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RedBull X-Alps 史上初の女性アスリートのゴールとその意義

欧州で人気の過酷なレース「RedBull X-Alps」で、史上初女子ゴールをしたエリ・エッガー。今週末に、この女性アスリートの特集番組が NHK BSで放送されます。

放送日は、今週末の土曜日。

「風をつかめ2023 15min.」

  • 3/30/2024(土)09:00~09:15 #6 自分を信じて(エリ・エッガー)

RedBull X-Alps は、パラグライダーによる飛行とハイクだけでヨーロッパアルプス山脈を 1,200km 先のゴール到達を目指して競う、世界で一番過酷といわれる冒険レースです。

エリザベス・エッガー、略名エリー・エッガーは、2023年大会で史上初の女子ゴールを達成しました。今回は、NHK BS での特集が放送されるこのタイミングで、今年3月にスポンサーである Ozone Paragliders のウェブサイトに本人が寄稿したレース手記をご紹介したいとおもいます。

ゴール自体がもちろん偉業で、私も、そしておそらく多くの日本でパラグライダーをするパイロットの方も、興味の量はそれぞれ違うとはおもいますが、レースゴール時にオンラインで速報で情報に触れたし、人によっては、NHK BS がこのレースを特集して放送した「風をつかめ 2023 ヨーロッパアルプス大横断レース」という番組の中でもこのゴールについて触れられているのを観たと思います。そして、もちろん凄いとは思いました。

でも、スポンサー企業の PR活動の枠を超えるような、エリ・エッガーの熱量のこもるレース手記を読み、私自身が、女性アスリートが受けるプレッシャーや、史上初女子ゴールの意味を理解できていなかったと感じました。

事前にこの内容を知ったうえでゴールのニュースを知ったり、NHK BS の放送番組をみれば、違うレベルの感情が沸き起こったであろうと思うのです。

だからこそ、今回 3/30/2024(土)09:00~の放送前に紹介をしたい。

番組放送については、日本語で唯一のパラグライダー専門メディアである下記の PARA WORLD WEB でも紹介されています。エリ・エッガーの写真がヘッダーに使われているので、こちらもご覧下さい。こんな人。

ちなみに、放送日時は NHK がシレっと変更することがあるので、そんな事態になった時はお察しください。

本番組も、元々 3/13(金)に放送が予定されていましたが、全く告知がなく延期となり、NHK からは、上記の PARA WORLD Web で放送予定更新の案内がありしばらくたってから、『総合で「国会」や「ニュース」が編成されたことにともない NHK BS で「大相撲」を時間延長して編成したため休止となり、再放送がきまった。』との案内がありました。

私も含め、楽しみにスタンバっていた多くの視聴者がアタマに「?」を沢山浮かべながら、延々と大相撲春場所を見るはめになる事変を引き起こした経緯があります。

RedBull X-Alps とは?

パラグライダーをするパイロットなら、RedBull X-Alps をほとんどの方がご存じで、今更だと思いますが、今回はまだパラグライダーをしたことが無い
方にも番組を楽しんでいただけるよう、改めて簡単にご紹介をしておきたいと思います。

RedBull X-Alps 公式 HP 「Route」より

既に書いた通り、パラグライダーの飛行とハイクだけでヨーロッパアルプス山脈を 1,200km 先のゴール到達を目指して競う冒険レースです。

RedBull の本拠地であるオーストリア・ザルツブルグをスタートして、ヨーロッパアルプス山脈をめぐりドイツ、スイス、フランス、欧州最高峰モンブランで折り返してイタリアわたり、設けられた 15か所チェックポイントを通過したうえで、最終ゴールであるオーストリア・ザルツブルグに戻り、ツェル・アム・ゼーにあるツェラー湖の湖上に設けられた着陸用のフロートにゴールします。

参加するアスリートに許された移動手段は、徒歩とパラグライダーによる飛行のみ。

動力のないパラグライダーで飛び立つために登山をする場合や、悪天候等の理由でパラグライダーが飛べない場合、その機材を自ら担いで徒歩で移動する大会ルールとなっており、また、大会ルール上、同行者(サポーター)が1人認められており、移動中の食料・着替え・テント類等の運搬、食事の調理、競技者の治療など幅広い分野で同行者の支援を受けることが可能です。

1位のアスリートがゴールしてから48時間経過時点、もしくは大会が設定した日時となるとレースが終了になります。

また、それ以前でも、原則48時間毎に競技者の足切りが行われ、その時点で競技中の最下位の競技者は強制リタイアとなします。

参加者は毎日23時から翌朝4時までの間はハイクも含め移動が完全に禁止され、21時から翌朝6時まではパラグライダーでの飛行が禁止されます。違反をした場合は移動禁止のペナルティが課せられます。

レースのスタート前日に行われる「プロローグレース」といわれる前哨戦での上位選手には、「ナイトパス」と呼ばれる、夜間移動禁止のルールが免除される権利が与えられます。 一位に2回のナイトパス利用の権利、二位に1回の権利が与えられ、これらすべてのレギュレーションがレースの綾となることがしばしばあります。

総移動距離は 1,800km 以上に及び、レース期間は約 2週間にわたる過酷なレースで、2003年に第一回大会が開催され、現在 2年に1度のペースで開始がされています。 

