意識してボールを受ける。ここは相手の4バックとの噛み合わせで優位に立てるポイントであり、そこを起点にしてCMFにボールを落として展開しようと試みる。加えて、左にボールがある局面では佐藤がかなりインサイドに入ってきてパスコースを作ろうとしていた。

 36分、徳島がゴールに迫る。右サイドで田頭が背負いながら受けたところを突かれてロスト。坪井が単騎で仕掛けてきたがアマと大畑でサンドして事なきを得る。しかし、アマが前に付けようとしたボールが杉本に当たって永木の元に収まる。フリーの永木はすぐに斜め前の中野へ。中野は右足でコントロールしてから左足を振り抜く。鋭いシュートは枠を捉えていたが、ここは石井が見事なセーブでチームを救う。
 押し込まれた際に陣地回復できずにロストしてそのまま攻撃を受けることはこれまでの試合でも見られたが、この場面でも同様の事案が発生。スクランブルといえど、枚数は揃っていたし、誰がボールホルダーにチャレンジ行くかははっきりさせたかった。ただ、ここでは髙澤が戻ってきてギリギリでプレッシャーをかけた。

 徳島が敵陣にてボールを動かす時間が長く、それだけチャンスも作っていたが決定打に欠いてスコアレスで折り返し。

後半

 後半開始時でのメンバーチェンジは両チームともになし。ウチは後半は風下での戦いとなり、立ち上がりは特にアラートに入りたいところ。

 50分、徳島が攻め込む。相手のクリアのセカンドボールをアマが回収したがコントロールしきれず杉本がハーフウェー手前で刈り取る。杉本はそのまま敵陣に入り、右に流れた中野へ。中野はエウシーニョに付けると、エウシーニョが隣のレーンにゆっくり運びながらパスコースを探り、PA角を取った杉本に縦パスを刺す。半身で受けた杉本は右足アウトサイドで身体の向きと違う方向にパスを出し、柿谷とワンツー。ここは風間が身体を張って潰しに行ったが、こぼれを児玉が拾ってすぐに坪井に付ける。坪井は反転しながらシュートを打とうとしてキャンセルしたが、強引に時計回りにターンして左足を振る。ここは城和が距離を詰めてブロック。

 ウチも52分に1つ形を作る。大畑がボールを持った局面で田頭がインサイドで止まって受けようとしたが、永木がチェックに来ていることを察して外側に動いてワンタッチで佐藤に渡し、自らは大外をオーバーラップ。佐藤はボールを持ってレーンを横切って中央に入り、身体を開くように見せかけてキャンセルし、右の田頭へ。高い位置を取っていた田頭は佐藤と大畑の動き出しを見て囮に使い、アマに落とすと、アマはインスイングのボールを入れる。このクロスに髙澤が頭で合わせるもジャストミートせずにスアレスの抑えられた。
 田頭が前節同様に内側の立ち位置を取り出したことで、やや前進しやすくなり出す。永木を外側に引き摺り出すことでスペースが生じるので、そこを活用できるはず。

 59分、徳島は杉本→島川、中野→チアゴアウベス、児玉→ブラウンノア賢信の3枚替え。ウチも同じタイミングで佐藤→永長、平松→佐川の2枚替え。それぞれオフェンシブな選手を入れ替え、ギアチェンジを模索。

 この交代を機にどちらもややオープンになっていく。ウチはバイタル、徳島はミドルサードから縦への一刺しのクオリティに欠き、ボールが落ち着かずに攻守が入れ替わる展開が続く。

 69分、ウチのチャンス。チアゴのドリブルに対して風間とアマが囲ってボールを奪うと、中塩→髙澤→アマとワンタッチで繋がり、アマもワンタッチで前に放る。ややアバウトなボールだったが佐川が収めて中央のアマへ。アマは永木の後ろからのチェックにも負けずに前進し、右大外の永長へ。永長は左足で細かいタッチを見せてカットインを狙いつつ、斜めにランニングしてきた田頭に渡す。田頭は身体の向きに注意しながらワンタッチでクロスを入れると、ニアの髙澤・ファーの佐川のさらに後ろのエドがヘディング。下がりながら且つゴールからの距離もあったためシュートに勢いはなくスアレスに抑えられたが、ボール奪取から多くの手数を掛けずにPAまで侵入した。

 徳島は島川と永木の2枚が中盤で並ぶような配置となり、その1つ前に柿谷がフリーマンとして漂う。色んなところに柿谷が顔を出すので捕まえにくいのと、ボールが前に進めば自らもフリーランしていくからマークの受け渡しも大変。一方で、ボールを回すリズムを作ろうとしても距離感が短いが故にウチのディフェンスがそこまで動かない。エウシーニョもボール触りたくて内側に入ってきたりすると、数的優位を作ったと言えどあまり効果的ではなさそう。素早く外に広げられればウチのスライドも大変なんだが、捏ねすぎる間にウチも陣形整えられる時間を得る。

