風鬟雨鬢 vs横浜FC 0-1

 前半から押し込まれて先制を許し、そのビハインドを跳ね返せないまま敗れた前節。後半は数的不利になる時間も長かったが、1点が遠かった。耐える時間はどの試合でも間違いなくあるが、人へのアプローチ、ボールへのアプローチはこだわらないとならない。

 シーズン初勝利を目指して中3日で乗り込む今節の相手はフリエ。昨シーズンはJ1で戦っていたが降格して2年ぶりの対戦。
 2022シーズンより指揮を執る四方田体制3年目。ミシャの影響が色濃く表れるスタイルで2022シーズンはJ1にへと駆け上がっていった。2023シーズンは前半戦は苦しみながらも要所で勝点を拾っていたものの、夏場に小川航基がオランダへと巣立っていったことで勝点獲得ペースも落ちていく。終盤は湘南・柏との三つ巴の残留争いを繰り広げていたが、当該2チームとの6ポインターを落としたことで降格。
 3-4-2-1でWBが高い位置で幅を取ってハーフスペースを狙ってくるのは間違いない。因みに前節RWBを務めていたのは山根永遠である。昇格争いをするであろう山形に完勝したと思いきや、前節は北関東の某チームに初勝利を献上するなど、まだ戦績は安定しない。また、エースとして期待されていた森海渡が前十字靭帯損傷で長期離脱のリリース。とはいえ、選手層はリーグ屈指であり、各々のクオリティは高い。森の代わりに出てくるのは櫻川である。札幌から福森が加入したので、セットプレーが脅威となる。

 2年前に対戦した際はホームで殴り合い、アウェイはミネイロに殴られての敗戦となった。相手が攻撃大好きなのは確かだが、ボールを奪った直後はウチにとってのチャンス。また、福森のところを狙って仕掛けていくのは重要。福森にボールを自由に蹴られる回数が多ければ多いほど、ウチが勝つ可能性は低くなる。簡単な相手ではないけど、やるべきことをやったら結果が着いてくるはず。


メンバー

 ウチは前節から1枚変更。有給のアマに代わり玉城がプロ初スタメン。北川が今シーズン初のメンバー入り。

 対するフリエは敗れた前節から4枚変更。山根→中村、和田→三田、武田→中野、櫻川→伊藤。

前半

 ピッチアップ時から降り始めたやや雨脚強めの雨はKO前に止み、日差しも差していた。ピッチはやや水を含んで滑りやすいコンディション。

 フリエはサイドでの数的優位を使って前に進みつつ、カプリーニの所でポイント作ってボールを収め、そこから対角の小川や中野に展開。ウチは中塩や風間からDFラインの背後を狙い、髙澤・佐川・佐藤が抜け出していく。

 11分、フリエが最初のセットプレーで試合を動かす。右からのCK、福森のストレート系のボールにファーで伊藤が頭で合わせると、ディフレクションしてゴールラインを割る。ウチのゾーンの外側を狙われ、そこを一撃で仕留められた。

 ゴールが生まれたCKに繋がるプレーもそうだが、小川がかなり内側に入ってラインブレイクの動きを繰り返す。当然酒井はその動きをケアしなければならないが、その外側には中野がいるしユーリも顔を出してくるので、上がっていた大畑や佐藤が戻ってくる距離も求められる。

 対して、ウチは佐藤がこれまでの数試合よりも自由にポジションを取ってボールを引き出そうとしていた。髙澤が少し落ちたことで生じたスペースに走り込んだり、佐川の近くに立ったりと自らがボールサイドにいるか逆サイドにいるかによってポジションを変えていた。大畑もそれを察知して距離感を気にしていたようにも見えた。

 22分、思わぬ事態が発生。髙澤がボールを収めたところに岩武がタイトに寄せてプッシュ。これによってもつれた際に髙澤の足が岩武に当たる。髙澤が立ち上がり睨み合った刹那、岩武が手を出す。これが報復となり一発レッド。それまでの流れを見れば言い分はあるだろうが、情状酌量の余地はない。
 数的不利となったフリエは中野を下げて山根を投入。山根をLSBにして4-4-1の形。

 数的有利となったことでウチは常に1人余る状況だが、なかなかフリエの4-4のブロックの内側に入れない。相手がAPTを短くするのは百も承知だが、インプレーだったとしてもミドルサードまでしか入れない。それでも大畑が外に張って佐藤がハーフスペースに入り、そこに玉城が絡むことで何度か形を作る。玉城は佐川に刺したり、惇希まで飛ばしたりとゲームメイク。