RedBull の公式ページ(日本語)には、ビデオクリップでのドキュメンタリー等もあり、世界観をより詳しく知ることができます。

また、上で少し触れた通り、今回の 2023年のレース全体の様子は、NHK BS で「風をつかめ 2023 ヨーロッパアルプス大横断レース」という番組で、2023年10月17日に放送がされました。現在、NHKオンデマンドで閲覧可能となっていますので、ご興味をいただければ是非ご覧ください。

今回の番組の「風をつかめ2023 15min.」は、このレースを、レース全体ではなくアスリート個人をテーマに深堀りした15分番組で、そのエリ・エッガーの回ということになります。

エリ・エッガーのレース手記を紹介したいと思うのですが、その前にもう少し背景を説明させてください。

狭き門と絶対王者

開催年によりレースに参加できるアスリートの人数はやや変わりますが、。今回の 2023年のレースはルール上、最大35人までと決められていました。

大会側がエントリー受付をはじめると、多くのアスリートが類似するレースやトレランのレースでの実績を添えてエントリーをしますが、そのなかで出場できるのは大会側のセレクションにより選ばれた者のみ。2023年大会のセレクションで選出された出場アスリートは32人で、そのうち 4人のみが女性選手です。レースに出場すること自体が極めて狭き門なのです。

また、このレースには絶対王者がいます。スイス人のクリスチャン・マウラーです。2009年大会から連続優勝をしており、今回の 2023年大会では 40歳を迎えていましたが、やはり強く 8連勝を飾りました。レースがスタートして、公式サイト等で結果を追っていると、序盤は競うのです。しかし、中盤以降で必ず異次元の強さをみせて一人抜け出し、そして必ず勝ちます。

RedBull X-Alps A Athletes Christian Maurer より

それでも、近年のレースでは、このレベルの絶対王者を最後まで追いつめ、勝つのではと期待させるアスリートがいました。何人かについて紹介をしたいと思います。

RedBull X-Alps A Athletes Maxime Pinot より

マキシム・ピノ(フランス)

2019年のレースでは 2位。2021年も序盤からトップでリードを保ち、最後まで追い詰めながら、モンブランを通過した後の終盤 8日目に一人集団とは別方向へ向かったクリスチャン・マウラーにつき放され、サンダーストームに行く手を阻まれ涙の 4位。2016年のパラグライダーワールドカップの勝者、また、トライアングルフライトというパラグライダーのフライト様式で 308.9kmの世界記録保持者。今回の 2023年のレースは 3位。

RedBull X-Alps A Athletes Simon Overrauner より

シモン・オベラウナー(オーストリア)
2019年 5位。2021年 3位。2021年は、中盤を過ぎるまでマウラーを追い詰めた。特に、5日目の雨の中、約70km、標高差4,500メートルを走りきる強さを見せた時には、感動を覚えました。レース後の王者マウラーのインタビューでは、「スマートな飛び方でとても好きだ。プッシュせずに、無理に先を急ぐこともないが、それでも、最後は速い。飛行スタイルがスマートであれば、より遠くまで飛べる。」とこの選手のことが語られており、王者マウラーも自分を追い詰める選手として確実に意識をしていることがうかがえました。今回の 2023年のレースは 6位。

RedBull X-Alps Athletes Aaron Durogati より

アーロン・ドゥロガティ(イタリア)
2019年 9位。2021年 12位。20121年は、欧州最高峰のモンブランに迫る 6日目まではトップ集団につけ抜け出す候補の一人だった。Redbull Dolomiteman という、イタリアのドロミテで行われる、同種の Hike&Fly と呼ばれるパラグライダーとハイクの2日間の人気のある冒険レースで優勝 2回。今回の 2023年のレースは 8位。

RedBull X-Alps Athletes Patrick Von Kanel より

パトリック・フォン・コーネル(スイス)
2019年 8位。2021年 2位。絶対王者クリスチャン・マウラーと同じくスイス人で、比較的若く、代表的なパラグライダーの選手。マキシム・ピノと共にに、絶対王者クリスチャン・マウラーに勝てるのではと期待を抱かせる候補の筆頭。2021年のレースでは、中盤からマウラーと共にスイスチームで 1-2位のトップグループを形成しゴールした。今回の 2023年のレースは 5位。

今回 2023年のレースでは、この他に下記の選手が上位入賞し、NHK BS の放送でも別途特集され放送されています。特に、元パラグライダーのアクロバットフライトのチャンピオンのパル・タカツは、同じパラグライダーといっても全く競技の違う ReBull X-Alps で上位入賞したことが多くの人を驚かせました。陽気なハンガリー人で、見ていて楽しくさせる人気の選手です。

本日の放送となり間に合わない方がほとんどかと思いますが、後日 NHK オンデマンドでご覧いただける機会があることを期待し、「#2 王者の涙(クリスチャン・マウラー)」の回とあわせて視聴をオススメいたします。

ダミアン・ラカーズ(フランス)
パル・タカツ(ハンガリー)

「風をつかめ2023 15min.」

  • 3/28/2024(木)15:30 ~ 15:45 #5 不屈のフライヤー(パル・タカツ)