 ただ71分、徳島がネットを揺らす。徳島右サイドでボールが回っている中でウチはかなり重心が後ろに落ちる。チアゴが後ろで作り直そうと戻したタイミングでもラインアップがほぼできず、3ラインがかなり後ろ寄りに。徳島は最終ラインで左サイドへとボールを動かし、森に渡ったタイミングで永長がスイッチを入れるも、森との距離は詰め切れず。LSBの橋本に対しても田頭がアプローチして縦を消そうとしたが、上手くハーフスペースに通されてPA角で坪井に収まる。大畑とのコンタクトで坪井はバランスを崩すが球際の強さでマイボールにすると、マイナスで柿谷へ。柿谷はオープンタッチで中を向いてフリーの島川に送ると、1stタッチで中塩を剥がす。シュートを打たれそうになったが大畑がブロック。しかし、そのルーズボールに反応したチアゴが左足を振り抜き、このシュートが石井の手をすり抜けてゴールへと吸い込まれた。
 が、ブラウンノア賢信のポジショニングが石井の視界を遮ってプレーに干渉したとしてオフサイドの判定。完全にやられていただけに、九死に一生を得る。

 73分、徳島は坪井→髙田、ウチもアマ→勇利也の交替。遂に勇利也がピッチに戻ってきた。

 76分、チアゴアウベスに再びの決定機。永長がPA脇で橋本を倒してしまい与えたFK。いつも通りゾーンで構えるウチに対し、永木がボールを跨いでゾーン全体を押し込みスペースを作り、橋本がマイナスでグラウンダーのボールをチアゴに届ける。フリーのチアゴがまたも左足を振り抜く。デザイン通りのプレーだったが、石井が見事な反応を見せて防いだ。

 さらに、その流れで50:50の浮き球のボールが続く中、チアゴに対して永長と勇利也が寄せてボールを奪うとそのままカウンター発動。勇利也は左の佐川に流し、佐川はワンタッチで右サイドのスペースに展開。そのスペースに走り込んだエドが浮き球を右足でコントロールして体勢を整える。ややタッチが乱れたもののボールを確保し、足裏を用いて相手の逆を取り、右で2つ細かくタッチしてタイミングを外し、最後は左足でシュート。スアレスも一歩も動けないシュートが決まり、先制に成功。
 かなり危ないピンチを防いだことに始まり、ルーズボールを先にモノにしてからトランジションで完全に相手を上回った。佐川のパスのフィーリングは前々から発揮されていたが、良くあのコースとエドを見つけた。そしてエドも後ろからの浮き球を何とかコントロールし、田頭のランニングを上手く囮に使って中に切り込んだ。ウォッチするしかない完璧なシュートでスアレスの壁をようやく打ち砕いた。

 81分、ウチはエド→惇希、髙澤→和田の2枚替え。強度を維持しつつ、ボールを落ち着かせられるポイントを作ってクローズに向けての作業。

 和田がLSHっぽく振る舞う5-4-1の形で構える。リスク考えてハッキリプレーしているのと、惇希が低い位置からボールを運んで上手くファウルをもらって時計の針を進めていく。

 89分、徳島は柿谷→カイケで最後のカードを切る。カイケを前線に残してのパワープレー。

 90+2分、徳島のチャンス。ハイボールを惇希がクリアしたが、永木が拾って島川へ。島川からの対角線のボールにカイケが競り勝ち、ゴールエリア付近でブラウンが収める。ブラウンは城和を背負いながら前を向いて強引に左足を振ったものの、腰が回らずに左に流れていった。

 90+3分、またも徳島がパワープレーでチャンスを作る。右で組み立てるも前進できずに最終ライン経由して左サイドへ。森が敵陣浅い位置でボールを運び、左大外の髙田へ。ハーフスペースには橋本もいたが、高田はアーリークロスを入れた。ストレート系のボールは伸びていき、中塩の背後でチアゴが合わせたが枠の上。

 90+6分、徳島のラストチャンス。左サイドのスローイン、橋本が森とのワンツーで前を向き、左足でクロス。中塩と城和がボールに反応したものの後ろに流れてしまいチアゴの元に届く。左足のボレーで叩いたシュートは無念の宇宙開発。トラップの後に手に当たっていたように思うが、いずれにしてもすんでのところで事なきを得た。

 パワープレーで殴られながらも最後まで耐え抜き、1-0で終了。

雑感

 何はともあれ今シーズン初勝利&初クリーンシート。

 守備は耐えたというか外部的要因に救われたというか…。2ライン形成の位置が低いあまりに相手に寄せるまでに要する時間と距離が長くなっていてプレスのスイッチを入れにくい。かといって構えて弾き返せるほどの強度も現時点で有している訳ではないので、押し込まれる時間が続いてしまう。それでも0で終えたというのは1つの成功体験に違いない。相手のクオリティ不足で助かった側面は受け入れつつも、やはりクリーンシートであれば必ず勝点を拾えるわけで、最終盤の球際のインテンシティを維持したい。

 オフェンスはもうカウンターで殴る。田頭がボールの動かし方にどんどん適応しているのは収穫であり、立ち位置動かすことで相手の配置ごと変えるえさせることもできた。あとは佐川の足元を使わない手はない。ボール収まらないで相手にボールをプレゼントする回数が多いのは前半から気になった部分であるが、背後へのチャレンジも見られた。もう少しボールを握りながら前進できると楽にはなるけど、現時点では持たせてのショートカウンターで引っ繰り返すのが現実的か。

 「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という表現がしっくり来る試合。両チームのチーム状況が色濃く表れた試合であるが、細部で相手を上回ったことで勝利を手にした。楽な試合は今後も1つとてないが、それでもどこかで相手を上回って勝機を見出す。

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