 45+2分、玉城から佐川に斜めのパスが通り、佐川が前を向いたところで倒されてFKを得る。佐藤と風間が構える。佐藤の左足から放たれたシュートは枠を捉えていたが、市川がセーブ。
 直後のスローインでも中塩がロングスローを入れ混戦となるが、佐川のシュートはブロックに遭う。

 数的有利にはなったものの、なかなか攻撃の糸口を掴めないままHTを迎える。

後半

 後半開始から大畑→田頭。田頭はIH化してユーリをピン止めし、佐藤へのパスコースを作るor佐藤が孤立しないように距離を補完する役割。田頭はハーフスペースを走るので、そこに佐藤からパスが出ればニアゾーン取れるとの思惑だが、佐藤と対峙する山根が粘り強く対応しており、なかなかそこから先にボールが進めない。1つ剥がせばやや守備に難のある福森の所で勝負できるのだが、山根に時間を掛けさせられてウチは作り直すしか選択肢がなくなる。

 55分、ようやくウチのシュートチャンス。佐藤のクロスを市川がパンチングしたセカンドボールを風間が中央で確保して左の惇希に展開。惇希は縦を模索しつつ風間にリターン。フリーの風間はインスイングのボールを入れると、PA中央で佐川がヘッド。しかしこれは右に逸れる。
 高い位置まで押し込めば深さ使ってフリーできるし、佐川は後から飛んで競り勝てるのは流石。

 62分、佐藤→永長、惇希→エドの2枚替え。自ら運べるタイプを両サイドに配置してより仕掛ける姿勢を強める。

 が、そう簡単に上手くいかない。永長と田頭がお互いに使いたいスペースを喰ってしまってノッキング気味に。球離れが遅くなり詰まって後ろで作り直す作業が多め。そうこうしているうちに相手の圧力を受けてロストして撤退で流れ掴めないという悪循環。

 69分、玉城→和田。和田をそのまま中盤に置き、テンポアップを図る。
 フリエも72分、三田→和田、伊藤→櫻川、カプリーニ→村田の3枚替え。カードトラブル、強度維持、前でのポイント作りといった明確な意図。
 74分、ウチは佐川→北川で最後のカードを切った。

 4-4ブロックの外回りでボールを動かしていてもそこから刺す局面にならず、前線の選手はボールタッチの回数は限られていた。前進することができず、酒井がアーリーを入れてという形が頻繁に発生。そこから仕留めれば勿論最高だが、残念ながらなかなかゴールに結びつけることができないまま時計の針は進んでいく。

 終盤は7割程度ボールを持たされたが効果的な攻撃を繰り出せず、遂に90分を終えてしまった。

雑感

 リードしているチームに退場者が生じた場合は往々にして塩分要素を強めることはあるが、約70分という時間でそれを打ち崩せなかったのが悔やまれる。必ずしも数的有利がアドバンテージとして作用するわけではないが、プラスに作用させたかったのは確か。

 守備時は最初のセットプレーで失点し、退場者が出た後はあまり相手も前に出てこなかったので危険なシーンは限られていた。人を掴みに行こうという意識は強く持っていたが、個々のポテンシャルで殴られると負担が大きい。ヤンツー時代の金沢がマンツーマン徹底して強度保っていたが、マンツーマンやるなら練度は必要。いくら詰めてもカプリーニにボールは収まるし、ユーリに前を向かれることもある。中盤のアプローチの仕方は試合後コメントでも言及されていたが、その認識の共有はしたい。

 ボールを繋げることが自己目的化して何のために前に進めるのかを見出すのが難しい。動き出しにしても立ち位置にしても狙いはあるが、果たして遂行することが可能なのか。玉城がボールを動かして何度か前進したのは収穫だったが、全体としてテンポアップする局面が後半はほぼなかった。相手のブロックの敷き方を観察するのも大切であるものの、そこからどうやって動かしていくのよっていう部分がピッチ上でも曖昧というか…。

 5試合で未だ勝利なし。我々傍観者以上に選手たちの方がやきもきしているに違いない。ここまでなかなか機能しているとは言い難いが、どこで現実路線に切り替えるのか。このまま理想形を追い求めることでしか得られないものはあるが、それと引き換えに失うものも多い。ここから下す決断によってある程度シーズンや大きく言えばここ数年が決まるかもしれない。
 どうなったとしても、腹を据えて見届ける。

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