また、日本人唯一の参加でレース自体にも初参加の江本悠滋が見事ゴールを果たし、こちらも、NHK BS の放送でも別途特集され放送されています。

やや話が逸れましたが、こんな感じの過酷で男ばかりの山岳をめぐるレースの世界なのです。

歴代、女性アスリートももちろん参加していますが、全員ゴールできず、48時間毎の足切りルールにより、わりと早い段階でレースを去ることがほとんどです。

女性としてこのレースに出場していること自体が凄いことなのですが、私のような、パラグライダーのパイロットでもあり事業としても関わりながらも、こんなレベルのアスリート達のレースは別の世界で、公式ページのトラックログやレース中の Web の速報ニュースを楽しむ無責任ないち男性ファンの興味は、「誰が絶対王者マウラーを倒すのか」という純和風な判官贔屓か、感情移入がしやすい日本人選手の活躍に限られ、正直、これまでほとんど、参加する女性アスリートの活躍を意識したことがありませんでした。

今回、エリ・エッガーの手記をみて、最後までレースに残った女性選手が「ラスト・ウーマン・スタンディング」として表彰されることを知りました。そんなレベルです。

さて、Ozone Paragliders に掲載されたエリエッガーの手記をいていましょう。

本文は下記にあります。英語の記事の為、部分的に意訳してご紹介しますので、ご興味を頂ければ、是非、本文全体に目を通してください。機械翻訳でも十分伝わるので、熱量を直接感じましょう。

レース参加のプレッシャー

エリ・エッガーはオーストリア南部の出身。14歳でパラグライダーを始めて、現在はパラグライダーのインストラクターであり競技パイロットとして活躍しています。

Ozone Paragliders HP 「DESPITE THE ODDS」より

1995年2月24日産まれなので、2023年のレース当時は 28歳だったということになります。(どうでも良いですが、誕生日、私と同月同日だ。)

私はご本人を直接見たことはありませんが、上でふれた「PARA WORLD WEB」の中の人(この方も女性)によると、「何回かエリと一緒に大会で飛びました。性格も一生懸命なところも本当にかわいくて惚れそうでした。」とのことです。

この「一所懸命」という点は、実は RedBull Xalps公式 HP のエリ・エッガーのアスリート紹介ページにも表れています。アンケートへの回答が長文なのです。

他にもきっちり答えているアスリートは、もちろんいるのですが、先ほど挙げたパトリック・フォン・コーネルの紹介ページなんて、ほとんど1行で質問自体も少ない。ぶっきらぼうな性格なのではないか、だからろくな回答をしなくて使えるところが少ないから、大会側がページ作成に困って端折ったのではなかろうかと、パーソナリティに関するいらん妄想と、Web 制作に関するいらん心配まで浮かんできます。

やや話がそれました。

エリ・エッガーは、今回が初めての RedBull X-Alps のレース出場となります。

しかし手記をみると、上に絶対王者「クリスチャン・マウラー」を追い詰めるアスリートとして挙げた「シモン・オベラウナー」と「アーロン・ドゥロガティ」のサポーターとして、過去 2回レースを経験していると書かれています。

2019年にサポートしたシモン・オベラウナーは 5位。2021年にサポートしたアーロン・ドゥロガティ は 12位。

2回連続でトップレベルのアスリートのサポーターをするだけでも、そのレベルでの信頼を築いているということなので凄いことですが、それが女性で、かつ この順位の選手のサポータで、2021年は国籍の異なるベテラン人気選手アーロン・ドゥロガティのサポートをしていたとは驚きます。

June 2021. “Come on Aaron, it’s just a few more kilometres today!”
Haha, next edition I’ll tell you to go on when you are tired!”, he replied.
And there it was. The little thought in my brain which never really left again: next time it will be me crossing the Alps at the Red Bull X-Alps as an athlete!

Ozone Paragliders HP 「DESPITE THE ODDS」より

2021年 6月。「カモーン、アーロン。今日は、あと数キロよ!」「ははは、次のエディションでは、君が疲れた時に行くように言うよ。」と彼は答えた。

そうだったの。次回、Red Bul X-Alps でアスリートとしてアルプス越えをするのは私だ!という脳裏に浮かんだ小さな思いは、二度と消えることはなかった。

上の英語の意訳です

そして 2021年のレース中のアーロンとの冗談みたいなこのやりとりで、浮かんだ「次は自分がアスリートとして RedBull X-Alps でアルプス越えをする」という思いが消えなかったというのです。

A year later the thought was still running circles in my mind, should I really sign up for the toughest adventure race on the planet? Me? A girl, a woman and a lightweight one at that too?
I had seen the risks they had to take, the immense power required, the strong will and incredible piloting skills that were necessary. Am I even close to that level? Do I want to take that much risk? Is it worth it? Or is there another way, maybe there is a ‘my’ way?

Ozone Paragliders HP 「DESPITE THE ODDS」より

1年後、その思いはまだ私の頭の中をぐるぐる回っていた。地球上で最も過酷なアドベンチャーレースに本当に申し込むべきなのだろうか?私が?女子で、しかも体重の軽い私が?

私は、(2度のレースをサポーターとして経験することで)彼らが冒さなければいけないリスク、必要とされる莫大なパワー、必要な強い意志、驚異的なパイロットの技術を目の当たりにしてきた。

私はそのレベルに達しているのだろうか?
私はそれだけのリスクを負いたいのだろうか?
その価値はあるのだろうか?
それとも別の方法や、私のやり方があるのだろうか?

上の意訳です

やはりアスリートとして参加を申し込むにあたって、相当に悩んだ事が書かれています。

ヨーロッパアルプスを高い高度までハイクして、パラグライダーで長時間フライトをし、地上では体力の限界までハイクをするという行動を続けるので、リスクがあることも、パイロットとしてもアルピニストとしても高い技術が必要とされることも、それには強いパワーと意思が必要とされることも、もちろんです。

だから、RedBull X-Alps に申込をするアスリートで、リスクを意識しない選手はおらず、みな相当に悩むのだとは思います。でも、トップレベルの選手のサポートを 2回したからこそ、その経験で知り得たレベルでの葛藤があったのではないかと思うのです。

上述の NHK BS の番組「風をつかめ 2023 ヨーロッパアルプス大横断レース」でも、2023年のレースでクリスチャン・マウラー、マキシム・ピノ、パル・タカツのトップグループが谷越えのフライトをした際に、吹きおろしの荒れた強風につかまり「こんな経験は二度としたくない」とコメントをしているシーンがあります。そして、絶対王者クリスチャン・マウラーだけが、その荒れたコンディションを回避し、一人独走をはじめます。またしても、異次元なのです。

マウラーは、2021年のレース後のインタビューで、「X-Alps アスリートで成功するには、優れたアスリートであると同時に、コンペでハイスピード・フライトの技術を身に付けていて、グラハンの名手で、それに少しアクロの経験があると助けになる。ワールド・カップは、フルストールを経験したことがなくても参加できるが、X-Alps では、それは必要な基本的フィギアの一部だね。単に自分のグライダーの限界を良く知るためにも必要だ。」とコメントをしています。

パラグライダーの全ての競技とフライト技術に精通し、かつ高いレベルのアルピニストでアスリートであることを求められるということです。

体重の軽さは、パラグライダーの飛行には不利に作用します。エリ・エッガーは高いレベルを経験していたからこそ、軽量パイロットだからこそ、さらに悩んだのだろうと思うのです。

When the selection went public I received many congratulations and best wishes but also comments like “you only got the spot because you’re a girl”, “be happy, you don’t have pressure”, “as a girl, you’ve already won by being on the starting line”, “no one is expecting you to make it far”, “each day you stay in the race is a victory by itself”, “just don’t hurt yourself.”
Clearly expectations of my performance were, let’s call it “pretty low”. Maybe they’re right? Was it all a big mistake, am I going to make a fool of myself?

Ozone Paragliders HP 「DESPITE THE ODDS」より

選考が公表されたとき、私は多くの祝福と祝福を受けたが、同時に「女子だから選ばれたんだ」、「プレッシャーなんてないんだから、喜べ」、「女子だから、スタートラインに立っただけでもう勝ちなんだ」、「誰も君が遠くまで行けるなんて期待していない」、「レースに残る1日1日が、それだけで勝利なんだ」、「怪我だけはするなよ」といったコメントも寄せられた。

私のパフォーマンスに対する期待は、はっきり言って「かなり低い」ものだった。たぶん、彼らは正しかったのだろう。私は自分をバカにするつもりなのだろうか?

上の意訳です

そして、大会側のセレクションに受かり正式に参加が認められると、女子アスリート特有と思われる言葉をかけられたようです。

私は男性でおっさんなので、書かれていることにドキッとします。

やや話が逸れますが、自分の親の世代からすれば私はだいぶ女性の社会進出が進んだ時代を生きており、それを前提とした教育をされてきたとは思います。ですが、たとえば、男子サッカー選手と女子サッカー選手の待遇格差や改善に向けた労働組合の結成というニュースをみると、「プロとしての興行の収入自体に差があるんだから、待遇差があって当たり前でない?」という意見をもつ程度に、フェミニズム的思考に欠けるおっさんです。

だから、100% 善意のつもりで無神経に言ってしまいそうなのです。。。そして、そのような言葉は、女性アスリートにとっては、モチベーションを下げる不要な言葉か、差別感を与えてしまう言葉なのでしょう。

(※ 女子サッカーの待遇については、実際は、収益分配の仕組みからして不平等という状況にもあるようなのでご注意ください。)

改めて考えてみると、多くの競技が女子チーム同士でのゲームや女子の競技会を開催するのに対し、RedBull X-Alps に限らずパラグライダーの競技は、全ての競技で男女混合で、男子に比べて女子も特にハンディもなく全く同じ環境、同じ条件で一緒にプレイをします。

女子部門の表彰は男子とは別途あるとはいえ、やや特殊と言えば特殊で、男子に比べれば参加人数は絶対的に少ないし、プレッシャーがあって当然ですね。ましてや、RedBull X-Alps なのです。

チームの結成

Nevertheless, I immediately started training and I trained hard, determined to do my best and maybe also prove these voices wrong. But even the strongest athlete cannot do a good job without the right team so I spent a lot of time finding the right people to accompany me on this journey, to prepare and train together and ultimately become a team. By June 2023 the team was set: Nadine, my main hiking and mental supporter; Verena, a crazy good osteopath and social media pro; Benschi, a hobby sherpa and strong mountaineer; Daniele, a professional photographer; Julien, head coach of the French national team and finally Christoph my nutrition expert. With Julien and Christoph supporting from home and the other four taking care of everything on the road, we were ready to take on the challenge.

Ozone Paragliders HP 「DESPITE THE ODDS」より

とはいえ、私はすぐにトレーニングを開始し、ベストを尽くし、この声が間違っていることも証明しようと、懸命にトレーニングに励んだ。しかし、どんなに強いアスリートでも、適切なチームなしには良い仕事はできない。

2023年6月までにチームは決まった:
ハイキングとメンタルのメインサポーターであるナディーン、めちゃくちゃ優秀なオステオパシーでありソーシャルメディアのプロであるヴェレーナ、趣味のシェルパであり強力な登山家であるベンスキ、プロの写真家であるダニエーレ、フランス代表チームのヘッドコーチであるジュリアン、そして最後に栄養学の専門家であるクリストフだ。ジュリアンとクリストフが自宅からサポートし、他の4人が道中のすべてを引き受けることで、私たちは挑戦の準備を整えた。

上の英語の意訳です

ともあれ、エリ・エッガーは、親友であり、コーチであり、パイロットであり、どんな時も自分のヒロインであるネイディーンをサポーターとすることを決めます。そして、他に下記のようなメンバーでの 6人でのチームを組んだというのです。

  • シェルパであり強力な登山家

  • プロの写真家

  • フランス代表チームのヘッドコーチ

  • 栄養学の専門家

※ フランス代表チームのヘッドコーチと栄養学の専門家は自宅からのサポート

普段レースを観戦して見えるのは、参加アスリートであるパイロットと、サポーターだけです。こんなチームを結成するとは、初めて知りました。

クリスチャン・マウラーやマキシム・ピノのレース中の様子を紹介するブログや Youtube では、活動停止の時間に入るとサポートカーを止めてその脇でサポーター達が調理をしたり、二人が食事を取っていたり、その間に簡単なインタビューに答えている様子を目にすることがありますが、こういうチーム体制だからこそできるのですね。正にプロスポーツ。

ちなにみ、登山家については、レースのルール上、「場所によって大会運営側が経験豊富な登山家の同行を指示することがある」という指定があります。ルート選択のアドバイスも含めて、そんな状況に対応するためのチーム構成なのだと思います。

レースのスタートと序盤の躓き

A week before the start of the race, all teams met in Kitzbühel for organisational duties, photoshoots, interviews and final preparations. Seeing all these fit men running by the camper van, one faster than the other worried me, “was this really a good idea?” I became more and more nervous by the day, but the chances to run away and back out had long gone. Fortunately, we had an amazing team spirit that lifted me and gave me the power to believe in myself. Our confidence grew as the start got closer.
And then it was time. Time to show off, time to let go.

Ozone Paragliders HP 「DESPITE THE ODDS」より

レース開始の1週間前、全チームがキッツビュールに集まり、オーガナイズ業務、写真撮影、インタビュー、最終準備などを行なった。キャンピングカーのそばを、体格のいい男たちが一人、また一人と速く走っていくのを見て、"本当にこれでよかったのだろうか?"と心配になった。日に日にナーバスになっていったが、逃げたり引き下がったりするチャンスはとっくになくなっていた。幸いなことに、私たちには素晴らしいチームスピリットがあり、私を高め、自分を信じる力を与えてくれた。スタートが近づくにつれ、私たちの自信は増していった。

そして時が来た。誇示する時、解放する時。

上の英語の意訳です

ナーバスになりながらも、トレーニングを重ねてチームスピリットを高めて、そしてスタート!

Overconfidence is rarely helpful in competitions, less than an hour later after a couple of wrong decisions and being stressed by the others, I bombed out. “But it’s a hike and fly race isn’t it”?, “don’t worry, just take the glider and hike 200m up this skiing slope and take off again”. That’s what I thought when I landed, but I soon realised this was a bad idea with 15kg of additional ballast - I had to fly with a lead jacket and water ballast just to reach the middle of the weight range of my glider. Waiting for my supporters to help with this additional weight – athletes are obliged to carry the glider, harness, rescue, helmet and trackers by themselves, but ballast can be carried by supporters - all those doubting voices came back to me.
‘But who cares? the race is not over yet so keep moving!” Climbing up the next mountain I managed to do one more flight which at least gave me a better starting place for the following day. The rewards for the first day’s efforts were hugs and encouragement from everyone in the team. It is not over, we are going to complete this race our way.

Ozone Paragliders HP 「DESPITE THE ODDS」より

過信が競技に役立つことはほとんどない。1時間も経たないうちに、何度か判断を誤り、他からもストレスを受けた末、私は爆死した。

「でも、ハイク&フライのレースなんでしょ」「心配しないで、グライダーを運んでこのスキー場の斜面を200メートルハイクして、また離陸すればいいんだ」。着地したときはそう思ったが、15kgの追加バラストを積んでいてはまずいことにすぐに気がついた。選手はグライダー、ハーネス、レスキュー、ヘルメット、トラッカーを自分で運ぶ義務があるが、バラストはサポーターが運ぶことができる。

「レースはまだ終わっていないのだから、前進し続けよう!」。次の山に登ったとき、私はもう1回飛ぶことができた。初日の努力の報酬は、チームのみんなからのハグと励ましだった。まだ終わってはいない。私たちは私たちのやり方でこのレースを完走するつもりだ。

上の英語の意訳です

これは、レース後に公開された RedBull X-Alps の公式 HP でのエリ・エッガーのページのインタビュー記事でも語られているのですが、スタート直後にやや失敗し短い距離でボムアウトをしたらしいのです。

そしてその後、15kgのバラストを持ってヨーロッパアルプスをハイクする厳しさに直面したようなのです。

書かれている通り、グライダー、ハーネス、レスキュー、ヘルメット、トラッカーを自分で運ぶ義務があるものの、バラストはサポーターが運ぶことができる大会ルールです。ネイディーンに任せて、チームで乗り切った末での「初日の努力の報酬は、チームのみんなからのハグと励ましだった。」ということなのでしょう。

この部分は、レース当時オンラインでニュースを追っていただけではわからない所です。今回の大会全体について放送されたNHK BS の番組「風をつかめ 2023 ヨーロッパアルプス大横断レース」でも、取り上げられていなかったので、今回の放送に期待したいと思います。

やや話がそれますが、レース当時オンラインで GPSトラックやニュースを追っていて、絶対王者クリスチャン・マウラーがレースの序盤で突如「ナイトパス」を使い、夜間の行動制限を回避したことにおどろきました。ここで「ナイトパス」を使う理由がかわかりませんでした。

権利が得られるプロローグレースでは、マキシム・ピノが 1位で「ナイト・パス」を使える権利は2回、クリスチャン・マウラーは 2位だったため「ナイト・パス」の権利は1回のみです。元々、ライバルに比較して不利な条件のうえ、終盤に接戦になったときのことを考えれば、こんなに早く仕掛ける意味が尚更わかりませんでした。

NHK BS の番組「風をつかめ 2023 ヨーロッパアルプス大横断レース」では、何故、この時クリスチャン・マウラーが「ナイトパス」を行使したのかについて、取り上げられています。

既に放送は終わっていますが、「風をつかめ2023 15min.」#2 王者の涙(クリスチャン・マウラー)も、このポイントを深堀りした内容となっています。

NHK オンデマンドでの配信がはじまれば、パラグライダーを知らない方は、「#1 打倒・絶対王者(レース開始)」からみると、楽しめるはずです。

パラグライダーをしたことがあり、クリスチャン・マウラーを知っている方は、マウラーに対するイメージが変わるのではないかと思います。

欧州最高峰モンブランでの折り返しと、レースのクローズ

Focusing on my strengths in the air rather than my weaknesses on the ground, my goal was to fly more than everyone else each day. Because, as long as you can stay in the air, you are faster than even the strongest runner on the ground. Funnily enough “be slow” was the mantra I put on my instruments to remind me of that. Be slow in the air, but make sure you stay there and be patient in zero climbs or when others pass you. Just smile and enjoy the moment.

Ozone Paragliders HP 「DESPITE THE ODDS」より

地上での弱点よりも空中での強みに焦点を当て、私の目標は毎日誰よりも多く飛ぶことだった。なぜなら、空中にとどまることさえできれば、地上のどんなに強いランナーよりも速いからだ。

面白いことに、"be slow "というマントラは、それを思い出させるために私が機材につけたものだった。(注:グライダーの下面に「be slow」というロゴを張ってレースに参加しています)空中でゆっくり、でも確実にそこに留まり、ゼロ登りや他の選手に抜かれるときは我慢する。

ただ微笑んで、その瞬間を楽しむのだ。

上の英語の意訳です

そして、「私の目標は毎日誰よりも多く飛ぶことだった。なぜなら、空中にとどまることさえできれば、地上ではどんなに強いランナーよりも速いからだ。」と考えていたと。強い…。

パラグライダーを知らない方にご説明をすると、どんなに優れたランナーでも、優れたパイロットがパラグライダーで飛ぶ速さには勝てません。パラグライダーの直線での飛行距離の世界記録は男女共に 500km を超えていますが、このようなフライトでは平均時速 50kmを超えるスピードで 10時間以上のフライトをします。

今回 2023年の RedBull X-Alps で2位になったダミアン・ラカーズ(フランス)は、モンブランからイタリア北部の湖を越えてロンバード地方のソンドリオまでの226kmの距離の距離を11 時間 13 分かけてフライトしており、これは大会史上最も長いフライトです。このフライトがあったからこそ 2位となったと言えます。

下手なパイロットには「空中にとどまることさえできれば、地上ではどんなに強いランナーよりも速い」なんて言えませんけどね。。。目に見えない上昇気流の発生を読んでうまくつかめなければすぐに地上に降りてしまいます。

No matter how tired I became, my team kept joking and encouraging me to do my best. They talked me through difficult situations, made sure I was in the safest spot possible and stayed optimistic even when the conditions were bumpy as hell. You just live in the moment, one turn point after the other, days blur into one another and suddenly you land at Col du petit Saint Bernhard. Only then did I realise that I had actually achieved more than even I had wished for, I had just passed Mont Blanc which marked the half way point of the race. That was on day six and the goal closed at day twelve!

Ozone Paragliders HP 「DESPITE THE ODDS」より

私がどんなに疲れても、チームは冗談を言い続け、ベストを尽くすよう励ましてくれた。困難な状況でも私に声をかけてくれ、可能な限り安全な場所にいることを確認し、地獄のようなバンピーなコンディションでも楽観的でいられた。

次から次へとターンポイントを通過し、数日があっという間に過ぎ去り、突然コル・デュ・プティ・サンベルナールに到着する。レースの中間点を示すモンブランを通過したのだ。

それは6日目のことで、ゴールは12日目に閉ざされる!

上の英語の意訳です

チームで進み、欧州最高峰のモンブランを通過したのが 6日目。今回のレースでは、モンブランがちょうど折り返し地点です。そして、レースは 12日目に終了。

RedBull X-Alps のルールでは、一番早くゴールした選手の到達時刻から 48時間でレースが終了するか、その時間が大会が定めた終了日時よりはやければ、レースの終了時刻は大会が定めた時間となるとなっています。

今回 2023年のレースのルートは「飛行するセクションが多い」と言われ、天候に恵まれれば高速レースとなることが予想され、実際にトップのクリスチャン・マウラーのゴールは、史上最もはやい 6日6時間1分51秒という記録となりました。だから、レースの終了日時が 48時間後ではなく、エリ・エッガーが折り返し地点であるモンブランを過ぎた 6日後、レース開始から12日後となったのです。

今回のレースでは、「飛行するセクションが多い」ルート設定で、実際に高速レースとなったことが、エリ・エッガーにとっては自分の強みにマッチして有利に作用したともいえるでしょう。

史上初の女子ゴールと女性アスリートのゴールの意義

“Will you be the first woman who makes goal?” – the next unrealistic question arose. But was it really that unrealistic? Before the race we didn’t really plan the route after Mont Blanc, we concentrated on what we thought would be the only part needed, the first half. Luckily the routes in 2019 and 2021 passed the same area so I knew them from supporting Aaron in the years before. Each day I became more confident in the air, sometimes even enjoying the rough conditions, or at least for some moments. I pushed my own level and limits higher than ever before. Luckily my teammates had their eyes on me and gave me perfect advice as to when to land if the thunderstorms were too close. That helped me to avoid the really dangerous situations and during the next few days I managed to fly back into the Dolomites.

Ozone Paragliders HP 「DESPITE THE ODDS」より

"ゴールした最初の女性になれますか?" - という非現実的な疑問が浮かんだ。しかし、それは本当に非現実的だったのだろうか?

レース前、私たちはモンブラン以降のルートをあまり計画せず、必要なのは前半部分だけだと考えて集中した。幸運なことに2019年と2021年のルートは同じエリアを通るので、その前の年にアーロンをサポートしていたので知っていた。

日を追うごとに空中で自信を持てるようになり、時には荒れたコンディションを楽しむことさえあった。自分のレベルや限界にこれまで以上に挑戦した。幸運なことに、チームメイトは私を見守ってくれていて、雷雨が近すぎる場合はいつ着陸すべきか、完璧なアドバイスをしてくれた。そのおかげで本当に危険な状況を避けることができ、その後数日間、なんとかドロミテに戻ることができた。

上の英語の意訳です

もちろん、高速レースとなり、それが自分の強みと一致して有利に作用したからといって、それだけでゴールなんてできないのですよ。

折り返しの地点で、レース終了まで残る期間は、ここまで費やした 6日間と同じ期間。更には、折り返し地点のモンブラン以降の計画は柔い。

でも、2021年にアーロン・ドゥロガティ(イタリア)のサポートターとしてレースを経験したことが生きるのです。そして、チームでイタリアのドロミテに到達。

人に歴史ありと言いましょうか、かつチームスピリッツです。私は、この部分から感動を禁じ得ません。

Meeting more and more people along the way, they either wished me luck or even accompanied me and my team for some kilometres was totally inspiring for me. Only when Julien calculated the remaining distance to reach goal by walking - 56km and 3000m vertical a day, 4 days in a row before the goal closes – did the vision of actually reaching goal became a serious reality. In the end it took me less than two days to reach the float in Zell am See.

Ozone Paragliders HP 「DESPITE THE ODDS」より

ゴールまで応援に来てくれたサポーターや友人たちの顔を見て、初めて自分が知らないうちに夢を叶えていたことに気づいた。

私は地球上で最も過酷なアドベンチャーレースに参加し、モンブランに到達し、最後までレースに残っただけでなく、完走したのだ。

完走し、ゴールに到達したのだ。不可能を可能にする喜びを分かち合い、どんなことでも可能だということを証明することは、私の人生で決して忘れることのできない感覚だ。

上の英語の意訳です

更にここ。「私は地球上で最も過酷なアドベンチャーレースに参加し、モンブランに到達し、最後までレースに残っただけでなく」。

これを読むと、レース参加時の目標は折り返し地点の、欧州最高峰「モンブラン」だったのではないかと感じるのです。多分、だから、後半が「私たちはモンブラン以降のルートをあまり計画せず」なのです。

リスクのある環境でのレースで、野望とリスクを天秤にかけ、自分の力を突き詰めて考えた目標の設定が、折り返し地点のモンブラン。でも、過去に自分した高いレベルでの経験が生きて、レース展開も味方し、それは謙虚な目標となった。

そして、最後までレースに残っただけでなく、チームと喜びを分かち合いながら不可能を可能としてのゴール。感動を禁じ得ません。

「チームと喜びを分かち合いながら」と言っても、そんなに簡単なことではないのです。下記のレース後のRedBull X-Alps 公式 HP のエリ・エッガーのインタビュー記事では、「レース中最低の瞬間」として、チーム内での争いのようなものがあったと書かれています。

What was your lowest moment of the race?
I think it was up on Cima Tosa where we had a kind of dispute in the team. I landed (in the valley) and had to wait for my supporters because I was flying with all this ballast and they needed to carry it. I started hiking and didn't wait for the girls behind. Everything was fine but when the girls arrived about one hour later they came into a whiteout. There was still snow up there and the clouds came in and so they were pretty scared and that was kind of a drama that evening up on the mountain. But we worked it out in the next days. They were super tired. I was super tired.

レース後の RedBull X-Alps 公式 HP のエリ・エッガーのインタビュー記事より

レース中最低の瞬間はいつでしたか?
シーマ・トーサでチーム内で争いのようなものがあったと思う。

私は(谷に)着陸し、サポーター(ネイディーン)を待たなければなりませんでした。なぜなら、私はこのバラストをすべて持って飛んでいたので、彼らはそれを運ぶ必要があったからです。

私はハイキングを始めましたが、後ろの女の子たち(おそらく、ネイディーンやチームの他のメンバーだと思います)を待たずに歩き始めました。

すべて順調だったが、約1時間後に女の子たち(おそらく、ネイディーンやチームの他のメンバーだと思います)が到着するとホワイトアウト状態になった。そこにはまだ雪が残っており、雲が入ってきたので、彼らはかなり怖がっていました、そしてそれはその夜の山での一種のドラマでした。

しかし、私たちは次の日にはそれを解決しました。彼らはとても疲れていました。とても疲れていました。

上の英語の意訳です

極限の状態だから、殺気立ったやり取りにもなるはずです。それを乗り越えての「チームと喜びを分かち合いながら不可能を可能としてのゴール。」なのです。

この後の最後の箇所は、本文を転機しないので、意訳メッセージをお読みくださいませ。

私は、「ラスト・ウーマン・スタンディング」(レースで最も長く走った女性に贈られる賞)だけでなく、X-アルプスでゴールを達成し、完走した史上初の女性であることが、より多くの女性に夢を追いかける勇気を与えることを願っている。

なぜなら、X-Alps の旅で私が学んだことは、私たちは自分が思っているよりもずっと強いということ。たとえ私たち自身がそれを疑っていたとしても、最初からそれを見抜いている人たち(ナディーンをはじめとするチーム)がいる。たとえ人生が時に苦しくても、私たちは戦い、より強く成長することができる。

最終的に偏見の世代を克服し、一人ひとりの長所を信じるようになることを願っています。男性であろうと女性であろうと、黒人であろうと白人であろうと、太っていようと痩せていようと、私たち一人ひとりは自分の境界線を乗り越え、より良い自分になることができる。時にそれは、他の人とは違う道を行くということだ。

高く、安全に、そしていつも笑顔でいよう!
(Stay high, stay safe and always have a smile on your face!)

Ozone Paragliders HP 「DESPITE THE ODDS」より意訳

男子中心の世界に挑戦する女子アスリートへの偏見をはねのけ、ナーバスになる自分を奮い立たせ、冷静にリスクと自分の力を見極めて、チームで不可能を可能にしたそのゴールは素晴らしい。

そして、その活動が、パラグライダーをしたことの無い人も含め、多くの人に勇気をもたらすとすれば、それは競技でのパフォーマンスや結果以上の価値がある。

女性アスリートの活躍に、こんなに強いメッセージ性や人の根源に関わる価値があるとは、私は気が付いてもいませんでした。

そのエリ・エッガーですが、上で挙げたレース後のRedBull X-Alps 公式 HP のエリ・エッガーのインタビュー記事ではこんな回答をしています。

女性として初めてゴールを決めたことは大きな影響を与えましたか?
離陸中の私を見たときの人々の態度が変わりました。今では私は「有名」になったのに、自分はまだ同じ人間であるように感じます。しかし、私の顔を知っている人は確実に増えています。それはいいことですが、もう隠すのは簡単ではありません。

そこで大きな質問は、2025 年に登録するつもりですか?
正直に言うと、分かりません。チームを変えなければならないだろうが、それは本当に難しいだろう。その一方で、これはおそらくこれまでの人生で最高のことの一つであり、本当に素晴らしい経験でした。だから、またやりたくなるという中毒性があります(笑)。でも、それはこの 2 週間のレースだけではなく、1 年間の準備期間のようなものです。私はフルタイムの仕事をしています。プロでない限り、2年ごとにそれを行うのはそれほど簡単ではありません。

レース後の RedBull X-Alps 公式 HP のエリ・エッガーのインタビュー記事より

大きなものを得たレース。でも安易に次のレースに出るとはいえない。それだけ簡単な挑戦ではないということ。そんなことにも、感動を禁じ得ないのです。

改めて、NHK BS での放送日は、今週末の土曜日。

「風をつかめ2023 15min.」

  • 3/30/2024(土)09:00~09:15 #6 自分を信じて(エリ・エッガー)

エリ・エッガーの活躍と番組をお楽しみください。


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